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Interlude1 アレクサンドラのその後
公爵令嬢コンスタンサの婚約(後)
「ご心配なさらずとも弟のエクトルが立派に成長してくれます。私と兄はその支えになれれば充分ですわ」
私の提案を天からの啓示と受け取ったか、悪魔の囁きと感じたか、は定かじゃない。
ただ、心に留めてもらえればいい。いざって時のためにね。
何しろ『どきエデ2』の通りに事が進んだら……破滅が待ち受けるだけだもの。
「そう、エクトルもお姉さんの期待に応えて立派になりなさい」
「……ええ、勿論ですよ」
エクトルもお子様ね。不機嫌さをあらわにするだなんて。優秀な姉といつも比較されるせいでコンプレックスを抱いているのは知ってたけれど、それを隠そうともしないのは少しまずいんじゃないかしら。
まあいいわ。前世のわたしも彼はあまり好きじゃなかったし。ただ彼が順当に公爵家の当主になる展開はカロリーナの苦労が絶えそうにないから、コンスタンサがどう思おうと少しばかり介入させてもらいましょう。
「ねえコンスタンサ。貴女もあと数年もすれば国を代表する淑女になる。そこでだけれど、私がとっておきの教師を紹介してあげる」
「妃殿下の、ですか? せっかくの申し出ですが、バエティカにも優秀な方は大勢いらっしゃいますし……」
「知識や教養は何も心配していないわ。ただ、人生の先輩から学ぶべきことがまだあるんじゃないか、って思うの。身内とは違った観点を持つ者から、ね」
「……そこまで仰っしゃるのでしたら是非よろしくお願いいたします。それで、どのような方なのですか?」
よっし、食いついた。ここで彼女にコンスタンサを見張らせておけばわざわざ私自らが舞台に上がらずとも状況を把握できるわ。と同時に少しずつコンスタンサを誘導することだって可能になるし。
「我が国の公爵夫人も務めている立派な女性よ」
セナイダー頼むわよー。
なお、事後承諾である。夫であるお兄様の非難は聞かないことにしましょう。
期間は……『どきエデ2』ヒロインが登場する数ヶ月前ぐらいからでいいわね。
「ところでカロリーナ様。ここだけの話ですが、私の息子のレオンを一年ほどこちらに留学させようかと検討していますの」
「まあ、それは我が国にとっても光栄ですわ。こちらの王立学院はタラコネンシス王国の王立学園の姉妹校、留学制度もありますしね」
「第二王子のレオンはいずれ王になるアルベルトを支えられるようにならねばいけません。アルベルトと同じ視点では駄目だと思いますので」
「確か娘のコンスタンサと同い年でしたか。良き学友になることでしょう」
そして忘れちゃいけないのが、隣国王子レオンを『どきエデ2』に登場させること。
ただ、アルフォンソ様とルシアの子じゃなくなったレオンは『どきエデ2』とは全くの別人になってしまっている。それがどう作用するかは私だって蓋を開けてみなきゃ分からないわ。
レオンのことだからヒロインに惑わされないとは思うのだけれど……ぜひ乙女ゲームの脚本を覆してきてほしいわ。
「それでは夜もまだ長いことですし、お互い引き続き今宵の宴を楽しみますよう」
「お待ちになってアレクサンドラ様」
会釈して立ち去ろうとする私の腕をカロリーナ様が掴んだ。
その面持ち……いえ、形相は思い詰めたように焦りが交じった真剣なものだった。
「何か?」
「……貴女様はまた出る、とお考えなの?」
「出る、とは? ……ああ、『傾国』が、ですか」
「そう、『女狐』ですわ」
ジェラールやニコラスには私達の会話は要領を得ないでしょう。けれど私達にはこれだけでもちゃんと通じ合う。だってあの一番忙しかった一日で先を憂いて話し合った内容と同じだもの。
「出そうな雰囲気ではありますわね」
「……そう、もう一度覚悟を決めておかなければいけないのですね」
そうは思わない?との言葉も込めて微笑んでおくと、カロリーナは唇をきゅっと結んでつばを飲み込んだ。そして……あの時と同じように決意を秘めた目で私を見つめてくる。いいわねカロリーナ、やっぱり貴女は私好みよ。
やがて優雅な曲が流れ始め、出席者は各々の異性の相手と手を取り合う。
新たな王太子として挨拶を交わしていたカルロスがやってきて、爽やかな笑顔でコンスタンサを誘う。素敵にはにかんだコンスタンサは彼の手を取り、会場の中央へと向かっていった。
「じゃあ僕らも踊ろうか、アレクサンドラ」
「ええ、ジェラール」
私も私の生涯の伴侶と見つめ合い、目の前の相手しか目に映らない二人だけの世界に入り、優雅に踊る。一曲終わろうが二曲終わろうが私達は満足しない。愛した人の温かさ、優しさ、頼もしさ、全てを感じて幸せに浸る。
布石は慌てず、着実に打っていきましょう。
