12 / 33
⑫
しおりを挟む
夏休みを終え二学期になって隣のクラスを覗くと実琴の机は片付けられていた。
そこには何もなかった。
実琴の担任から伝えられたが、卒業式で配る卒業アルバムの写真も実琴の写真は掲載しないらしい。
まるで最初から実琴なんて存在してなかったのようだ。
実琴の人生は無にされた。
クラスに戻ると安城たちは何事もなかったように笑っている。
あれから私に対するいじめはない。
それでも私に空いた心の穴は塞がらないままだった。
『生きていくには要領よくやらなきゃね』
そう言っていた姉は最期は利益や損得を考えずに不器用な妹を庇って死んだ。
(私は実琴を覚えている)
姉の存在をなかったことになんてさせない。
『復讐なんて考えちゃだめよ』
違うよ母さん。私は復讐なんてしない。
私はただ、いなくなった姉の存在をこの世に知らしめたいの。
姉の生き様を、証明したい。
……私のやるべきこと。
なかったことにされた姉の存在を知らしめることだ。
私は机の引き出しからあるものを探した。
「あるかな……」
小学生の頃以来使っていない。まだ残っているだろうか。
「あった」
取り出したのは原稿用紙。
私はそれを机に広げ一枚目に筆を走らせた。
「なかったことにさせない。実琴の人生を」
実琴が存在した証を私がつくる。
私は真っ白な原稿用紙に鉛筆を走らせた。
***
原稿に向かう日々を送り、作品が完成したのは中学三年の冬休みが終わる頃。
受験勉強もそっちのけに、私は実琴の人生をひとつの物語として完成させた。
「ここに、実琴の人生が綴じてある」
誰が犯人だとか、真実だとか、そんなことを伝えたいわけじゃない。
ただ実琴がちゃんとこの世界にいたっていう証をつくりたかった。
これは移植だ。
学校から消された姉の存在をひとつの物語に移した、魂の移植。
そこには何もなかった。
実琴の担任から伝えられたが、卒業式で配る卒業アルバムの写真も実琴の写真は掲載しないらしい。
まるで最初から実琴なんて存在してなかったのようだ。
実琴の人生は無にされた。
クラスに戻ると安城たちは何事もなかったように笑っている。
あれから私に対するいじめはない。
それでも私に空いた心の穴は塞がらないままだった。
『生きていくには要領よくやらなきゃね』
そう言っていた姉は最期は利益や損得を考えずに不器用な妹を庇って死んだ。
(私は実琴を覚えている)
姉の存在をなかったことになんてさせない。
『復讐なんて考えちゃだめよ』
違うよ母さん。私は復讐なんてしない。
私はただ、いなくなった姉の存在をこの世に知らしめたいの。
姉の生き様を、証明したい。
……私のやるべきこと。
なかったことにされた姉の存在を知らしめることだ。
私は机の引き出しからあるものを探した。
「あるかな……」
小学生の頃以来使っていない。まだ残っているだろうか。
「あった」
取り出したのは原稿用紙。
私はそれを机に広げ一枚目に筆を走らせた。
「なかったことにさせない。実琴の人生を」
実琴が存在した証を私がつくる。
私は真っ白な原稿用紙に鉛筆を走らせた。
***
原稿に向かう日々を送り、作品が完成したのは中学三年の冬休みが終わる頃。
受験勉強もそっちのけに、私は実琴の人生をひとつの物語として完成させた。
「ここに、実琴の人生が綴じてある」
誰が犯人だとか、真実だとか、そんなことを伝えたいわけじゃない。
ただ実琴がちゃんとこの世界にいたっていう証をつくりたかった。
これは移植だ。
学校から消された姉の存在をひとつの物語に移した、魂の移植。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】知られてはいけない
ひなこ
ホラー
中学一年の女子・遠野莉々亜(とおの・りりあ)は、黒い封筒を開けたせいで仮想空間の学校へ閉じ込められる。
他にも中一から中三の男女十五人が同じように誘拐されて、現実世界に帰る一人になるために戦わなければならない。
登録させられた「あなたの大切なものは?」を、互いにバトルで当てあって相手の票を集めるデスゲーム。
勝ち残りと友情を天秤にかけて、ゲームは進んでいく。
一つ年上の男子・加川準(かがわ・じゅん)は敵か味方か?莉々亜は果たして、元の世界へ帰ることができるのか?
心理戦が飛び交う、四日間の戦いの物語。
(第二回きずな児童書大賞で奨励賞を受賞しました)
fall~獣のような男がぼくに歓びを教える
乃木のき
BL
お前は俺だけのものだ__結婚し穏やかな家庭を気づいてきた瑞生だが、元恋人の禄朗と再会してしまう。ダメなのに逢いたい。逢ってしまえばあなたに狂ってしまうだけなのに。
強く結ばれていたはずなのに小さなほころびが2人を引き離し、抗うように惹きつけ合う。
濃厚な情愛の行く先は地獄なのか天国なのか。
※エブリスタで連載していた作品です
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる