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Interlude1 アレクサンドラのその後
隣国女王フアナの継承(後)
「ジェラール。そう言えばあの女に恩赦を与えるつもりだと聞いたが、本当か?」
酒が入って酔いが回ってきた頃、グレゴリオ殿下が弟のジェラールに若干咎めるような口調で問いかけてくる。
あの女、言わずとしれた二人の兄であるアルフォンソ様を虜にした、ルシアのこと。
「本当だグレゴリオ兄さん。彼女はもう長い間大人しく神に祈りを捧げる日々を送っている。恩赦を与えるには充分だと考えているよ」
「バエティカに身を置く者な以上口出しする権利など無いが……私は反対だ。あの女のせいで兄上は道を踏み外した。一国の王太子が、だぞ。一生外界から隔離すべきだ」
グレゴリオ殿下はかつてアルフォンソ様がどれほど素晴らしくて偉大だったかを誇らしげに語った。そんな未来の国王に相応しかった方を堕落させたルシアがいかに罪深く、憎んでいるかを口走る。
私は共感できる点ばかりだったのでルシアへの苛立ちが募ったけれど、もう過ぎたことだと何とか怒りを沈めた。ジェラールは一見平然としているようだったけれど、どうも思うところがあるらしく、わずかに瞼を震わせた。
「そうは言うけれど、アルフォンソ兄さんの子がいつまでも母親がいない状況は是正すべきと思うけれど。私達にとっても甥なんだよ」
「甥、か……。私は会ったこともないのだが、そんなに母親を欲しているのか?」
「アレクサンドラと会ってダリア達を羨ましがるぐらいには」
「……あの女が甥にとって良き母になると思うのか?」
「彼女はアルフォンソ兄さんを篭絡させた手練手管だ。子供の扱いを蔑ろにして兄さんを幻滅させる真似をするかな?」
「その魂胆を甥に見透かされなければいいのだがな」
十中八九見透かされるでしょうね。エドガーもダリアも中々賢いから、ルシアの本性と異常さを感じ取れるんじゃないかしら。
それでもエドガーには母親が要る、と思ってしまうのは私のエゴかしら?
「まあいい。我々は兄上を教訓として語り継げばいい。そうだな、カルロス」
「はい、父上。私は伯父上のような不誠実な男にはなりません」
グレゴリオ殿下の長男カルロス王子は父の問いかけに淀みなく答えた。うちのレオンと同じぐらいの歳でありながら既に王太子としての風格を醸し出していて、とても立派に成長したものだと関心する。
だからこそ、おいたわしいと思ってしまう。
グレゴリオ殿下の思いも虚しく、『どきエデ2』の攻略対象者であるカルロス王子はヒロインの毒牙にかかり、アルフォンソ様の二の舞いになる可能性が高い。彼本人の言う不誠実な男に成り下がって婚約者のコンスタンサを捨てる最低な輩に堕ちるんだ。
そうは言ってもアルフォンソ様を反面教師に厳格な教育を施しているカルロスに私がこれ以上忠告したって無意味。彼の末路については黙って見守る他無いでしょう。むしろ彼以外をどうにかする方向に舵を切るべきね。
「アレクサンドラ妃殿下。どうかなさいましたか?」
「いえ、とても頼もしいと思わず感動していました」
グレゴリオ殿下に声をかけられてとっさに嘘をついた。
義理の兄はごまかせたようだけれど、フアナ様がこちらに視線を固定して見つめてくる様子を伺う限り、彼女は騙せなかったみたいね。
しかし、フアナ様は私の予想とは違い……いえ、大きく上回り、微笑を浮かべた。
「アレクサンドラ様。ご忠告はありがたく頂戴しましょう。しかし、私はどのような結果に至っても必ずや私の国となるバエティカの繁栄に繋げることを約束します」
「……!」
「故に、隣国のことと暖かく見守っていただければ幸いです」
フアナ様は言っている。私に過度な干渉をするな。黙って見ていろ。万が一カルロスが色恋に目覚めたとしてもバエティカを危機に追いやる結果にはしない、と。
それは自信であり、決意であった。
もう私の目の前にいるのは可愛らしい少女だったフアナ姫じゃない。
国を背負う立派な女王様なんだ。
感無量、と同時にまだ甘く見ていた自分が情けなくなってきた。
「頼もしい限りですわ、明日の女王陛下」
「貴女様の教えの賜ですよ、未来の王妃陛下」
私達二人は杯を持ち上げ、中に入ったワインを一気に飲み干した。
夜は更けていく。私達が望もうと望むまいと。
今日までのバエティカ王国は終わりを迎えていく。
