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Interlude1 アレクサンドラのその後
公爵令嬢ビビアナの結婚(後)
「ところで……次の聖戦は王太子殿下が出陣すると聞いたんだが、本当か?」
とはいえ、残念ながら最近の王国はそんな吉報ばかりじゃない。
お兄様が声を落として呟いたとおり、王国は新たな聖戦を行おうとしている。
これはアルフォンソ様が流した偽情報が敵国を蝕んでいて、最大の効果を発揮するのがおそらく今ぐらいだとされているからよ。それを成し得たルシアはどれほど優秀なんだって話よね。『どきエデ』全体の世界観を把握しているからってさ。
王太子のジェラール自らが出向くのはアルフォンソ様の尻拭い……もとい、前回の聖戦でアルフォンソ様が率いた王国軍の敗北という屈辱を払拭する目的がある。王家の誇りを取り戻すってやつよ。
勿論私としてはジェラールを危険な戦地に送り出したくない。けれどジェラールは私に勝利を届けるって言って聞かない。終いには兄のアルフォンソを超えるとか言い出したから、泣く泣く私が折れた格好だ。
「本当です。それも短期決戦で終わらせる想定だとのことで」
「……無謀にしか思えないが、勝算はあるんだな?」
「軍部で検討しましたが、今度はおそらく勝てる想定だそうでよ」
「にわかには信じられんが、既に方針が決まっている以上は従う他無いな」
雑談はこのあたりで切り上げることにして、私はこの挙式の主役であるビビアナを訪ねに控室に足を運んだ。ビビアナの準備が丁度終わった頃だったようで、美しくなって見違えた妹が私を出迎えてくれた。
「お姉様! 来てくれたのね」
「当然じゃないの。だって大切な私の家族だもの」
私が微笑むと妹はどういうわけか目をそらしてくる。不思議に思った私が彼女の顔色を覗き込もうとしたら更に顔をそむけられた。このところ上の妹とはそれなりに良好な関係を築けていたと思っていたのは私だけだったの?と不安になっていたら……、
「……私、お姉様に嫌われてるとばっか思ってた」
ビビアナはわずかに振るえた声でそう呟いた。
「どうしたのよいきなり」
「だって私、お姉様に背いたじゃない。ルシアをいじめてたお姉様が悪だ、って決めつけて、子供じみた反感がどれだけ不利益をもたらすかも分かってないままで……」
「ああ、学生時代の話ね。あの頃は私もまずかったのよ。嫉妬心から醜い真似をしちゃってさ。友達を傷つけられたら嫌いになるのは何もおかしくないわ」
ええ、あの頃は本当、馬鹿みたいだったわ。私の婚約者だったアルフォンソ様を誑かし、反感をもたせたあの娘がどうしても許せなかった。だから彼女の心が傷つくような嫌がらせばっかしたんだ。そして折れないから更に悪意に拍車をかけた。
前世を思い出して幾らか冷静になって論破したのだってビビアナのためじゃない。ルシアから一人でも味方を引き剥がすための策略の域を出ない。
だから、ビビアナがその一件で負い目を感じる必要なんてどこにもない。
「私達は二人共幼かったのよ。互いに生意気だったあの頃とはもう違うの」
「お姉様……。私、素敵なお嫁さんになれるかな?」
私達は素敵な伴侶と添い遂げて、子供を産み、温かな家庭を築く。
今度は大人として、母として子供を導いていかなきゃいけないのよ。
「私だってなれたんだから、ビビアナだったら何も問題ないわ」
「……うん、そうよね」
「ちょっと、そこは少しぐらい否定しなさいよ」
「あはっ、そうでなきゃお姉様らしくないわ」
思えばこんな風にビビアナと何の気兼ね無くお喋りしたのは久しぶりかもしれない。
そしてもしかしたら最期の機会かもしれない。
だったら時間が許す限り楽しもうじゃないの。
こうしてビビアナは嫁いでいった。
神に愛を誓う純白のビビアナはとても素敵で見惚れてしまった。
「私達もこんな風に祝われたいわね」
「そうだね。今からでも待ち遠しいよ」
私は祝福半分、羨ましがり半分で彼女を見つめ続けた。
ジェラールが学園を卒業するまであと少し。そうなったら次は私達の番よ。
