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Interlude1 アレクサンドラのその後
第一王女ローサの慰問(前)
聖戦での完敗は王国に大きな爪痕を残した。
反転攻勢による王国領土への侵略こそ防げたものの、出立していった兵士のうち五体満足で帰還できたのは数割程度。何割かは帰らぬ人になり、残りは後遺症が残る重傷を負ったり過酷な環境で衰弱したりと、無事じゃない兵士達も多かった。
そこで第一王女ローサ殿下が慰問という形で帰還兵達を見舞うことになった。まだ幼い姫君に悲惨な光景を見せるわけにはいかない、と一部反対の声も上がったが、ローサ殿下が立候補したことが最終的に決め手となった。
「すみませんお義姉様。お忙しいところ付き添っていただいて」
「いいんですよ殿下。可愛い妹のためですもの」
「んもう、殿下となんて呼ばないで。わたくし、お義姉様の妹になったんですよ?」
「ふふ。そうでしたね、ローサ」
ただし王太子妃こと私が付き添うことが条件だったから同行している。
今回の同行者はローサ殿下……もとい、ローサ付き侍女と直属の文官や護衛の騎士達、それから私付きの侍女とジェラール配下の騎士達ね。なお、騎士達は戦に行くわけじゃないので軽装備になってもらっている。
「いやー大丈夫ですよ姫様。うちのご主人は姫様のことを目に入れても痛くないって思ってますから。公務も昨日のうちにぱぱっと片付けちゃってましたよ」
「そうなんですか?」
「ちょっとノエリア。勝手に私の内情をバラさないで頂戴」
「これは失敬失敬」
子宝に恵まれて退職したセナイダに代わって私は大商人ミランダのお墨付きであるノエリアを抜擢した。私ってこうちょっと癖のある方が好みなのよね。だからこの程度の軽口は気にしないし、彼女もそれを分かって言動している。
「ところでお義姉様。その、随分と質素な格好で行かれるみたいですけど……」
「ああ、これ? 行けば分かるわ」
ローサは略式ながらもドレスを着ているし、文官も侍女も王宮指定の制服に身を包んでいる。一方の私やノエリアは生地こそしっかりしているものの地味な濃い色の服に袖を通していた。
「もしかしてわたくしもお義姉様のような服にするべきだったんじゃあ……」
「王家の者が汚れ仕事を率先してしちゃ駄目よ。少し手を貸すだけで充分。ドレスを駄目にしてしまっても私やお義母様方は怒ったりしないわよ」
「じゃあお義姉様はどうして?」
「うっかり手が出ちゃった場合の万一に備えて、かしらね」
そして私達は王都の郊外に臨時に設けられた野戦病院に足を運んだ。
聖戦の帰還兵達はもはや一歩も動けない重傷者や国境に近い領地より派遣された各貴族の私兵を除き、一旦王都へと戻る。そこから解散になるんだけれど、負傷者はこの野戦病院で治療を受けてから家に向かう手筈になっている。
野戦病院の理事と医療関係者の出迎えを受けた私達は早速病院内を案内された。所狭しと並べられた寝具に横たわる負傷兵達。看病や介護で動き回る看護師達。その間を縫うように作業する掃除屋達と、大変賑やかだった。
「病院に来たのは始めてなんですけど、こんな感じなんですね」
「そうね。もっと慌ただしいとか覚悟してたんだけど」
一度に大量の負傷者を診れるように体制を整えたのは実はこの私だったりする。全くの専門外だから担当部署に丸投げでも良かったんだけれど、折角前世の知識チートがあるんだから、と少し口を挟ませてもらった。
具体的には病院内は清潔にってことで掃除屋を入れたし、身体の弱った兵士達への食事メニューとかはみんなで考えた。あとは医療物資とかも定期的に交換出来るよう余裕を持って段取りしたし。その分がっつりイシドロとミランダに絞られたけどさ。
さすがに戦争が終わった段階なので応急処置を終えている者達が大半で、耳をつんざくような悲鳴は聞こえてこなかった。ただ高熱にうなされたり手当された傷が痛んでうめき声をあげる者もいた。
「痛みはありませんか?」
「殿下……申し訳ありません。役目を果たせずむざむざと戻ってきてしまい……」
「いいんです。帰ってきてくれただけでも。貴方方はわたくし達の誇りです」
「かたじけのうございます……。戦死した友もうかばれます」
ローサは最低限のお共を伴って各部屋を慰問した。負傷者を案じ、ねぎらい、時には手を取る。眠っていた者も素通りせずに様子を確かめていく。ほとんど皆が彼女の来訪に感動した様子で、ローサの人気の高さが伺えた。
