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Interlude1 アレクサンドラのその後
第一王女ダリアの選択(前)
あの忙しかった一日から長い年月が経った。
具体的には私の第二子レオンの歯が永久歯に生え変わり始めるぐらいに。
私は結局三人の子宝に恵まれた。
第一子のアルベルト、第二子のレオン。そして第三子のグラシエラ。
三人共すくすくと成長していてとても可愛らしいったらありゃしない。
そして忘れちゃいけないのがダリアね。
彼女はアルフォンソ様とルシアの子供。アルフォンソ様が幽閉中でルシアが修道院生活を送っていたために育てられる環境じゃないからって私が引き取った。まあ、他にも理由があるんだけど、ここでは割愛しとく。
そんなダリアはアルベルトより少し早く生まれたのもあって王家では私の長女って扱いになっている。アルフォンソ様の子だけあってジェラールとも似ていて、外部に出生の秘密を疑われてはいない。
けれど、いつまでも黙ったままじゃあいられないわ。
ダリアがきちんと自分で判断出来るぐらいまで成長したら明かそう、と考えてる。
そしてお義父様方やジェラールと相談して、今日この日と決めていた。
「お父様、お母様。入ります」
私とジェラールが待ち構えていた王太子用の応接室に飛び出されたダリアは丁寧にお辞儀をして腰を落ち着けた。食卓でもなく団らんやお茶会の時でもなく、私達二人の公務の一環として設けたこの時間、ダリアも緊張した様子だった。
改めて成長したダリアを見てみる。まだ幼いもののアルフォンソ様とルシアを良い所取りしたみたいな容姿で、可愛いとか美しいとか思う前に警戒心すら浮かぶ魔性の魅力を放っていた。現にかなりの数の貴族子息が求婚を申し込んでくるし。
「最近はどうかな? 教育が厳しいとか人間関係が上手く行っていないとか、遠慮せずに言ってくれ。私達は王太子夫妻である前にダリアの親なのだから」
「いえ、問題ありません。先生方には良くしていただいていますし、兄弟仲も良い方だとわたしは思ってます。この前は庭園で同じ年の方と一緒にお茶を楽しみました」
「そうか。それは良かった。今日はダリアに話しておきたいことがあって呼び出した。説明はアレクサンドラからさせる」
「……分かりました。お願いします」
ダリアを引き取るって言い出したのは他ならぬこの私。ならダリアに真実を打ち明けるのはこの私の役目でしょう。
どう説明しようかは散々迷ったけれど、結局取り繕わないで押し通すことにした。
「今日これを伝えようと思ったのはそれだけダリアが成長したと判断した上よ。それを踏まえて、これから話すことを良く聞いて、どうしたいのかを考えなさい。いい?」
「はい、お母様」
「まず、戸籍上ダリアは私とジェラールの娘、ってことになってるわ。だからダリアは王位継承権を持つれっきとした王女であり、アルベルト達のお姉さんよ。そこまではいい?」
「はい」
「けれど、血縁上ダリアは私達の子じゃないの。アルベルトの双子の姉って見なされてるけど、そうじゃない。ダリアの本当の両親は……」
「アルフォンソ伯父様とルシア伯母さん、ですよね?」
「……!」
驚いた。ダリアが真実を察していたなんて。
そんな私達の反応を見たダリアは申し訳無さそうに無理して微笑んだ。
ダリアには凄く申し訳なかったけれど、妙にルシアを彷彿とさせた。
「そうなんじゃないか、って思ってたんです。わたし、お母様のこととっても尊敬していたのにちっとも似ていなくて……。それと、たまにお会いする伯父様がわたしを見つめる目がアルベルト達に向けてのと違っている時もあって……」
「……そう。本当なら多少無理すればアルフォンソ様がダリアを引き取れたのよ。けれど私が強引にあの人から引き剥がして――」
「それは、仕方がなかったと思います。だってわたしが生まれた時、伯父様は厳しい立場にいたんですよね。お母様はわたしが不幸にならないために自分が育てるって思ってくださったんですよね?」
「ええ、そのとおりよ。私はダリアを一番に考えて引き取った、それは間違いないわ」
あのルシアのことしか考えてない真ルシアに育てさせるのは言語道断だし、ルシアにうつつを抜かしてたアルフォンソ様にルシアの娘を託すのは危険過ぎる。私が引き取る選択はダリアにとっての最善だった、と私は信じている。
けれど実の親と無理やり引き剥がしたのは事実。ダリアに恨まれたって仕方がない。それは受け入れる覚悟で私は真実を語った。
……仕方がないんだけれど、私だってダリアを一生懸命育てたし、いっぱい愛した。きっと拒絶されたら泣いちゃうんでしょうね、私。
いつの間にか私は両手を握りしめていた。震えを隠すためか強張ってもいる。不安を悟られたのか、ジェラールが黙って私の肩を抱き寄せた。
彼の瞳は語っていた。私達の娘を信じよう、と。
「ありがとう、お母様、お父様。わたしをここまで育ててくれて。わたし……お母様達の娘で良かったです」
「ダリア……」
「これからも……娘でいてもいいですか?」
「馬鹿! 勿論よ、だってダリアは私達が愛する娘だもの……」
我慢出来なかった。とめどなく涙が溢れてくる。
報われた。ダリアを引き取って本当に良かった。心の底から本当にそう思えて。
