84 / 88
Interlude1 アレクサンドラのその後
王妃アレクサンドラの誤算(後)
「皇帝陛下、ならびに王妃陛下。呼ばれて馳せ参じました」
久しぶりにお会いしたアルフォンソ様はさすがに老けていた。けれどあの日のお義父様を彷彿とさせる渋さと落ち着きがあって、好青年だった頃とはまた違った格好良さがあった。総じていい感じに年をとったと言えるでしょう。
一方のルシアは少女のような可愛らしさと大人の女性としての美しさを兼ね備えていた。年相応なのにあの日から印象が変わっていないのは驚く他無いわ。何より……『どきエデ2』で登場した前作ヒロインのままなんだから歓心しちゃうわ。
「この度、隣国バエティカに留学している私達の子、第二王子のレオンが王立学院を卒業することになった。本来なら私達が出向くのが礼儀なのだが、あいにく先の国内の不祥事により立て込んでしまっている。ついては貴公等に私達の代理として出席してもらいたい」
「畏まりました。誠心誠意務めます」
国王として玉座よりアルフォンソ様を見据えるジェラール。臣下として弟のジェラールにかしずくアルフォンソ様。あの恋の過ちが無かったらきっと立場は逆だったでしょうに。自業自得なんだけれど、現実は残酷よね。
跪いて頭を垂れたアルフォンソ様夫妻はジェラールからの命令にも動じず、一礼して立ち去ろうとする。私がアルフォンソ様からルシアへと視線を移したのは何となくだったけれど、優雅に微笑を浮かべる彼女の表情がわずかに変化した……気がした。
(ほくそ笑んだ……?)
まるで勝ち誇られた気がして私は思わず立ち上がってしまう。
突然の挙動に一同は騒然となった。隣のジェラールすら驚いた様子だったわ。
そんな私は恥じて何でもないことを示しつつ座ろうとして……突然脳に電流が走る。
どうしてこの時期に悪徳貴族共が一斉に検挙されたのかしら?
偶然にしては出来すぎていない? 誰かが裏で糸を引いていたんじゃないの?
そう、まるでやんごとなき家柄の殿方を毒牙にかけた、目の前のヒロインみたいに。
「ルシア、まさかアンタ……」
悪徳貴族共を扇動したんじゃないの? 私に身動きを取れなくして、自分が『どきエデ2』の舞台に登場するために。
もちろん証拠は何一つ無い。現時点じゃあ私の被害妄想に過ぎない。けれどヒロインとしてアルフォンソ様を攻略する裏でお義母様やジェラールを焚き付けて危機感を煽って思うがままにした彼女の手腕なら何ら不思議でもない。
そんな私の疑念への答えとばかりに彼女は優雅にお辞儀してみせた。男爵令嬢時代の芋っぽさ……もとい、頼りない初々しさの欠片もない、王族のアルフォンソ様の妻として相応しい仕草だった。
「レオン殿下の晴れ舞台、アレクサンドラ陛下に代わってこのわたしがしかと目に焼き付けてまいります。ご報告をお待ち下さい」
やられた……! もう王妃は私になったんだから、って油断してたかも!
くーやーしーいー! 私だって直に見たかったのに。今度は当事者としてじゃなく!
けれど、隣国国王夫妻じゃなくルシアとアルフォンソ様が登場することに意味がある、とも思えるし、かなり複雑よね……。
そう言えばルシアは息子のエドガーをアンヘラの下に送っていたっけ。何でも執事として彼女を守り、時には苦言を呈して、仕えているんだとか。レオンともそれなりに情報を共有して意見を交わしているそうで。
今のところアンヘラは逆ハーレムルートを突き進んでいるようね。けれどコンスタンサが前世の記憶を思い出してる時点で破綻してるし、エドガーとレオンの存在が更に辞退を複雑にしている。とてもこのまま順当に終わるとは思えない。
だから直に体験したかったんだけれど、もう私にはどうしようもないわ。
「そう……任せるしかないわね」
「では行ってきます」
玉座に崩れる私を他所にルシアは再びお辞儀をして謁見の間より退室した。
あーあ。『どきエデ2』がどんな結末になるかは報告待ちかー。
最後の微笑むのはヒロインか、悪役令嬢か。それとも……。
楽しみにしているわよ。男爵令嬢アンヘラ、そして公爵令嬢コンスタンサ。
貴女達は定められた運命に勝てるかしら?
