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第一章
帰宅(ラン)
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ランたちは到着駅について、改札口でバラバラになった。人数も減ったせいか、さっきまでの勢いのあるお別れの座談会やバイバイの応戦などの大袈裟な『さよならの儀式』はなく、普通に手を振って別れた。駅構内から出ると、ここからは一人で自宅まで歩いて帰る。さっきまでの喧騒が嘘のように、黙りこくっていることに自分さえ違和感を覚えた。まさにパーティの後の静けさのようだった。でも、これがほぼ毎日行われている。躁鬱のような落差だと自分でも思っていた。
しかし、それでもスマホは離さずに画面を凝視したままだった。声は出さないが、やっぱり『お喋り』は続いていた。
途中でいつものコンビニに寄る。これもほぼ日課だ。子供のころから隣の『ゾウ公園』でよく遊び、その帰りによく利用していた馴染みのコンビニである。もう何年も利用している。
『ゾウ公園』とは、公園のシンボルのように大きな薄青いゾウの形をした滑り台が公園の中央に鎮座してあるから、幼稚園のころから、近所の子供たち同士でそう呼んでいた公園だ。そして、いまだにそう呼んでいる。正式な名称は知らない。幼いころは両親と毎日のようにここで遊んだが、さすがに今では前を通るくらいで、久しく園内には足を踏み入れたこともない。子供のころと大きく変わったのは、公園内にあるベンチが地味な木目模様だったものが、いつの間にか黄色のベンチに変えられていたことだ。近所からはすこぶる評判が悪いようである。メインの薄青いゾウがぼやけるほど黄色のベンチが際立ってしまうのだ。これでは今の子供たちは『ゾウ公園』と呼ぶことに抵抗あるだろうなぁ、などと考えてしまう。
『ゾウ公園』横のコンビニに入り、いつもの見慣れた店員に軽く会釈し、雑誌をパラパラと読む。数分だけ時間を潰し、申し訳ない程度のガムとチョコを買って、店を出た。そのまま『ゾウ公園』を通り越して角を曲がった。
さらに数分歩くと、自宅が見えてきた。レンガ模様の家壁と黒縁の窓枠が特徴的なヨーロッパ調の戸建の一軒家が品良く映えた。
そして、母親のお気に入りの赤レンガ模様の門柱には、御影石に彫った『如月』の表札が貼られている。門柱に挟まれた銀色のアルミの門扉を開けて敷地内に入った。そして、艶消しの黒いスチールの玄関ドアの前に立ち、カバンからカギを取り出す。ドアには、赤い花と緑の葉がバランスよく配置されたリーフがきれいに飾ってある。
「ただいまー!」そう言って、ランは元気にドアを開けた。
「おかえり!」
キッチンの方から母親の声がした。
ランはそのまま二階の自室に上がった。そして、紺のセーラー服を脱ぎ、ラフなグレーのジャージーに着替えた。脱いだ制服はいつも通りクローゼットの一番左端に掛ける。朝、寝ぼけていても間違いなく取れる定位置。
階下に降りて来ると、居間で母親が床に腰を降ろし、バームクーヘンと紅茶を出して待っていてくれた。
「はい、おやつよ」
「わーっ! ありがとう! 学校帰りは、甘いものが一番ね」
そう言って、ランはお気に入りのベージュの長ソファに横たわった。そして、横になったまま、はしたない格好でバームクーヘンを咥え、いつも通り母親とたいしたことではないトークをする。
軽いノリの話しが続き、やがて母親は、チラッと時計を見てキッチンに戻った。
ランはイヤホンを付け、スマホから音楽を流し、適当なアプリを立ち上げ、またチャット相手を検索しはじめた。
しかし、それでもスマホは離さずに画面を凝視したままだった。声は出さないが、やっぱり『お喋り』は続いていた。
途中でいつものコンビニに寄る。これもほぼ日課だ。子供のころから隣の『ゾウ公園』でよく遊び、その帰りによく利用していた馴染みのコンビニである。もう何年も利用している。
『ゾウ公園』とは、公園のシンボルのように大きな薄青いゾウの形をした滑り台が公園の中央に鎮座してあるから、幼稚園のころから、近所の子供たち同士でそう呼んでいた公園だ。そして、いまだにそう呼んでいる。正式な名称は知らない。幼いころは両親と毎日のようにここで遊んだが、さすがに今では前を通るくらいで、久しく園内には足を踏み入れたこともない。子供のころと大きく変わったのは、公園内にあるベンチが地味な木目模様だったものが、いつの間にか黄色のベンチに変えられていたことだ。近所からはすこぶる評判が悪いようである。メインの薄青いゾウがぼやけるほど黄色のベンチが際立ってしまうのだ。これでは今の子供たちは『ゾウ公園』と呼ぶことに抵抗あるだろうなぁ、などと考えてしまう。
『ゾウ公園』横のコンビニに入り、いつもの見慣れた店員に軽く会釈し、雑誌をパラパラと読む。数分だけ時間を潰し、申し訳ない程度のガムとチョコを買って、店を出た。そのまま『ゾウ公園』を通り越して角を曲がった。
さらに数分歩くと、自宅が見えてきた。レンガ模様の家壁と黒縁の窓枠が特徴的なヨーロッパ調の戸建の一軒家が品良く映えた。
そして、母親のお気に入りの赤レンガ模様の門柱には、御影石に彫った『如月』の表札が貼られている。門柱に挟まれた銀色のアルミの門扉を開けて敷地内に入った。そして、艶消しの黒いスチールの玄関ドアの前に立ち、カバンからカギを取り出す。ドアには、赤い花と緑の葉がバランスよく配置されたリーフがきれいに飾ってある。
「ただいまー!」そう言って、ランは元気にドアを開けた。
「おかえり!」
キッチンの方から母親の声がした。
ランはそのまま二階の自室に上がった。そして、紺のセーラー服を脱ぎ、ラフなグレーのジャージーに着替えた。脱いだ制服はいつも通りクローゼットの一番左端に掛ける。朝、寝ぼけていても間違いなく取れる定位置。
階下に降りて来ると、居間で母親が床に腰を降ろし、バームクーヘンと紅茶を出して待っていてくれた。
「はい、おやつよ」
「わーっ! ありがとう! 学校帰りは、甘いものが一番ね」
そう言って、ランはお気に入りのベージュの長ソファに横たわった。そして、横になったまま、はしたない格好でバームクーヘンを咥え、いつも通り母親とたいしたことではないトークをする。
軽いノリの話しが続き、やがて母親は、チラッと時計を見てキッチンに戻った。
ランはイヤホンを付け、スマホから音楽を流し、適当なアプリを立ち上げ、またチャット相手を検索しはじめた。
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