私はビビアナに負けないぐらい幸せになってやるんだから。
とはいえ、残念ながら最近の王国はそんな吉報ばかりじゃない。
お兄様が声を落として呟いたとおり、王国は新たな聖戦を行おうとしている。
これはアルフォンソ様が流した偽情報が敵国を蝕んでいて、最大の効果を発揮するのがおそらく今ぐらいだとされているからよ。それを成し得たルシアはどれほど優秀なんだって話よね。『どきエデ』全体の世界観を把握しているからってさ。
王太子のジェラール自らが出向くのはアルフォンソ様の尻拭い……もとい、前回の聖戦でアルフォンソ様が率いた王国軍の敗北という屈辱を払拭する目的がある。王家の誇りを取り戻すってやつよ。
勿論私としてはジェラールを危険な戦地に送り出したくない。けれどジェラールは私に勝利を届けるって言って聞かない。終いには兄のアルフォンソを超えるとか言い出したから、泣く泣く私が折れた格好だ。
「本当です。それも短期決戦で終わらせる想定だとのことで」
「……無謀にしか思えないが、勝算はあるんだな?」
「軍部で検討しましたが、今度はおそらく勝てる想定だそうでよ」
「にわかには信じられんが、既に方針が決まっている以上は従う他無いな」
雑談はこのあたりで切り上げることにして、私はこの挙式の主役であるビビアナを訪ねに控室に足を運んだ。ビビアナの準備が丁度終わった頃だったようで、美しくなって見違えた妹が私を出迎えてくれた。
「お姉様! 来てくれたのね」
「当然じゃないの。だって大切な私の家族だもの」
私が微笑むと妹はどういうわけか目をそらしてくる。不思議に思った私が彼女の顔色を覗き込もうとしたら更に顔をそむけられた。このところ上の妹とはそれなりに良好な関係を築けていたと思っていたのは私だけだったの?と不安になっていたら……、
「……私、お姉様に嫌われてるとばっか思ってた」
ビビアナはわずかに振るえた声でそう呟いた。
「どうしたのよいきなり」
「だって私、お姉様に背いたじゃない。ルシアをいじめてたお姉様が悪だ、って決めつけて、子供じみた反感がどれだけ不利益をもたらすかも分かってないままで……」
「ああ、学生時代の話ね。あの頃は私もまずかったのよ。嫉妬心から醜い真似をしちゃってさ。友達を傷つけられたら嫌いになるのは何もおかしくないわ」
ええ、あの頃は本当、馬鹿みたいだったわ。私の婚約者だったアルフォンソ様を誑かし、反感をもたせたあの娘がどうしても許せなかった。だから彼女の心が傷つくような嫌がらせばっかしたんだ。そして折れないから更に悪意に拍車をかけた。
前世を思い出して幾らか冷静になって論破したのだってビビアナのためじゃない。ルシアから一人でも味方を引き剥がすための策略の域を出ない。
だから、ビビアナがその一件で負い目を感じる必要なんてどこにもない。
「私達は二人共幼かったのよ。互いに生意気だったあの頃とはもう違うの」
「お姉様……。私、素敵なお嫁さんになれるかな?」
私達は素敵な伴侶と添い遂げて、子供を産み、温かな家庭を築く。
今度は大人として、母として子供を導いていかなきゃいけないのよ。
「私だってなれたんだから、ビビアナだったら何も問題ないわ」
「……うん、そうよね」
「ちょっと、そこは少しぐらい否定しなさいよ」
「あはっ、そうでなきゃお姉様らしくないわ」
思えばこんな風にビビアナと何の気兼ね無くお喋りしたのは久しぶりかもしれない。
そしてもしかしたら最期の機会かもしれない。
だったら時間が許す限り楽しもうじゃないの。
こうしてビビアナは嫁いでいった。
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「私達もこんな風に祝われたいわね」
「そうだね。今からでも待ち遠しいよ」
私は祝福半分、羨ましがり半分で彼女を見つめ続けた。
ジェラールが学園を卒業するまであと少し。そうなったら次は私達の番よ。
私はビビアナに負けないぐらい幸せになってやるんだから。
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