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第2-1章 私は学院に通い始めました
私は抜き打ち試験の感想を語り合いました
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「まっさか初っ端から試験受ける破目になるなんてな……」
「あーもう、前もって試験やるって知ってたらもっと勉強してきたのになぁ」
「今更嘆いても後の祭りでしょう。仕方がありません」
オフェーリアはまさかの抜き打ち試験を終えて休憩時間に入ると机に突っ伏しました。試験時間中も頻繁に筆を止めて呻っていましたのであまり出来は芳しくなかったようです。脇目でこちらの答案用紙に視線を向けていたのは気付いていましたからね。
その向こうではパトリツィアが椅子にだらしなくもたれかかっています。彼女の頭からとても長い髪が枝垂れのように垂れ下がりました。少し開かれた口から声を漏らす様子からすれば彼女の結果も推して知るべし、ですか。
「どうして入学早々にやったのかしらね? 学校の試験ってどれだけ学力を身に付けたかを測るんじゃなかったの?」
「おそらく学院の授業に付いていけるだけの教養を備えているかを確認したかったのではないでしょうか?」
「あ? そんなのしっかり叩き込まれてるに決まってるだろ」
「教国連合に属する貴族の家の者なら無条件で入れる。その辺りがまずいのかもしれません」
そう、入試のある市民階級と異なり貴族の子は各々の家での教育に委ねられています。教国連合最高峰の教育機関である学院に籍を置くに相応しくあれと厳格に行われるのが常ですが、時折無条件で学院に行けるならと半端な心得で来る者もいるんだそうです。
確かに学院は未来を担う人材の育成を目的としていますが、落ちこぼれに手取り足取り教える程の慈悲はありません。学院に相応しくないと判断されれば留年は勿論退学だって在り得ます。ただの確認と銘打っていようと既に各々の学院生活は始まっているのです。
「ま、いっか。そこそこは出来たと思うしこれから挽回すればいいし」
「そうね。失敗は次に生かせばいいし」
「そう言えばキアラは結構余裕そうだったけど、どうだったんだ?」
「そこそこだったかと思います。きっと自慢出来る程ではないでしょう」
この言葉は謙遜でも何でもありません。もっといい点数を取るなら一度解いてから再度確認すべきだったんでしょうが、そこまで本気で取り組むつもりはありませんでした。むしろ高得点にならぬようある程度は気を配る必要がございます。
――何故なら、上位成績者は生徒会に推薦される可能性が高いから。
あんな攻略対象者の巣窟に飛び込むなんて正気の沙汰ではありません。悪役令嬢キアラは生徒会役員の仕事に誇りを持っていたようですがね。平穏を目指す私にとっては厄介事に首を突っ込まないよう程々に過ごすべく立ち回るべきかと。
「小試験が終わったら次何やるんだっけ?」
「本格的な授業は明後日からだそうですね。今日はその授業で用いる教科書や参考書を受け取って終わりでしたか」
「そっか。じゃあ一緒に行かないか?」
「ええ喜んで」
オフェーリアは元気よく立ち上がると伸びを一回させました。パトリツィアも髪を後ろ手で持ちながら腰を上げます。私も筆記具を鞄にしまってから席を立ちます。私達三人はそのまま教室を後にして廊下を歩み……あら?
