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チャッピー&せんせ

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第一章

月曜日の午後(ラン)

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 放課後、ランはいつも通り数人の友達とワイワイと騒ぎながら教室を出た。定期考査の期間以外は勉強の話しなどしたことはない。もっぱら、恋愛トークや好きな芸能人、そして、おしゃれのことに時間を割いている。
 特に今日、月曜日は好きな歌番組と、お気に入りのアイドルが主演のドラマが立て続けにあるので、それだけで彼女たちにとっては格別な御馳走だ。話題が尽きることはない。
 しかも器用なことに、彼女たちのそれぞれの片手にはスマホが握られ、こっちはこっちでネットを使ってそれぞれの別の相手同士で話が進んでいる。彼女たちにとって、お喋りを止めることは、呼吸を止めることに等しいのかも知れない。
 今日も駅までの道のりは恒例のお喋りにタイムになっていた。話に夢中で、意識しないまま最寄りの駅に着いていた。こんなことは日常茶飯事である。
 改札口までくると、路線の上り組と下り組とに別れるため、ここでしばしのお別れの座談会。どうせ、すぐにメールでやりとりするのに、なぜか大袈裟に別れを惜しむ。
 この駅はランの通うマンモス女子校の生徒が最も利用する駅なので朝と夕方は女子高生で溢れかえっている。特に夕方の改札口ではレトロな紺色のセーラー服の女子高生の溜まり場と化していた。
 他の乗客にも迷惑がかかるということで、何度か駅側と高校側と改善策を話し合ったという経緯があった。結果、月に何度か高校の先生もこの場に来て、生徒の流れを止めないように誘導することになったのだが、なにせ人数が尋常ではないので、思うようにはかどらないのが実情である。
 今日もマイクで構内放送が入り、改札口前に溜まらないよう指示が流された。しかし、そんなことは彼女たちの耳には入らない。彼女たちにとっては、話しに区切りがつかなければ、耳は正常に作動しないのだ。駅員もすっかりうんざりしていた。
 やがて、話しに区切りがついたかのか、改札を通ったランたちは、自分たちが通った道の記憶もないくらいに話しに花が咲いて、その勢いで乗車してしまった。乗車した瞬間、周りの乗客からは批難に似た冷やかな視線で注目されるも、本人たちはそれさえも気に掛けない……というか、そんなことに気が付くはずもないほど、まだお喋りに夢中だった。そして、一体何がそんなに楽しいのか、電車が動きだしてもお喋りはまだ続く。他の乗客たちは一様にうんざりして、この車両に乗ったことを後悔しているようだった。
 ランは二つの目の駅で友達三人と降車した。降車する際、またまた大袈裟にお別れの儀式が行われ、電車内はさらに騒々しくなる。そして、降車客がすべて降りたあとの閉められたドアを挟んで、ホームと車内でバイバイの応戦がしばらく続いた。
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