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第2-1章 私は学院に通い始めました
私は図書室へと向かいました
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「あー食った食った。美味かったなここの料理」
「ええ、美味でした。留年してずっと堪能しても構いませんね」
「んー、さすがに卒業するまでには飽きるんじゃない?」
昼食を取り終わった私達は食堂を後にしました。これで今日は下校するのみになりましたので、オフェーリアとパトリツィアの足は自然と馬車の乗降広場へと向きます。ですが私は校舎の途中で足を止めました。すると二人が怪訝な顔をさせて振り返ってきました。
「ん? どうしたんだキアラ、忘れ物か?」
「いえ、そうではありませんがオフェーリアとパトリツィアとはここでお別れになります。また明日お会いしましょう」
「はぁ? どうしてよ? まさか迎えが来ていないとか言うんじゃないでしょうね?」
「迎えなど初めから手配しておりません。徒歩で通学しておりますので」
如何に聖都が教会の目が行き届いた都市と言えども女性が、それも学院生が一人で出歩くには物騒と言えるでしょう。誘拐されるなら金銭で折り合いがつくかもしれませんが人攫いに遭えば最悪遠くの異国で奴隷として過ごす破目に陥るかもしれません。
私は考えすぎ、注意を払えば大丈夫だ、と語ったのですが、トリルビィが真剣な顔をして馬鹿言うな、何かあったら大変だと叱ってきました。馬車通学を諦めさせるため、行き帰り両方でトリルビィがお供するとの妥協点で口論に決着がつきましたっけ。
「つまり、ここに通い始めた上級生の従者の授業が終わるまで待たなきゃいけないって?」
「はい、そのつもりです。学院の図書室や資料室はとても充実しているとお聞きしていますので時間潰しには困らないかと」
一応全学年で授業時間は同じです。今日のように学年ごとの行事が無い限りは一緒に帰れるでしょう。だからこそトリルビィも最後は納得してくれたんでしたね。
ですが、考えが甘い。ケーキや砂糖菓子より甘すぎます。学年が隔てられている以上私とトリルビィの学生生活は異なる形となるに違いありません。授業が終わったからさあ肩を並べて家へ、とはいかないでしょう。放課後における諸活動や同級生との交流のためにね。
よっていずれはなし崩し的に帰りは別行動になると計算していますが、初日からトリルビィを置き去りにしたら最後、明日から馬車に押し込められるに違いありません。あんな大渋滞の中毎日鈍足で学院へ赴くだなんて想像しただけでうんざりしていまいます。
「なら私の馬車に乗るか? キアラの座席ぐらいは確保できるぜ」
「その申し出は有難いのですが、勉学に励む侍女を置いていくわけにはまいりません」
「言伝を残しとけばいいんじゃないの?」
「その手も有りですね。明日以降融通が利くか今日話し合ってみます」
私は申し訳なく思う気持ちから深々と頭を下げました。オフェーリアも分かってくれたようでして笑みをこぼしながら頷きます。
「分かった。じゃあまた明日な」
「今度は一緒に寄り道しながら帰りましょう」
「ええ、是非」
二人と別れの挨拶を交わして私達は離れ離れになりました。また明日、ですか。素敵な言葉ですね。寄り道しながら、とはもしかして繁華街で買い食いとか喫茶店でくつろいだりするんでしょうか? きっと楽しい時間を送れる事でしょう。
校舎に戻った私は一路図書室へと向かいます。広大な建物の内部構造は乙女げーむで概略が描写されていたので大体は分かりますもの。校舎の入口付近にあった校舎内地図とも照らし合わせましたが作りは同じなようでした。
既に午後の授業が始まっているからか、先ほどの賑わいが嘘のように廊下は静かでした。時折扉の向こうから教鞭を振るう教師の声が漏れてくるぐらいですか。誰一人としてすれ違いませんでしたし、この広い空間を独占している気分になります。
学院の蔵書は聖都の大図書館や教会敷地内の書庫と比べても見劣りしない規模を誇ります。乙女げーむだと攻略対象者に関する様々な情報を調べるために何度か来なければいけないんでしたね。図書館万能説、とか冗談で語られていましたっけ。
「キアラ」
「ひゃっ!?」