「オフェーリア。パトリツィア様とは親しい仲だったのですか?」
そう言えば既にオフェーリアとパトリツィアは気さくに話し合えています。てっきり悪役令嬢が派閥を結成する折に取り込んだと思っていましたが。私が投げかけた疑問にパトリツィアは首を横に振り、オフェーリアは軽く笑いました。
「いんや。キアラが教室に来る前に私から話しかけた」
「妙に馴れ馴れしいとは思ったけれど、悪い気はしなかったかな」
「……初日からとても積極的なのですね」
「受け身だとあまり交流関係って広がらないからな。こっちから話しかけて打ち解けないと」
成程、その姿勢は感心致します。私も学院生活に支障が出ないよう周りと親しくしていかなければいけませんね。休み時間に呆けたりチェーザレ達と雑談するのも面白そうですが、今後を考えるなら私も自分から声をかけるべきですか。
「あーもう、前もって試験やるって知ってたらもっと勉強してきたのになぁ」
「今更嘆いても後の祭りでしょう。仕方がありません」
オフェーリアはまさかの抜き打ち試験を終えて休憩時間に入ると机に突っ伏しました。試験時間中も頻繁に筆を止めて呻っていましたのであまり出来は芳しくなかったようです。脇目でこちらの答案用紙に視線を向けていたのは気付いていましたからね。
その向こうではパトリツィアが椅子にだらしなくもたれかかっています。彼女の頭からとても長い髪が枝垂れのように垂れ下がりました。少し開かれた口から声を漏らす様子からすれば彼女の結果も推して知るべし、ですか。
「どうして入学早々にやったのかしらね? 学校の試験ってどれだけ学力を身に付けたかを測るんじゃなかったの?」
「おそらく学院の授業に付いていけるだけの教養を備えているかを確認したかったのではないでしょうか?」
「あ? そんなのしっかり叩き込まれてるに決まってるだろ」
「教国連合に属する貴族の家の者なら無条件で入れる。その辺りがまずいのかもしれません」
そう、入試のある市民階級と異なり貴族の子は各々の家での教育に委ねられています。教国連合最高峰の教育機関である学院に籍を置くに相応しくあれと厳格に行われるのが常ですが、時折無条件で学院に行けるならと半端な心得で来る者もいるんだそうです。
確かに学院は未来を担う人材の育成を目的としていますが、落ちこぼれに手取り足取り教える程の慈悲はありません。学院に相応しくないと判断されれば留年は勿論退学だって在り得ます。ただの確認と銘打っていようと既に各々の学院生活は始まっているのです。
「ま、いっか。そこそこは出来たと思うしこれから挽回すればいいし」
「そうね。失敗は次に生かせばいいし」
「そう言えばキアラは結構余裕そうだったけど、どうだったんだ?」
「そこそこだったかと思います。きっと自慢出来る程ではないでしょう」
この言葉は謙遜でも何でもありません。もっといい点数を取るなら一度解いてから再度確認すべきだったんでしょうが、そこまで本気で取り組むつもりはありませんでした。むしろ高得点にならぬようある程度は気を配る必要がございます。
――何故なら、上位成績者は生徒会に推薦される可能性が高いから。
あんな攻略対象者の巣窟に飛び込むなんて正気の沙汰ではありません。悪役令嬢キアラは生徒会役員の仕事に誇りを持っていたようですがね。平穏を目指す私にとっては厄介事に首を突っ込まないよう程々に過ごすべく立ち回るべきかと。
「小試験が終わったら次何やるんだっけ?」
「本格的な授業は明後日からだそうですね。今日はその授業で用いる教科書や参考書を受け取って終わりでしたか」
「そっか。じゃあ一緒に行かないか?」
「ええ喜んで」
オフェーリアは元気よく立ち上がると伸びを一回させました。パトリツィアも髪を後ろ手で持ちながら腰を上げます。私も筆記具を鞄にしまってから席を立ちます。私達三人はそのまま教室を後にして廊下を歩み……あら?
「オフェーリア。パトリツィア様とは親しい仲だったのですか?」
そう言えば既にオフェーリアとパトリツィアは気さくに話し合えています。てっきり悪役令嬢が派閥を結成する折に取り込んだと思っていましたが。私が投げかけた疑問にパトリツィアは首を横に振り、オフェーリアは軽く笑いました。
「いんや。キアラが教室に来る前に私から話しかけた」
「妙に馴れ馴れしいとは思ったけれど、悪い気はしなかったかな」
「……初日からとても積極的なのですね」
「受け身だとあまり交流関係って広がらないからな。こっちから話しかけて打ち解けないと」
成程、その姿勢は感心致します。私も学院生活に支障が出ないよう周りと親しくしていかなければいけませんね。休み時間に呆けたりチェーザレ達と雑談するのも面白そうですが、今後を考えるなら私も自分から声をかけるべきですか。
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