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獣の瞳
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引越しは案外早く終わった。親戚が慧人に興味がなかったのと彼には私物がなかったからだ。だだっ広いあの家には慧人のものなんてひとつもなかった。
人が増えて少しだけ賑やかになった居間で雑談をする。2日前の自分には考えられない光景だ。何も持たないからっぽな彼を見てなにか与えてやりたいと思った。それが咲真のエゴだったとしても。
「明日買い物に行こうか、茶碗や洋服を買おう。」
申し訳なさそうに笑う彼は昨日の無邪気さがすっかり鳴りを潜めていた。
「なんか出会ってまだ2日なのにこんなに良くしてもらって…申し訳ないっす。どうして俺なんかに構うんすか?」
「君が好きだからだよ。」
自信なさげに俯いてしまった慧人に迷うことなくそう告げる。その言葉に続いてとめどめなく愛の告白が口から溢れ出た。
恥ずかしげもなく紡がれる褒め言葉に慧人は顔を真っ赤にして咲真の口を塞いだ。
「もう、わかったッスから!………そんな風に言われると照れるっす…。」
咲真はなぜ慧人が照れているのかわからなかった。綺麗なものに綺麗と言うのは当たり前のことで恥などという概念は端からなかったのだ。
未だ顔を赤く染めている慧人を見て咲真は思った。
『この子ものすごくチョロいのでは………。見ず知らずの男の家に転がり込んじゃうし、ちょっと強引に押したら付き合えちゃうのでは……!?』
「慧人君…その私たち付き合わないかい?」
「はぁ?!」
そりゃ驚くだろう突然、ましてや同性に告白されたのだ。
「さっき言った通り私は君のことが好きだ、これからどうせ同じ屋根の下で暮らすんだ。この気持ちを隠すことなんてできないと思ってね!もし告白を受け入れられないならその時は同居の話はなしだ。」
親戚の保護下を抜けた彼にとってほぼ脅しのようなものだろう。すこし…いやかなり卑怯だが仕方ない、昔から欲しいものはどんな手を使っても手に入れたい性分なのだ。
「………。」
慧人は黙りこくってしまってピクリともしない。流石に大人げなかっただろうか。
「慧人君…っ!」
咲真が言葉を発する前に慧人は咲真を押し倒した。そのまま上に覆いかぶさって唇を奪う。
分厚い舌が口内を蹂躙する。ジュルルッと聞くに堪えない音が狭い居間に反響した。飲みきれなかった唾液が頬を伝ってフローリングにまだら模様を描いた。
「はぁはぁ…。」
「そんな卑怯な言い方しなくても俺は咲真さんを手放す気なんてないのに……。むしろそっちから告白してくれて俺嬉しいっす。」
私はやばいものに手を出してしまったのかもしれない。昨日の夜コンビニで見た無邪気で無垢な少年はどこにもおらず。ただ獲物を前にした獣だけが若草色の瞳を細めて咲真を見ていた。
人が増えて少しだけ賑やかになった居間で雑談をする。2日前の自分には考えられない光景だ。何も持たないからっぽな彼を見てなにか与えてやりたいと思った。それが咲真のエゴだったとしても。
「明日買い物に行こうか、茶碗や洋服を買おう。」
申し訳なさそうに笑う彼は昨日の無邪気さがすっかり鳴りを潜めていた。
「なんか出会ってまだ2日なのにこんなに良くしてもらって…申し訳ないっす。どうして俺なんかに構うんすか?」
「君が好きだからだよ。」
自信なさげに俯いてしまった慧人に迷うことなくそう告げる。その言葉に続いてとめどめなく愛の告白が口から溢れ出た。
恥ずかしげもなく紡がれる褒め言葉に慧人は顔を真っ赤にして咲真の口を塞いだ。
「もう、わかったッスから!………そんな風に言われると照れるっす…。」
咲真はなぜ慧人が照れているのかわからなかった。綺麗なものに綺麗と言うのは当たり前のことで恥などという概念は端からなかったのだ。
未だ顔を赤く染めている慧人を見て咲真は思った。
『この子ものすごくチョロいのでは………。見ず知らずの男の家に転がり込んじゃうし、ちょっと強引に押したら付き合えちゃうのでは……!?』
「慧人君…その私たち付き合わないかい?」
「はぁ?!」
そりゃ驚くだろう突然、ましてや同性に告白されたのだ。
「さっき言った通り私は君のことが好きだ、これからどうせ同じ屋根の下で暮らすんだ。この気持ちを隠すことなんてできないと思ってね!もし告白を受け入れられないならその時は同居の話はなしだ。」
親戚の保護下を抜けた彼にとってほぼ脅しのようなものだろう。すこし…いやかなり卑怯だが仕方ない、昔から欲しいものはどんな手を使っても手に入れたい性分なのだ。
「………。」
慧人は黙りこくってしまってピクリともしない。流石に大人げなかっただろうか。
「慧人君…っ!」
咲真が言葉を発する前に慧人は咲真を押し倒した。そのまま上に覆いかぶさって唇を奪う。
分厚い舌が口内を蹂躙する。ジュルルッと聞くに堪えない音が狭い居間に反響した。飲みきれなかった唾液が頬を伝ってフローリングにまだら模様を描いた。
「はぁはぁ…。」
「そんな卑怯な言い方しなくても俺は咲真さんを手放す気なんてないのに……。むしろそっちから告白してくれて俺嬉しいっす。」
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