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Interlude1 アレクサンドラのその後
王妃マリアネアの懸念(前)
むかしむかし、あるところにわがままでとてもうつくしいおじょうさまがいました。
おじょうさまはうまれたおうちがとてもえらかったので、とてもかわいいおんなのこをいじめていました。
おじょうさまのこんやくしゃだったおうじさまはそんなおんなのこにむちゅうになりました。
おうじさまだけじゃありません。おうじさまのともだちだったすてきなおとこのこたちもおんなのこがすきになってしまったのです。
おじょうさまはとてもおいかりになっておんなのこをさらにいじめますが、おうじさまとなかなおりはできませんでした。
そんなあるひ、おじょうさまはかみさまからはめつのみらいについてをおしえてもらいました。
おじょうさまはぜんせのじょうほうをつかっておとこのこたちとおうじさまをこらしめました。
そしておじょうさまはあいしてくれるすてきなひととしあわせにくらしましたとさ。
■■■
とまあ、そんな感じでおじょうさまこと公爵令嬢アレクサンドラ、つまり私は婚約者だったおうじさま、つまり王太子アルフォンソ様とおんなのこ、つまり男爵令嬢ルシアを彼らが仕掛けた断罪劇で返り討ちにしてやった。ざまぁ。
おかげで私は可愛い弟としか思っていなかった第三王子ジェラールと添い遂げることになって、ジェラールが立太子されたので自動的に王太子妃になったわけね。正式な婚姻はジェラールが王立学園を卒業するまでお預けなんだけど。
もうアレから結構な月日が経過した。具体的には私が第一子となるアルベルトを生むぐらいだと言っておこうかしら。早くも世継ぎが誕生したことに国中がお祭り騒ぎだったし、両親も国王陛下……いえ、お義父様方もとても喜んでくださったのが記憶に新しい。
ようやく本来の調子を取り戻し始めたある日、私はお義母様のお茶会に誘われた。
「ごきげんよう、アレクサンドラ。さ、どうぞ座って」
「恐縮です、お義母様」
私の侍女だったセナイダは寿退社……もとい、セシリオお兄様との間に子供が出来たため、とうとう私の元から離れていった。姉同然だった彼女のおめでたが大変嬉しい反面、気心知れた友人がいなくなる寂しさで、結構複雑よ。
一方、お義母様も腹心の侍女エロディアを連れてきていない。そのため、器にお茶を入れる係はお互いが相手にすることにした。お義母様の動作には意外にも淀みがなく、いつでもおもてなしが出来るよう学んでいたんだなぁ、と思ったりする。
「体調はどう?」
「問題ありません。むしろもう少し寝ていられると思っていましたから、自分の身体の頑丈さを少し恨んでしまいました」
「そう、それは良かった。わたくしの時もあまり苦労した覚えが無いのよね。アレクサンドラのお母様は中々大変だったらしく、自慢ですかってぼやかれた記憶があるわ」
「それは母が失礼を。ですが先日孫を見せにいったところ、その痛みや苦しみすら今や愛おしい、と懐かしんでいました」
まったりと始まったお義母様とのお茶会は和やかに進んた。国政や外交についてから私生活の悩みまで話題には事欠かず、つい時間を忘れてお喋りしてしまったわね。
ちなみにお義母様、ジェラールの妻への愛しっぷりに触発されたお義父様からの愛が深まったとか。
ひとしきり喋った後はお互いに沈黙。王宮の庭では綺麗に花が咲き誇り、向こうでは木々が風で葉を揺らせる。今日は雲がやや残るものの快晴と言って良く、日傘の下でお茶会を楽しんでいても温かく感じた。
「こうしてゆっくり話す機会、あと何回設定出来るかしらね?」
「ジェラールが譲位する際にお義母様がご健在でしたらいくらでも楽しめるかと」
「まあ、じゃあ長生きしなきゃね。出来れば曾孫までは見たいわぁ」
「健康面での助言でしたらある程度心当たりがございますので、是非ご相談を」
それにしても疑問なのは、どうして侍女を伴わないで、かつ護衛すらかろうじて視界に収まるぐらい離れた距離に待機させるのかしらね。何か国を揺るがす重大な問題ならお義父様方がいないのはおかしいし、お茶会と称して何か深刻な相談事でもあるのかしら?
