異世界に召喚されたが奴隷扱いされた私はエリート騎士様に溺愛される

つぐみ

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その21

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最近、ノアに会えない日が続いていた。

と言うのも、アヤカのメイドになってから、まるでアヤカの当て馬の如く雑用を押し付けられているからだ。
夜遅くまで働かされるため、部屋に戻ると睡魔に負けてしまうのだ。

朝は日が昇るよりもずっと早くに井戸に水を汲みに行かされ、凍えそうなその水を使いアヤカの部屋の掃除をする。
その日のアヤカのドレスを選び準備し、シワのないように整える。

食事は専属のシェフがいるようなのだが、セッティングはサラが行っていた。

少しでも部屋に埃があればぶたれ、ドレスが気に入らなければ足蹴にされた。
時にはグラスも投げつけられ、顔に傷を作った事もある。

ノアに治癒魔法を教えてもらったから、傷はもう無いけれど。

しかし一度、井戸から汲んできた水が冷たすぎて手がかじかみ上手く掃除が出来ず、桶の水をアヤカのドレスに零してしまった事があった。

それを見てアヤカは絶叫し、一体何処から出してきたのか、サラの背中に鞭を打ち付けてきたのだ。

焼け付くような痛みの中、アヤカは何度もサラの背中を痛ぶり続けた。

……最近、神官や兵士達がアヤカの噂をしている。
「ここに来てもう数ヶ月が立つと言うのに、聖主様はまだ何もしてくれない」と、王宮で噂されているのだ。

それが気に食わないのだろう。アヤカの癇癪は日に日に酷くなり、サラへの当たりがきつくなっていった。
この鞭打ちがいい例だ。

痛みは治癒魔法で直ぐに引いたが、こっそりアヤカの部屋の鏡で背中を見ると、傷痕がくっきりと残っていた。
鞭の傷って、こんな風に出来るんだ。なんだか蛇みたいで、気持ち悪い。

他人事のようにそう思った。

そういえば怪我で思い出したのだが、最近ハンコックにも会いに行けてない。
おそらく医務室にいるのだろうけれど、医務室が何処か分からない。

アヤカに聞いたとて教えてもらえないだろうし、兵士に聞く勇気もない。
顔を見せると言ったのに、全然見せれていないことを申し訳なく思った。

とはいえ、しばらくハンコックの世話になることはなさそうだ。
傷は自分で治せることが判明したし、傷痕が残ったとしても、どうせ見せる人もいないし。

要は痛くなければそれでいい。

それにしても、聖主様は一体いつになったらこの国を立て直してくれるのだろう。
先程ジュードとデートだと着飾って出掛けたアヤカは、まだ戻ってこない。

戻ってくる前に全部終わらせておけと言われた雑用をこなしながら、サラは手で汗を拭った。
体を動かしていないと、今にも睡魔に襲われそうだった。

ノアに会えないのが、何より辛かった。
しかし、何処かホッとしている自分もいることに、サラは気付いていた。

あの時。
アヤカが急に王都へ行くから付いて来いとサラを引っ張り出したあの時。

王都で、ノアと会ってしまったのだ。

初めて陽の光の下で見たノアは、見惚れてしまうくらい綺麗だった。
改めて彼の美青年っぷりに、思わずため息が出てしまった。ノアの隣にいる人も凄く格好いい人だったので、もしかして王都の人は皆美形ばかりなんだろうか。

アヤカもノアに同じ感情を抱いたようで、艶かしい所作でノアに近づいていた。
それがどうしようもなく嫌で、不愉快で。目を逸らしたいのに、逸らせなくて。

ノアさんに触らないで。

そう言いたいのに、言えない自分がどうしようもなく嫌で。

そんな時、ノアと目が合ってしまったのだ。まさか口に出てしまっていただろうかと慌てるが、こんな距離では聞こえるはずもない。向こうの会話も聞こえないのだし。

しかしノアは、真っ直ぐに自分を見つめてくる。
まさか、気付かれた……?

急いでスカーフを巻き直し、兵士の後ろに隠れる。

『呪い子』だと、彼にだけは知られたくなかった。

結局そのまま何事もなく王宮に戻った訳だが、あれ以降ノアには会えていない。
それが悲しいことなのか、嬉しいことなのか。サラには分からなくなっていた。

とにかく掃除は終わらせないとと手を動かしていると、けたたましい音を立ててアヤカの部屋の扉が開いた。


「お、お帰りなさいませ」

「あら、まだ掃除が終わってないの? ったく、トロいんだから」

「……申し訳ありません」

「謝って済むと思ってるの? また鞭打ちが必要かしら?」


それを聞いて、思わず体が震えた。
傷は癒えても、あの時の痛みを思い出すと心臓を氷の手で鷲掴みにされたような錯覚さえ覚える。

サラの反応に満足したのか、アヤカは機嫌よく続けた。


「ふふ。明日、王宮でパーティーがあるの」

「パーティー?」

「そうよ。聖主様をもてなすパーティー。ジュード様が約束して下さったの」

「……そうですか」

「あんたも来るのよ。引き立て役にもなるし、私にいっぱい仕えてね」


どうせサラに拒否権はない。

静かに俯くと、気に食わなかったのか、アヤカはサラに向かって靴を投げつけて来た。


「それ、明日のパーティー用の靴だから。夜までにピカピカに磨いておいてよね。あと、これからお風呂に入るわ。とっとと準備して。オイルの用意もよ。マッサージの仕方はもう覚えたわね? ヘマしたら鞭打ちだから」

「……分かりました」


全く気乗りしないが、仕方ない。

サラは投げられた靴の当たった肩を撫でながら、そっと目を伏せた。

やっぱり、ノアさんに会いたいな。





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