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第1-2章 私は南方王国に行きました
私は転生について暴露しました
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「復活。それが私に与えられた奇蹟です」
「……っ!?」
ようやくチェーザレ達も事の深刻さを悟ってくださったようです。コルネリアやトリルビィは愕然としましたし、ジョアッキーノはマジかと顔をひきつらせ、チェーザレも僅かに顔をしかめました。この場に王宮近衛兵がいたら即刻捕らわれたでしょうね。
だって、人は死後神の下に召されるとされる教会の教えに真っ向から背いているんですもの。神の下である天国から、または罪を償う為に罰を与えられる地獄から地上に引きずり戻す蛮行。それが復活の奇蹟と考えられても仕方がありません。
「死者を蘇らせた私は聖女の身から転落、魔女扱いされて裁判にかけられました。過程は思い出したくもないので説明しませんが、最終的に魔女として人としての尊厳を踏みにじられ尽くして処刑されました」
「死者蘇生って、まさか……!」
コルネリアは真っ青な顔をさせて一目散に本棚へと駆け寄りました。彼女は古びた本を取り出して頁を一心不乱に捲っていきます。そしてある項目に目が留まり、力を失った手から本が床へと落ちていきました。
チェーザレが母へと駆け寄ろうとしましたが彼女は大丈夫とつぶやきながら戻ってきます。酷く愕然とした様子で今にも気を失いそうなほど顔面蒼白となっていました。それでも何とかコルネリアは席に戻ってテーブルに本を広げてみせました。頁をめくる指を振るわせつつ。
そこに描かれていた挿絵の者は酷く醜く描かれていました。逆さ十字架かつ火刑に処される魔女に民衆が石を投げつける様子は神に仇名す愚か者の末路を私達にこれでもかと見せつけます。私は何の感慨も無く見つめていましたが、他の人達はそうでないようでした。
「反魂の魔女、マルタ……」
そう、それは如何にかつての私が背信行為を行ってきたかをつらつらと書き記した、教会の定めた正史だったのです。
「後世に残された記録は初めて見ましたが、散々なこき下ろされ様ですね」
かつての私が犯した罪とされる事象のほとんどは身に覚えがありません。それに私が神託のままに行った救済が何一つ記載されていませんでした。よほど私の聖女としての活動を認めたくなかったのでしょう。少し苛立ちを感じてしまいます。
「いや、待って。ちょっと待って。この魔女マルタって死んだんだろ? でもキアラは生きてるじゃないか。どういう事だよ?」
「……あー、そう言えばこの考え方は異端とされていたんでしたね」
あまりの衝撃にたまらず声を上げたジョアッキーノですが、仕方がありません。死後に神の下に召されるとされる教えにおいては復活は救世主にのみ与えられし奇蹟ですし、そして……、
「私、転生の奇蹟も授かっていますので」
輪廻転生の考え自体がありませんもの。
「転、生?」
「はい。死後天に召されずに新たな生を授かる概念を指します。全ての生命は太陽のように沈んでも再び昇っていく。異教の考えですね」
輪廻転生については説明がややこしくなるのでしないようにしましょう。肝心なのは私が神の下へと向かうのも許されず、地獄にて罰を受けるのも許されず、地上で新たな苦しみを味わえと断じられた点です。まだお前にはやる事がある、と言われている気がしてなりません。
「私の前世、つまり魔女マルタの記憶は最初から覚えておりました。今の私、つまり貴族の娘キアラはかつての私の延長線上にあるのです」
衝撃の告白に皆さん言葉も出ないようでした。神の教えに背く在り方をした私は異端審問官に突き出せばかつてのように直ちに尋問の末に処刑されるでしょう。それ程重大な秘密を打ち明けた。つまり皆さんに鎖を付ける行為に他なりませんので。
「……じゃあキアラが聖女になりたくないのは前世、だったっけ? と同じ感じに破滅したくないからか?」
「はい。その通りです」
「……っ!?」
ようやくチェーザレ達も事の深刻さを悟ってくださったようです。コルネリアやトリルビィは愕然としましたし、ジョアッキーノはマジかと顔をひきつらせ、チェーザレも僅かに顔をしかめました。この場に王宮近衛兵がいたら即刻捕らわれたでしょうね。
だって、人は死後神の下に召されるとされる教会の教えに真っ向から背いているんですもの。神の下である天国から、または罪を償う為に罰を与えられる地獄から地上に引きずり戻す蛮行。それが復活の奇蹟と考えられても仕方がありません。
「死者を蘇らせた私は聖女の身から転落、魔女扱いされて裁判にかけられました。過程は思い出したくもないので説明しませんが、最終的に魔女として人としての尊厳を踏みにじられ尽くして処刑されました」
「死者蘇生って、まさか……!」
コルネリアは真っ青な顔をさせて一目散に本棚へと駆け寄りました。彼女は古びた本を取り出して頁を一心不乱に捲っていきます。そしてある項目に目が留まり、力を失った手から本が床へと落ちていきました。
チェーザレが母へと駆け寄ろうとしましたが彼女は大丈夫とつぶやきながら戻ってきます。酷く愕然とした様子で今にも気を失いそうなほど顔面蒼白となっていました。それでも何とかコルネリアは席に戻ってテーブルに本を広げてみせました。頁をめくる指を振るわせつつ。
そこに描かれていた挿絵の者は酷く醜く描かれていました。逆さ十字架かつ火刑に処される魔女に民衆が石を投げつける様子は神に仇名す愚か者の末路を私達にこれでもかと見せつけます。私は何の感慨も無く見つめていましたが、他の人達はそうでないようでした。
「反魂の魔女、マルタ……」
そう、それは如何にかつての私が背信行為を行ってきたかをつらつらと書き記した、教会の定めた正史だったのです。
「後世に残された記録は初めて見ましたが、散々なこき下ろされ様ですね」
かつての私が犯した罪とされる事象のほとんどは身に覚えがありません。それに私が神託のままに行った救済が何一つ記載されていませんでした。よほど私の聖女としての活動を認めたくなかったのでしょう。少し苛立ちを感じてしまいます。
「いや、待って。ちょっと待って。この魔女マルタって死んだんだろ? でもキアラは生きてるじゃないか。どういう事だよ?」
「……あー、そう言えばこの考え方は異端とされていたんでしたね」
あまりの衝撃にたまらず声を上げたジョアッキーノですが、仕方がありません。死後に神の下に召されるとされる教えにおいては復活は救世主にのみ与えられし奇蹟ですし、そして……、
「私、転生の奇蹟も授かっていますので」
輪廻転生の考え自体がありませんもの。
「転、生?」
「はい。死後天に召されずに新たな生を授かる概念を指します。全ての生命は太陽のように沈んでも再び昇っていく。異教の考えですね」
輪廻転生については説明がややこしくなるのでしないようにしましょう。肝心なのは私が神の下へと向かうのも許されず、地獄にて罰を受けるのも許されず、地上で新たな苦しみを味わえと断じられた点です。まだお前にはやる事がある、と言われている気がしてなりません。
「私の前世、つまり魔女マルタの記憶は最初から覚えておりました。今の私、つまり貴族の娘キアラはかつての私の延長線上にあるのです」
衝撃の告白に皆さん言葉も出ないようでした。神の教えに背く在り方をした私は異端審問官に突き出せばかつてのように直ちに尋問の末に処刑されるでしょう。それ程重大な秘密を打ち明けた。つまり皆さんに鎖を付ける行為に他なりませんので。
「……じゃあキアラが聖女になりたくないのは前世、だったっけ? と同じ感じに破滅したくないからか?」
「はい。その通りです」
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