すると、お義母様は手元に置いていた何かをこちらへと差し出してきた。これは……手紙? でも開封済みを示す割れた封蝋には何もおされていないし、封筒の表には簡潔にお義母様宛だと記されているのみのようね。
「これは?」
「これを開ける前にアレクサンドラに聞きたいことがあります。あの一件からおよそ一年間経ったでしょう」
あの一件、つまり『どきエデ』のことかしら。
そう、もうあれから一年も経ったのね。
「時が流れるのは早いものですね」
「ごめんなさいね、アルベルトの誕生を必要以上に祝ってしまって。でもそうしなきゃいけないのは分かっているでしょう?」
「アルフォンソ様率いる王国軍が南の蛮族共に惨敗してしまって国全体が意気消沈していましたからね。私が子を生んで立ち直れるのでしたら光栄です」
「多くの兵士が犠牲になってしまったわ。蛮族共が想像以上に力をつけていたことに気づけなかったわたくし達の落ち度ね。弔い合戦については後で考えるとして……」
そう、アルフォンソ様は『どきエデ』最悪のバッドエンド、通称逆ハー失敗エンドのとおりに王国軍を率いて南の蛮族相手に聖戦を行った。結果、惨敗。ご友人方は後遺症が残る重傷を負って帰還、捕らえられたアルフォンソ様はつい先日解放されたばかりね。
とはいえ、この結末は逆ハー失敗とちょっと違うんだけど。本当ならアルフォンソ様を始めとする素敵な攻略対象者達は軒並み悲惨な最後を迎える筈だったのに。私がざまぁしたせいで色々と変わっちゃったのかしら。
「それには、アルフォンソが怨敵に売り渡したとされる情報について書かれているの」
「まったく、敵に媚びてまで生きながらえるなんて……元婚約者として恥ずかしい限りです」
「違うの。それは事後の報告書じゃないわ。まだ戦局も定まっていない頃にアルフォンソ宛に届いた、言わば指示書みたいなものなの」
おじょうさまはうまれたおうちがとてもえらかったので、とてもかわいいおんなのこをいじめていました。
おじょうさまのこんやくしゃだったおうじさまはそんなおんなのこにむちゅうになりました。
おうじさまだけじゃありません。おうじさまのともだちだったすてきなおとこのこたちもおんなのこがすきになってしまったのです。
おじょうさまはとてもおいかりになっておんなのこをさらにいじめますが、おうじさまとなかなおりはできませんでした。
そんなあるひ、おじょうさまはかみさまからはめつのみらいについてをおしえてもらいました。
おじょうさまはぜんせのじょうほうをつかっておとこのこたちとおうじさまをこらしめました。
そしておじょうさまはあいしてくれるすてきなひととしあわせにくらしましたとさ。
■■■
とまあ、そんな感じでおじょうさまこと公爵令嬢アレクサンドラ、つまり私は婚約者だったおうじさま、つまり王太子アルフォンソ様とおんなのこ、つまり男爵令嬢ルシアを彼らが仕掛けた断罪劇で返り討ちにしてやった。ざまぁ。
おかげで私は可愛い弟としか思っていなかった第三王子ジェラールと添い遂げることになって、ジェラールが立太子されたので自動的に王太子妃になったわけね。正式な婚姻はジェラールが王立学園を卒業するまでお預けなんだけど。
もうアレから結構な月日が経過した。具体的には私が第一子となるアルベルトを生むぐらいだと言っておこうかしら。早くも世継ぎが誕生したことに国中がお祭り騒ぎだったし、両親も国王陛下……いえ、お義父様方もとても喜んでくださったのが記憶に新しい。
ようやく本来の調子を取り戻し始めたある日、私はお義母様のお茶会に誘われた。
「ごきげんよう、アレクサンドラ。さ、どうぞ座って」
「恐縮です、お義母様」
私の侍女だったセナイダは寿退社……もとい、セシリオお兄様との間に子供が出来たため、とうとう私の元から離れていった。姉同然だった彼女のおめでたが大変嬉しい反面、気心知れた友人がいなくなる寂しさで、結構複雑よ。