突然背後から声をかけられました。私は思わず心臓が口から飛び出そうなぐらい驚いてしまい、裏返った悲鳴を上げてしまいます。
「ええ、美味でした。留年してずっと堪能しても構いませんね」
「んー、さすがに卒業するまでには飽きるんじゃない?」
昼食を取り終わった私達は食堂を後にしました。これで今日は下校するのみになりましたので、オフェーリアとパトリツィアの足は自然と馬車の乗降広場へと向きます。ですが私は校舎の途中で足を止めました。すると二人が怪訝な顔をさせて振り返ってきました。
「ん? どうしたんだキアラ、忘れ物か?」
「いえ、そうではありませんがオフェーリアとパトリツィアとはここでお別れになります。また明日お会いしましょう」
「はぁ? どうしてよ? まさか迎えが来ていないとか言うんじゃないでしょうね?」
「迎えなど初めから手配しておりません。徒歩で通学しておりますので」
如何に聖都が教会の目が行き届いた都市と言えども女性が、それも学院生が一人で出歩くには物騒と言えるでしょう。誘拐されるなら金銭で折り合いがつくかもしれませんが人攫いに遭えば最悪遠くの異国で奴隷として過ごす破目に陥るかもしれません。
私は考えすぎ、注意を払えば大丈夫だ、と語ったのですが、トリルビィが真剣な顔をして馬鹿言うな、何かあったら大変だと叱ってきました。馬車通学を諦めさせるため、行き帰り両方でトリルビィがお供するとの妥協点で口論に決着がつきましたっけ。
「つまり、ここに通い始めた上級生の従者の授業が終わるまで待たなきゃいけないって?」
「はい、そのつもりです。学院の図書室や資料室はとても充実しているとお聞きしていますので時間潰しには困らないかと」
一応全学年で授業時間は同じです。今日のように学年ごとの行事が無い限りは一緒に帰れるでしょう。だからこそトリルビィも最後は納得してくれたんでしたね。
ですが、考えが甘い。ケーキや砂糖菓子より甘すぎます。学年が隔てられている以上私とトリルビィの学生生活は異なる形となるに違いありません。授業が終わったからさあ肩を並べて家へ、とはいかないでしょう。放課後における諸活動や同級生との交流のためにね。
よっていずれはなし崩し的に帰りは別行動になると計算していますが、初日からトリルビィを置き去りにしたら最後、明日から馬車に押し込められるに違いありません。あんな大渋滞の中毎日鈍足で学院へ赴くだなんて想像しただけでうんざりしていまいます。
「なら私の馬車に乗るか? キアラの座席ぐらいは確保できるぜ」
「その申し出は有難いのですが、勉学に励む侍女を置いていくわけにはまいりません」
「言伝を残しとけばいいんじゃないの?」
「その手も有りですね。明日以降融通が利くか今日話し合ってみます」
私は申し訳なく思う気持ちから深々と頭を下げました。オフェーリアも分かってくれたようでして笑みをこぼしながら頷きます。
「分かった。じゃあまた明日な」
「今度は一緒に寄り道しながら帰りましょう」
「ええ、是非」
二人と別れの挨拶を交わして私達は離れ離れになりました。また明日、ですか。素敵な言葉ですね。寄り道しながら、とはもしかして繁華街で買い食いとか喫茶店でくつろいだりするんでしょうか? きっと楽しい時間を送れる事でしょう。
校舎に戻った私は一路図書室へと向かいます。広大な建物の内部構造は乙女げーむで概略が描写されていたので大体は分かりますもの。校舎の入口付近にあった校舎内地図とも照らし合わせましたが作りは同じなようでした。
既に午後の授業が始まっているからか、先ほどの賑わいが嘘のように廊下は静かでした。時折扉の向こうから教鞭を振るう教師の声が漏れてくるぐらいですか。誰一人としてすれ違いませんでしたし、この広い空間を独占している気分になります。
学院の蔵書は聖都の大図書館や教会敷地内の書庫と比べても見劣りしない規模を誇ります。乙女げーむだと攻略対象者に関する様々な情報を調べるために何度か来なければいけないんでしたね。図書館万能説、とか冗談で語られていましたっけ。
「キアラ」
「ひゃっ!?」
突然背後から声をかけられました。私は思わず心臓が口から飛び出そうなぐらい驚いてしまい、裏返った悲鳴を上げてしまいます。
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