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第2-2章 私は魔女崇拝を否定しました
私達は定食屋で先生と遭遇しました
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「やーやーや、オフェーリアさんにパトリツィアさん、それにキアラさんじゃないっすか。奇遇っすねー」
お店を見て回っていた私達に突如として声をかけてきたのはカロリーナ先生でした。彼女は店の外にいる私達が気付くよう立ち上がって腕を振ってきています。私は気付かないふりをして通り過ぎようとし、パトリツィアはあからさまに嫌そうに顔を歪めました。
「いい事思いついた。ここはカロリーナ先生に奢ってもらおう」
ところがオフェーリアは逆に悪だくみが浮かんだとばかりに笑みを顔に張り付かせて先生の方へと手を振ります。鬼才現ると私は素直に感心したものですが、パトリツィアは浮かない顔をさせました。
「は? アンタ教師にたかるつもりなの?」
「あっちが私達を呼んでるんだ。学生が恩師にご馳走してもらうのは別に何も悪いことじゃないぜ」
「あまり気乗りしないわね……。食事時に先生交えて楽しめるかしら?」
「そんなのは試してみなきゃ分からないな。今回失敗したらそれを教訓に次回は気付かないふりでもすればいいじゃんか」
確かに飲み会の席では他人の評判なんて役に立たずですね。実際に参加して体験しなければ雰囲気は分かりませんもの。社交界だって同じ、相手と言葉を交わしてみたら全く印象が異なっていた場合も少なくありません。
「いいではありませんか。酒場に誘われるわけではなさそうですし」
「んー。まあそうね。つまらなかったらさっさと別の店に移ればいいだけだし」
方針が決まると私達は先生の誘いに乗るべく入店しました。そんな格式ばったお店ではなく居酒屋兼定食屋といった雰囲気で、庶民が夕食を取ったり仕事帰りの殿方が酒を飲み交わしていました。とても賑やかで楽しい時間が流れる空間です。
カウンターの席に座っていた先生は空いていたテーブル席に移って私達に手招きしました。私達の来店で寄ってきた店員に彼女との相席でと伝えて案内してもらいます。四人席でしたので椅子を一個持ってきてもらいました。
「キアラさん、そっちの二人を紹介してもらってもいいっすか?」
私達が座ろうとした頃でしょうか、先生はようやく私達三人だけではなくトリルビィとトビアがいることに気付きました。
「何を言っているんですか先生、こちらはトリルビィですよ」
私もそれほど人の顔と名前を覚えるのは得意ではありませんので偉そうに説教など出来ませんが、それにしたって教え子に気付かないのはどうかと思いますけれどね。驚いて目を丸くしている場合ではありませんよ。
案の定ようやく思い出したのか、先生は驚きを露わにしました。
「トリルビィ……って、まさか転入生の?」
「はい。私達より一学年上の、れっきとした学院生です」
「うっそ……!」
確かに今は私の侍女を務めてもらっていますからメイド服ですよ。眼鏡も仕事中は度が軽いものに変えていますし髪もまとめ上げていますから印象も大分異なりますね。更に先生がトリルビィと会う機会は担当授業の時ぐらいですか。
「トリルビィさん、キアラさんの家に奉公してるんっすか?」
「ええ。むしろわたしにとってはこちらが本業です。学院には父の言いつけに従って通っているだけなので」
「へええ、そうなんっすか。知らなかったなぁ。ごめんなさい、今ちゃんと覚えたから!」
「いえ、別に気にしませんから大丈夫です」
店員が注文を取りに来たのでパトリツィアが構わずにあれこれと頼んでいました。横からオフェーリアも追加でお願いしています。結構量が多そうで心配ですね。私は持って来られたから少しずつ小分けしてもらうとしましょう。
「それでそっちの可愛いお嬢ちゃんは親戚っすか?」
「こちらは妹のアリーチェです」
「妹? でもキアラさんの妹って確か……」