一方、お義母様も腹心の侍女エロディアを連れてきていない。そのため、器にお茶を入れる係はお互いが相手にすることにした。お義母様の動作には意外にも淀みがなく、いつでもおもてなしが出来るよう学んでいたんだなぁ、と思ったりする。
「体調はどう?」
「問題ありません。むしろもう少し寝ていられると思っていましたから、自分の身体の頑丈さを少し恨んでしまいました」
「そう、それは良かった。わたくしの時もあまり苦労した覚えが無いのよね。アレクサンドラのお母様は中々大変だったらしく、自慢ですかってぼやかれた記憶があるわ」
「それは母が失礼を。ですが先日孫を見せにいったところ、その痛みや苦しみすら今や愛おしい、と懐かしんでいました」
まったりと始まったお義母様とのお茶会は和やかに進んた。国政や外交についてから私生活の悩みまで話題には事欠かず、つい時間を忘れてお喋りしてしまったわね。
ちなみにお義母様、ジェラールの妻への愛しっぷりに触発されたお義父様からの愛が深まったとか。
ひとしきり喋った後はお互いに沈黙。王宮の庭では綺麗に花が咲き誇り、向こうでは木々が風で葉を揺らせる。今日は雲がやや残るものの快晴と言って良く、日傘の下でお茶会を楽しんでいても温かく感じた。
「こうしてゆっくり話す機会、あと何回設定出来るかしらね?」
「ジェラールが譲位する際にお義母様がご健在でしたらいくらでも楽しめるかと」
「まあ、じゃあ長生きしなきゃね。出来れば曾孫までは見たいわぁ」
「健康面での助言でしたらある程度心当たりがございますので、是非ご相談を」
それにしても疑問なのは、どうして侍女を伴わないで、かつ護衛すらかろうじて視界に収まるぐらい離れた距離に待機させるのかしらね。何か国を揺るがす重大な問題ならお義父様方がいないのはおかしいし、お茶会と称して何か深刻な相談事でもあるのかしら?
すると、お義母様は手元に置いていた何かをこちらへと差し出してきた。これは……手紙? でも開封済みを示す割れた封蝋には何もおされていないし、封筒の表には簡潔にお義母様宛だと記されているのみのようね。
「これは?」
「これを開ける前にアレクサンドラに聞きたいことがあります。あの一件からおよそ一年間経ったでしょう」
あの一件、つまり『どきエデ』のことかしら。
そう、もうあれから一年も経ったのね。
「時が流れるのは早いものですね」
「ごめんなさいね、アルベルトの誕生を必要以上に祝ってしまって。でもそうしなきゃいけないのは分かっているでしょう?」
「アルフォンソ様率いる王国軍が南の蛮族共に惨敗してしまって国全体が意気消沈していましたからね。私が子を生んで立ち直れるのでしたら光栄です」
「多くの兵士が犠牲になってしまったわ。蛮族共が想像以上に力をつけていたことに気づけなかったわたくし達の落ち度ね。弔い合戦については後で考えるとして……」
そう、アルフォンソ様は『どきエデ』最悪のバッドエンド、通称逆ハー失敗エンドのとおりに王国軍を率いて南の蛮族相手に聖戦を行った。結果、惨敗。ご友人方は後遺症が残る重傷を負って帰還、捕らえられたアルフォンソ様はつい先日解放されたばかりね。
とはいえ、この結末は逆ハー失敗とちょっと違うんだけど。本当ならアルフォンソ様を始めとする素敵な攻略対象者達は軒並み悲惨な最後を迎える筈だったのに。私がざまぁしたせいで色々と変わっちゃったのかしら。
「それには、アルフォンソが怨敵に売り渡したとされる情報について書かれているの」
「まったく、敵に媚びてまで生きながらえるなんて……元婚約者として恥ずかしい限りです」
「違うの。それは事後の報告書じゃないわ。まだ戦局も定まっていない頃にアルフォンソ宛に届いた、言わば指示書みたいなものなの」
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