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27.姉と付き合って
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エリスがアルバートと「友達」として新たな関係を築き始めてから数日後。
ここは平日の夕方の喫茶店。
レオは腕を組んでテーブルの向こうに座る少女を睨みつけていた。
「……で、改まって何の用だよ。俺みたいなのをわざわざこんなお洒落な店に呼び出すなんて」
レオはストローでメロンソーダをかき混ぜながら尋ねる。
マリベルは意を決したように口を開いた。
「レオさん、単刀直入に申し上げます」
「おう」
「姉のエリスとお付き合いしてください!」
「……ぶっ!?」
レオは飲んでいたメロンソーダを盛大に噴き出し、ゴホゴホと激しく咳き込んだ。
「げほっ……!おい、マリベルちゃん……!冗談きついぜ。なんで俺が君んとこの姉貴の面倒見なきゃなんねえんだよ」
「私は本気です!このままでは姉が……またあの男の毒牙にかかってしまいます!」
マリベルは身を乗り出し、声を潜めながらも必死に訴える。
「姉はあの男と『友達としてやり直す』なんて言っています!あんな奴のどこにやり直す要素があるというんですか!あんな性根の腐った男、また同じことを繰り返すに決まってます!」
「……それで俺に付き合えと。ずいぶんと話が飛躍するじゃねえか」
「あなたがいれば姉もあの男になびくことはないはず!……あんな男のせいで姉がどれだけ傷ついて、苦しんで、高熱まで出して倒れたか!なのにあの男がしおらしい態度を見せた途端、姉は絆され始めている……!あのお人好し!」
悔しそうにテーブルを叩くマリベルを、レオは落ち着いた目で見つめていた。
「……確かにな。あいつはドジでどんくさくて、見てるこっちがヒヤヒヤする」
「そうです!放っておいたらどこで転ぶか分かりません!」
「それに変なところで情にもろい。泣き落としには特に弱いな」
「そうそう!だから、これ以上あのゲス男に近づく隙を与えてはならないんです!レオさんがお姉様の恋人になってくれれば、あの男も諦めるに違いない!」
「だがな、マリベルちゃん」
レオはメロンソーダのグラスを置き、静かに言葉を続けた。
「あいつは君が思ってるほどやわじゃねえよ」
「はい……?」
「自分でアルバートと別れるって決めて、ちゃんと伝えたんだろ。友達としてやり直すってのも、あいつなりに考えて出した答えのはずだ。あいつは馬鹿だが、一度決めたことはそう簡単には曲げねえ頑固さもある」
「でも……!」
「それに例の王子様もさすがに改心したんじゃないのか? 学園での悪い噂もあの件以来パタッと止んだしな。まあ、反省してしゅんとしてる男を無下にできないってのも、いかにもあいつらしいがな」
レオの指摘にマリベルは言葉を詰まらせる。ただ、腑に落ちないという顔で彼を見つめた。
「……レオさんはどうしてそんなに姉のことをわかっているんですか?」
「あ?」
「いつも憎まれ口ばかり叩いていますけど……誰よりも姉のことを理解して、信じているように聞こえます。もしかして……レオさん、お姉様のことがお好きなのではなくて?」
マリベルの真っ直ぐな問いにレオは一瞬だけ目を見開いた。だが次の瞬間にはいつもの皮肉な笑みを浮かべていた。
「……さあな。どうだか」
レオは立ち上がるとテーブルに数枚の硬貨を置いた。
「俺はただ、幼馴染の不幸が最高の娯楽だって言ってるだけだ。あいつがまた王子様に騙されて泣きっ面かくなら、それを最前列の特等席で見て笑ってやるさ」
「レオさん……!」
「こんな馬鹿げた話に付き合わされて時間が無駄になった。じゃあな、シスコンの妹ちゃん」
ひらりと手を振り、レオはマリベルに背を向けて喫茶店を出て行ってしまった。
ここは平日の夕方の喫茶店。
レオは腕を組んでテーブルの向こうに座る少女を睨みつけていた。
「……で、改まって何の用だよ。俺みたいなのをわざわざこんなお洒落な店に呼び出すなんて」
レオはストローでメロンソーダをかき混ぜながら尋ねる。
マリベルは意を決したように口を開いた。
「レオさん、単刀直入に申し上げます」
「おう」
「姉のエリスとお付き合いしてください!」
「……ぶっ!?」
レオは飲んでいたメロンソーダを盛大に噴き出し、ゴホゴホと激しく咳き込んだ。
「げほっ……!おい、マリベルちゃん……!冗談きついぜ。なんで俺が君んとこの姉貴の面倒見なきゃなんねえんだよ」
「私は本気です!このままでは姉が……またあの男の毒牙にかかってしまいます!」
マリベルは身を乗り出し、声を潜めながらも必死に訴える。
「姉はあの男と『友達としてやり直す』なんて言っています!あんな奴のどこにやり直す要素があるというんですか!あんな性根の腐った男、また同じことを繰り返すに決まってます!」
「……それで俺に付き合えと。ずいぶんと話が飛躍するじゃねえか」
「あなたがいれば姉もあの男になびくことはないはず!……あんな男のせいで姉がどれだけ傷ついて、苦しんで、高熱まで出して倒れたか!なのにあの男がしおらしい態度を見せた途端、姉は絆され始めている……!あのお人好し!」
悔しそうにテーブルを叩くマリベルを、レオは落ち着いた目で見つめていた。
「……確かにな。あいつはドジでどんくさくて、見てるこっちがヒヤヒヤする」
「そうです!放っておいたらどこで転ぶか分かりません!」
「それに変なところで情にもろい。泣き落としには特に弱いな」
「そうそう!だから、これ以上あのゲス男に近づく隙を与えてはならないんです!レオさんがお姉様の恋人になってくれれば、あの男も諦めるに違いない!」
「だがな、マリベルちゃん」
レオはメロンソーダのグラスを置き、静かに言葉を続けた。
「あいつは君が思ってるほどやわじゃねえよ」
「はい……?」
「自分でアルバートと別れるって決めて、ちゃんと伝えたんだろ。友達としてやり直すってのも、あいつなりに考えて出した答えのはずだ。あいつは馬鹿だが、一度決めたことはそう簡単には曲げねえ頑固さもある」
「でも……!」
「それに例の王子様もさすがに改心したんじゃないのか? 学園での悪い噂もあの件以来パタッと止んだしな。まあ、反省してしゅんとしてる男を無下にできないってのも、いかにもあいつらしいがな」
レオの指摘にマリベルは言葉を詰まらせる。ただ、腑に落ちないという顔で彼を見つめた。
「……レオさんはどうしてそんなに姉のことをわかっているんですか?」
「あ?」
「いつも憎まれ口ばかり叩いていますけど……誰よりも姉のことを理解して、信じているように聞こえます。もしかして……レオさん、お姉様のことがお好きなのではなくて?」
マリベルの真っ直ぐな問いにレオは一瞬だけ目を見開いた。だが次の瞬間にはいつもの皮肉な笑みを浮かべていた。
「……さあな。どうだか」
レオは立ち上がるとテーブルに数枚の硬貨を置いた。
「俺はただ、幼馴染の不幸が最高の娯楽だって言ってるだけだ。あいつがまた王子様に騙されて泣きっ面かくなら、それを最前列の特等席で見て笑ってやるさ」
「レオさん……!」
「こんな馬鹿げた話に付き合わされて時間が無駄になった。じゃあな、シスコンの妹ちゃん」
ひらりと手を振り、レオはマリベルに背を向けて喫茶店を出て行ってしまった。
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