久しぶりにお会いしたアルフォンソ様はさすがに老けていた。けれどあの日のお義父様を彷彿とさせる渋さと落ち着きがあって、好青年だった頃とはまた違った格好良さがあった。総じていい感じに年をとったと言えるでしょう。
一方のルシアは少女のような可愛らしさと大人の女性としての美しさを兼ね備えていた。年相応なのにあの日から印象が変わっていないのは驚く他無いわ。何より……『どきエデ2』で登場した前作ヒロインのままなんだから歓心しちゃうわ。
「この度、隣国バエティカに留学している私達の子、第二王子のレオンが王立学院を卒業することになった。本来なら私達が出向くのが礼儀なのだが、あいにく先の国内の不祥事により立て込んでしまっている。ついては貴公等に私達の代理として出席してもらいたい」
「畏まりました。誠心誠意務めます」
国王として玉座よりアルフォンソ様を見据えるジェラール。臣下として弟のジェラールにかしずくアルフォンソ様。あの恋の過ちが無かったらきっと立場は逆だったでしょうに。自業自得なんだけれど、現実は残酷よね。
跪いて頭を垂れたアルフォンソ様夫妻はジェラールからの命令にも動じず、一礼して立ち去ろうとする。私がアルフォンソ様からルシアへと視線を移したのは何となくだったけれど、優雅に微笑を浮かべる彼女の表情がわずかに変化した……気がした。
(ほくそ笑んだ……?)
まるで勝ち誇られた気がして私は思わず立ち上がってしまう。
突然の挙動に一同は騒然となった。隣のジェラールすら驚いた様子だったわ。
そんな私は恥じて何でもないことを示しつつ座ろうとして……突然脳に電流が走る。
どうしてこの時期に悪徳貴族共が一斉に検挙されたのかしら?
偶然にしては出来すぎていない? 誰かが裏で糸を引いていたんじゃないの?
そう、まるでやんごとなき家柄の殿方を毒牙にかけた、目の前のヒロインみたいに。
「ルシア、まさかアンタ……」
悪徳貴族共を扇動したんじゃないの? 私に身動きを取れなくして、自分が『どきエデ2』の舞台に登場するために。
もちろん証拠は何一つ無い。現時点じゃあ私の被害妄想に過ぎない。けれどヒロインとしてアルフォンソ様を攻略する裏でお義母様やジェラールを焚き付けて危機感を煽って思うがままにした彼女の手腕なら何ら不思議でもない。
そんな私の疑念への答えとばかりに彼女は優雅にお辞儀してみせた。男爵令嬢時代の芋っぽさ……もとい、頼りない初々しさの欠片もない、王族のアルフォンソ様の妻として相応しい仕草だった。
「レオン殿下の晴れ舞台、アレクサンドラ陛下に代わってこのわたしがしかと目に焼き付けてまいります。ご報告をお待ち下さい」
やられた……! もう王妃は私になったんだから、って油断してたかも!
くーやーしーいー! 私だって直に見たかったのに。今度は当事者としてじゃなく!
けれど、隣国国王夫妻じゃなくルシアとアルフォンソ様が登場することに意味がある、とも思えるし、かなり複雑よね……。
そう言えばルシアは息子のエドガーをアンヘラの下に送っていたっけ。何でも執事として彼女を守り、時には苦言を呈して、仕えているんだとか。レオンともそれなりに情報を共有して意見を交わしているそうで。
今のところアンヘラは逆ハーレムルートを突き進んでいるようね。けれどコンスタンサが前世の記憶を思い出してる時点で破綻してるし、エドガーとレオンの存在が更に辞退を複雑にしている。とてもこのまま順当に終わるとは思えない。
だから直に体験したかったんだけれど、もう私にはどうしようもないわ。
「そう……任せるしかないわね」
「では行ってきます」
玉座に崩れる私を他所にルシアは再びお辞儀をして謁見の間より退室した。
あーあ。『どきエデ2』がどんな結末になるかは報告待ちかー。
最後の微笑むのはヒロインか、悪役令嬢か。それとも……。
楽しみにしているわよ。男爵令嬢アンヘラ、そして公爵令嬢コンスタンサ。
貴女達は定められた運命に勝てるかしら?
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。