そして明日からは新たな歴史を綴り始めていくのね。
そう、新たな君主、フアナ女王様の名のもとに。
酒が入って酔いが回ってきた頃、グレゴリオ殿下が弟のジェラールに若干咎めるような口調で問いかけてくる。
あの女、言わずとしれた二人の兄であるアルフォンソ様を虜にした、ルシアのこと。
「本当だグレゴリオ兄さん。彼女はもう長い間大人しく神に祈りを捧げる日々を送っている。恩赦を与えるには充分だと考えているよ」
「バエティカに身を置く者な以上口出しする権利など無いが……私は反対だ。あの女のせいで兄上は道を踏み外した。一国の王太子が、だぞ。一生外界から隔離すべきだ」
グレゴリオ殿下はかつてアルフォンソ様がどれほど素晴らしくて偉大だったかを誇らしげに語った。そんな未来の国王に相応しかった方を堕落させたルシアがいかに罪深く、憎んでいるかを口走る。
私は共感できる点ばかりだったのでルシアへの苛立ちが募ったけれど、もう過ぎたことだと何とか怒りを沈めた。ジェラールは一見平然としているようだったけれど、どうも思うところがあるらしく、わずかに瞼を震わせた。
「そうは言うけれど、アルフォンソ兄さんの子がいつまでも母親がいない状況は是正すべきと思うけれど。私達にとっても甥なんだよ」
「甥、か……。私は会ったこともないのだが、そんなに母親を欲しているのか?」
「アレクサンドラと会ってダリア達を羨ましがるぐらいには」
「……あの女が甥にとって良き母になると思うのか?」
「彼女はアルフォンソ兄さんを篭絡させた手練手管だ。子供の扱いを蔑ろにして兄さんを幻滅させる真似をするかな?」
「その魂胆を甥に見透かされなければいいのだがな」
十中八九見透かされるでしょうね。エドガーもダリアも中々賢いから、ルシアの本性と異常さを感じ取れるんじゃないかしら。
それでもエドガーには母親が要る、と思ってしまうのは私のエゴかしら?
「まあいい。我々は兄上を教訓として語り継げばいい。そうだな、カルロス」
「はい、父上。私は伯父上のような不誠実な男にはなりません」
グレゴリオ殿下の長男カルロス王子は父の問いかけに淀みなく答えた。うちのレオンと同じぐらいの歳でありながら既に王太子としての風格を醸し出していて、とても立派に成長したものだと関心する。
だからこそ、おいたわしいと思ってしまう。
グレゴリオ殿下の思いも虚しく、『どきエデ2』の攻略対象者であるカルロス王子はヒロインの毒牙にかかり、アルフォンソ様の二の舞いになる可能性が高い。彼本人の言う不誠実な男に成り下がって婚約者のコンスタンサを捨てる最低な輩に堕ちるんだ。
そうは言ってもアルフォンソ様を反面教師に厳格な教育を施しているカルロスに私がこれ以上忠告したって無意味。彼の末路については黙って見守る他無いでしょう。むしろ彼以外をどうにかする方向に舵を切るべきね。
「アレクサンドラ妃殿下。どうかなさいましたか?」
「いえ、とても頼もしいと思わず感動していました」
グレゴリオ殿下に声をかけられてとっさに嘘をついた。
義理の兄はごまかせたようだけれど、フアナ様がこちらに視線を固定して見つめてくる様子を伺う限り、彼女は騙せなかったみたいね。
しかし、フアナ様は私の予想とは違い……いえ、大きく上回り、微笑を浮かべた。
「アレクサンドラ様。ご忠告はありがたく頂戴しましょう。しかし、私はどのような結果に至っても必ずや私の国となるバエティカの繁栄に繋げることを約束します」
「……!」
「故に、隣国のことと暖かく見守っていただければ幸いです」
フアナ様は言っている。私に過度な干渉をするな。黙って見ていろ。万が一カルロスが色恋に目覚めたとしてもバエティカを危機に追いやる結果にはしない、と。
それは自信であり、決意であった。
もう私の目の前にいるのは可愛らしい少女だったフアナ姫じゃない。
国を背負う立派な女王様なんだ。
感無量、と同時にまだ甘く見ていた自分が情けなくなってきた。
「頼もしい限りですわ、明日の女王陛下」
「貴女様の教えの賜ですよ、未来の王妃陛下」
私達二人は杯を持ち上げ、中に入ったワインを一気に飲み干した。
夜は更けていく。私達が望もうと望むまいと。
今日までのバエティカ王国は終わりを迎えていく。
そして明日からは新たな歴史を綴り始めていくのね。
そう、新たな君主、フアナ女王様の名のもとに。
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