反転攻勢による王国領土への侵略こそ防げたものの、出立していった兵士のうち五体満足で帰還できたのは数割程度。何割かは帰らぬ人になり、残りは後遺症が残る重傷を負ったり過酷な環境で衰弱したりと、無事じゃない兵士達も多かった。
そこで第一王女ローサ殿下が慰問という形で帰還兵達を見舞うことになった。まだ幼い姫君に悲惨な光景を見せるわけにはいかない、と一部反対の声も上がったが、ローサ殿下が立候補したことが最終的に決め手となった。
「すみませんお義姉様。お忙しいところ付き添っていただいて」
「いいんですよ殿下。可愛い妹のためですもの」
「んもう、殿下となんて呼ばないで。わたくし、お義姉様の妹になったんですよ?」
「ふふ。そうでしたね、ローサ」
ただし王太子妃こと私が付き添うことが条件だったから同行している。
今回の同行者はローサ殿下……もとい、ローサ付き侍女と直属の文官や護衛の騎士達、それから私付きの侍女とジェラール配下の騎士達ね。なお、騎士達は戦に行くわけじゃないので軽装備になってもらっている。
「いやー大丈夫ですよ姫様。うちのご主人は姫様のことを目に入れても痛くないって思ってますから。公務も昨日のうちにぱぱっと片付けちゃってましたよ」
「そうなんですか?」
「ちょっとノエリア。勝手に私の内情をバラさないで頂戴」
「これは失敬失敬」
子宝に恵まれて退職したセナイダに代わって私は大商人ミランダのお墨付きであるノエリアを抜擢した。私ってこうちょっと癖のある方が好みなのよね。だからこの程度の軽口は気にしないし、彼女もそれを分かって言動している。
「ところでお義姉様。その、随分と質素な格好で行かれるみたいですけど……」
「ああ、これ? 行けば分かるわ」
ローサは略式ながらもドレスを着ているし、文官も侍女も王宮指定の制服に身を包んでいる。一方の私やノエリアは生地こそしっかりしているものの地味な濃い色の服に袖を通していた。
「もしかしてわたくしもお義姉様のような服にするべきだったんじゃあ……」
「王家の者が汚れ仕事を率先してしちゃ駄目よ。少し手を貸すだけで充分。ドレスを駄目にしてしまっても私やお義母様方は怒ったりしないわよ」
「じゃあお義姉様はどうして?」
「うっかり手が出ちゃった場合の万一に備えて、かしらね」
そして私達は王都の郊外に臨時に設けられた野戦病院に足を運んだ。
聖戦の帰還兵達はもはや一歩も動けない重傷者や国境に近い領地より派遣された各貴族の私兵を除き、一旦王都へと戻る。そこから解散になるんだけれど、負傷者はこの野戦病院で治療を受けてから家に向かう手筈になっている。
野戦病院の理事と医療関係者の出迎えを受けた私達は早速病院内を案内された。所狭しと並べられた寝具に横たわる負傷兵達。看病や介護で動き回る看護師達。その間を縫うように作業する掃除屋達と、大変賑やかだった。
「病院に来たのは始めてなんですけど、こんな感じなんですね」
「そうね。もっと慌ただしいとか覚悟してたんだけど」
一度に大量の負傷者を診れるように体制を整えたのは実はこの私だったりする。全くの専門外だから担当部署に丸投げでも良かったんだけれど、折角前世の知識チートがあるんだから、と少し口を挟ませてもらった。
具体的には病院内は清潔にってことで掃除屋を入れたし、身体の弱った兵士達への食事メニューとかはみんなで考えた。あとは医療物資とかも定期的に交換出来るよう余裕を持って段取りしたし。その分がっつりイシドロとミランダに絞られたけどさ。
さすがに戦争が終わった段階なので応急処置を終えている者達が大半で、耳をつんざくような悲鳴は聞こえてこなかった。ただ高熱にうなされたり手当された傷が痛んでうめき声をあげる者もいた。
「痛みはありませんか?」
「殿下……申し訳ありません。役目を果たせずむざむざと戻ってきてしまい……」
「いいんです。帰ってきてくれただけでも。貴方方はわたくし達の誇りです」
「かたじけのうございます……。戦死した友もうかばれます」
ローサは最低限のお共を伴って各部屋を慰問した。負傷者を案じ、ねぎらい、時には手を取る。眠っていた者も素通りせずに様子を確かめていく。ほとんど皆が彼女の来訪に感動した様子で、ローサの人気の高さが伺えた。
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