「下の妹です。先生が思い浮かべたのは上の妹ではないかと」
先生へトビアの事情を説明する必要はありませんから紹介はこの程度でいいでしょう。
お店を見て回っていた私達に突如として声をかけてきたのはカロリーナ先生でした。彼女は店の外にいる私達が気付くよう立ち上がって腕を振ってきています。私は気付かないふりをして通り過ぎようとし、パトリツィアはあからさまに嫌そうに顔を歪めました。
「いい事思いついた。ここはカロリーナ先生に奢ってもらおう」
ところがオフェーリアは逆に悪だくみが浮かんだとばかりに笑みを顔に張り付かせて先生の方へと手を振ります。鬼才現ると私は素直に感心したものですが、パトリツィアは浮かない顔をさせました。
「は? アンタ教師にたかるつもりなの?」
「あっちが私達を呼んでるんだ。学生が恩師にご馳走してもらうのは別に何も悪いことじゃないぜ」
「あまり気乗りしないわね……。食事時に先生交えて楽しめるかしら?」
「そんなのは試してみなきゃ分からないな。今回失敗したらそれを教訓に次回は気付かないふりでもすればいいじゃんか」
確かに飲み会の席では他人の評判なんて役に立たずですね。実際に参加して体験しなければ雰囲気は分かりませんもの。社交界だって同じ、相手と言葉を交わしてみたら全く印象が異なっていた場合も少なくありません。
「いいではありませんか。酒場に誘われるわけではなさそうですし」
「んー。まあそうね。つまらなかったらさっさと別の店に移ればいいだけだし」
方針が決まると私達は先生の誘いに乗るべく入店しました。そんな格式ばったお店ではなく居酒屋兼定食屋といった雰囲気で、庶民が夕食を取ったり仕事帰りの殿方が酒を飲み交わしていました。とても賑やかで楽しい時間が流れる空間です。
カウンターの席に座っていた先生は空いていたテーブル席に移って私達に手招きしました。私達の来店で寄ってきた店員に彼女との相席でと伝えて案内してもらいます。四人席でしたので椅子を一個持ってきてもらいました。
「キアラさん、そっちの二人を紹介してもらってもいいっすか?」
私達が座ろうとした頃でしょうか、先生はようやく私達三人だけではなくトリルビィとトビアがいることに気付きました。
「何を言っているんですか先生、こちらはトリルビィですよ」
私もそれほど人の顔と名前を覚えるのは得意ではありませんので偉そうに説教など出来ませんが、それにしたって教え子に気付かないのはどうかと思いますけれどね。驚いて目を丸くしている場合ではありませんよ。
案の定ようやく思い出したのか、先生は驚きを露わにしました。
「トリルビィ……って、まさか転入生の?」
「はい。私達より一学年上の、れっきとした学院生です」
「うっそ……!」
確かに今は私の侍女を務めてもらっていますからメイド服ですよ。眼鏡も仕事中は度が軽いものに変えていますし髪もまとめ上げていますから印象も大分異なりますね。更に先生がトリルビィと会う機会は担当授業の時ぐらいですか。
「トリルビィさん、キアラさんの家に奉公してるんっすか?」
「ええ。むしろわたしにとってはこちらが本業です。学院には父の言いつけに従って通っているだけなので」
「へええ、そうなんっすか。知らなかったなぁ。ごめんなさい、今ちゃんと覚えたから!」
「いえ、別に気にしませんから大丈夫です」
店員が注文を取りに来たのでパトリツィアが構わずにあれこれと頼んでいました。横からオフェーリアも追加でお願いしています。結構量が多そうで心配ですね。私は持って来られたから少しずつ小分けしてもらうとしましょう。
「それでそっちの可愛いお嬢ちゃんは親戚っすか?」
「こちらは妹のアリーチェです」
「妹? でもキアラさんの妹って確か……」
「下の妹です。先生が思い浮かべたのは上の妹ではないかと」
先生へトビアの事情を説明する必要はありませんから紹介はこの程度でいいでしょう。
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