V3

チャッピー&せんせ

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第一章

日常の風景(ラン)

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 こっそりと携帯やスマホをいじる者、筆箱に手鏡を立て掛け眉毛の手入れをする者、ノートをとるにも内容よりも可愛い字を書くことに夢中になる者……。
 この時限を担当する初老の現代国語の男性教師は、そんな彼女たちを見て見ぬふりで、ひたすら授業を進める。彼は頭の中では無事に終わることだけを考えていた。ヘタに関わらない方がいいのだ。ここで熱血先生ぶって、生徒を注意しようものなら、ツイッターであることないこと書かれて社会復帰できなくなる。現に何人もの同僚がその目に遭っている。生徒が騒いで授業妨害をしているクラスに比べれば、静かに座っていてくれるだけでも助かる。高校二年生ともなれば、多少は大人……目に余るほどの羽目を外すことは少ないことにホッとしている。この子たちに現代国語の解説をするより、幼稚園児に絵本の読み聞かせをすることの方がどれだけ価値のあることか……、そんなことばかりを考えながら、彼は授業を無機質に進める。
 マンモス女子高の二年生。彼女たちにとって、授業は長距離を潜水のまま泳ぐようなものだ。喋りたい、とにかくお喋りしたい。それをジッと堪えて、座っていなければならない。
 教師も我慢だが、生徒の方も我慢だった。

 その中の一人に如月ランはいた。

 彼女は当然教科書とノートは開いているが、黒板の前に立っている男性教師の声など微塵も入っていなかった。ひたすら、前髪の配置と格闘するばかりだ。スマホの鏡面をいろんな角度にして、自分にとってベストとなる髪型を必死に模索中だ。
 彼女たち女子高生にとっては、「可愛い」が勝利者なのだ。彼女たちはそう信じ切っていた。その勝利者になるために、彼女たちは日夜奮闘していた。
 現代国語などは勝利する上で必要のないもの。数学や物理、英語においては、もはや敵キャラ的存在であった。
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