でも、あれだけ遠かった『どきエデ2』の舞台がもう目の前に迫ってきている。
果たしてどんな物語になるか、楽しみにしましょう。
私の提案を天からの啓示と受け取ったか、悪魔の囁きと感じたか、は定かじゃない。
ただ、心に留めてもらえればいい。いざって時のためにね。
何しろ『どきエデ2』の通りに事が進んだら……破滅が待ち受けるだけだもの。
「そう、エクトルもお姉さんの期待に応えて立派になりなさい」
「……ええ、勿論ですよ」
エクトルもお子様ね。不機嫌さをあらわにするだなんて。優秀な姉といつも比較されるせいでコンプレックスを抱いているのは知ってたけれど、それを隠そうともしないのは少しまずいんじゃないかしら。
まあいいわ。前世のわたしも彼はあまり好きじゃなかったし。ただ彼が順当に公爵家の当主になる展開はカロリーナの苦労が絶えそうにないから、コンスタンサがどう思おうと少しばかり介入させてもらいましょう。
「ねえコンスタンサ。貴女もあと数年もすれば国を代表する淑女になる。そこでだけれど、私がとっておきの教師を紹介してあげる」
「妃殿下の、ですか? せっかくの申し出ですが、バエティカにも優秀な方は大勢いらっしゃいますし……」
「知識や教養は何も心配していないわ。ただ、人生の先輩から学ぶべきことがまだあるんじゃないか、って思うの。身内とは違った観点を持つ者から、ね」
「……そこまで仰っしゃるのでしたら是非よろしくお願いいたします。それで、どのような方なのですか?」
よっし、食いついた。ここで彼女にコンスタンサを見張らせておけばわざわざ私自らが舞台に上がらずとも状況を把握できるわ。と同時に少しずつコンスタンサを誘導することだって可能になるし。
「我が国の公爵夫人も務めている立派な女性よ」
セナイダー頼むわよー。
なお、事後承諾である。夫であるお兄様の非難は聞かないことにしましょう。
期間は……『どきエデ2』ヒロインが登場する数ヶ月前ぐらいからでいいわね。
「ところでカロリーナ様。ここだけの話ですが、私の息子のレオンを一年ほどこちらに留学させようかと検討していますの」
「まあ、それは我が国にとっても光栄ですわ。こちらの王立学院はタラコネンシス王国の王立学園の姉妹校、留学制度もありますしね」
「第二王子のレオンはいずれ王になるアルベルトを支えられるようにならねばいけません。アルベルトと同じ視点では駄目だと思いますので」
「確か娘のコンスタンサと同い年でしたか。良き学友になることでしょう」
そして忘れちゃいけないのが、隣国王子レオンを『どきエデ2』に登場させること。
ただ、アルフォンソ様とルシアの子じゃなくなったレオンは『どきエデ2』とは全くの別人になってしまっている。それがどう作用するかは私だって蓋を開けてみなきゃ分からないわ。
レオンのことだからヒロインに惑わされないとは思うのだけれど……ぜひ乙女ゲームの脚本を覆してきてほしいわ。
「それでは夜もまだ長いことですし、お互い引き続き今宵の宴を楽しみますよう」
「お待ちになってアレクサンドラ様」
会釈して立ち去ろうとする私の腕をカロリーナ様が掴んだ。
その面持ち……いえ、形相は思い詰めたように焦りが交じった真剣なものだった。
「何か?」
「……貴女様はまた出る、とお考えなの?」
「出る、とは? ……ああ、『傾国』が、ですか」
「そう、『女狐』ですわ」
ジェラールやニコラスには私達の会話は要領を得ないでしょう。けれど私達にはこれだけでもちゃんと通じ合う。だってあの一番忙しかった一日で先を憂いて話し合った内容と同じだもの。
「出そうな雰囲気ではありますわね」
「……そう、もう一度覚悟を決めておかなければいけないのですね」
そうは思わない?との言葉も込めて微笑んでおくと、カロリーナは唇をきゅっと結んでつばを飲み込んだ。そして……あの時と同じように決意を秘めた目で私を見つめてくる。いいわねカロリーナ、やっぱり貴女は私好みよ。
やがて優雅な曲が流れ始め、出席者は各々の異性の相手と手を取り合う。
新たな王太子として挨拶を交わしていたカルロスがやってきて、爽やかな笑顔でコンスタンサを誘う。素敵にはにかんだコンスタンサは彼の手を取り、会場の中央へと向かっていった。
「じゃあ僕らも踊ろうか、アレクサンドラ」
「ええ、ジェラール」
私も私の生涯の伴侶と見つめ合い、目の前の相手しか目に映らない二人だけの世界に入り、優雅に踊る。一曲終わろうが二曲終わろうが私達は満足しない。愛した人の温かさ、優しさ、頼もしさ、全てを感じて幸せに浸る。
布石は慌てず、着実に打っていきましょう。
でも、あれだけ遠かった『どきエデ2』の舞台がもう目の前に迫ってきている。
果たしてどんな物語になるか、楽しみにしましょう。
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