ジェラールが「ほら、綺麗な顔が台無しだよ」と私の涙を拭き取ってくれた。
具体的には私の第二子レオンの歯が永久歯に生え変わり始めるぐらいに。
私は結局三人の子宝に恵まれた。
第一子のアルベルト、第二子のレオン。そして第三子のグラシエラ。
三人共すくすくと成長していてとても可愛らしいったらありゃしない。
そして忘れちゃいけないのがダリアね。
彼女はアルフォンソ様とルシアの子供。アルフォンソ様が幽閉中でルシアが修道院生活を送っていたために育てられる環境じゃないからって私が引き取った。まあ、他にも理由があるんだけど、ここでは割愛しとく。
そんなダリアはアルベルトより少し早く生まれたのもあって王家では私の長女って扱いになっている。アルフォンソ様の子だけあってジェラールとも似ていて、外部に出生の秘密を疑われてはいない。
けれど、いつまでも黙ったままじゃあいられないわ。
ダリアがきちんと自分で判断出来るぐらいまで成長したら明かそう、と考えてる。
そしてお義父様方やジェラールと相談して、今日この日と決めていた。
「お父様、お母様。入ります」
私とジェラールが待ち構えていた王太子用の応接室に飛び出されたダリアは丁寧にお辞儀をして腰を落ち着けた。食卓でもなく団らんやお茶会の時でもなく、私達二人の公務の一環として設けたこの時間、ダリアも緊張した様子だった。
改めて成長したダリアを見てみる。まだ幼いもののアルフォンソ様とルシアを良い所取りしたみたいな容姿で、可愛いとか美しいとか思う前に警戒心すら浮かぶ魔性の魅力を放っていた。現にかなりの数の貴族子息が求婚を申し込んでくるし。
「最近はどうかな? 教育が厳しいとか人間関係が上手く行っていないとか、遠慮せずに言ってくれ。私達は王太子夫妻である前にダリアの親なのだから」
「いえ、問題ありません。先生方には良くしていただいていますし、兄弟仲も良い方だとわたしは思ってます。この前は庭園で同じ年の方と一緒にお茶を楽しみました」
「そうか。それは良かった。今日はダリアに話しておきたいことがあって呼び出した。説明はアレクサンドラからさせる」
「……分かりました。お願いします」
ダリアを引き取るって言い出したのは他ならぬこの私。ならダリアに真実を打ち明けるのはこの私の役目でしょう。
どう説明しようかは散々迷ったけれど、結局取り繕わないで押し通すことにした。
「今日これを伝えようと思ったのはそれだけダリアが成長したと判断した上よ。それを踏まえて、これから話すことを良く聞いて、どうしたいのかを考えなさい。いい?」
「はい、お母様」
「まず、戸籍上ダリアは私とジェラールの娘、ってことになってるわ。だからダリアは王位継承権を持つれっきとした王女であり、アルベルト達のお姉さんよ。そこまではいい?」
「はい」
「けれど、血縁上ダリアは私達の子じゃないの。アルベルトの双子の姉って見なされてるけど、そうじゃない。ダリアの本当の両親は……」
「アルフォンソ伯父様とルシア伯母さん、ですよね?」
「……!」
驚いた。ダリアが真実を察していたなんて。
そんな私達の反応を見たダリアは申し訳無さそうに無理して微笑んだ。
ダリアには凄く申し訳なかったけれど、妙にルシアを彷彿とさせた。
「そうなんじゃないか、って思ってたんです。わたし、お母様のこととっても尊敬していたのにちっとも似ていなくて……。それと、たまにお会いする伯父様がわたしを見つめる目がアルベルト達に向けてのと違っている時もあって……」
「……そう。本当なら多少無理すればアルフォンソ様がダリアを引き取れたのよ。けれど私が強引にあの人から引き剥がして――」
「それは、仕方がなかったと思います。だってわたしが生まれた時、伯父様は厳しい立場にいたんですよね。お母様はわたしが不幸にならないために自分が育てるって思ってくださったんですよね?」
「ええ、そのとおりよ。私はダリアを一番に考えて引き取った、それは間違いないわ」
あのルシアのことしか考えてない真ルシアに育てさせるのは言語道断だし、ルシアにうつつを抜かしてたアルフォンソ様にルシアの娘を託すのは危険過ぎる。私が引き取る選択はダリアにとっての最善だった、と私は信じている。
けれど実の親と無理やり引き剥がしたのは事実。ダリアに恨まれたって仕方がない。それは受け入れる覚悟で私は真実を語った。
……仕方がないんだけれど、私だってダリアを一生懸命育てたし、いっぱい愛した。きっと拒絶されたら泣いちゃうんでしょうね、私。
いつの間にか私は両手を握りしめていた。震えを隠すためか強張ってもいる。不安を悟られたのか、ジェラールが黙って私の肩を抱き寄せた。
彼の瞳は語っていた。私達の娘を信じよう、と。
「ありがとう、お母様、お父様。わたしをここまで育ててくれて。わたし……お母様達の娘で良かったです」
「ダリア……」
「これからも……娘でいてもいいですか?」
「馬鹿! 勿論よ、だってダリアは私達が愛する娘だもの……」
我慢出来なかった。とめどなく涙が溢れてくる。
報われた。ダリアを引き取って本当に良かった。心の底から本当にそう思えて。
ジェラールが「ほら、綺麗な顔が台無しだよ」と私の涙を拭き取ってくれた。
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