命を救った美女令嬢の家でVRMMOをプレイする。いつか彼女と付き合いたい。

茜色 一凛

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五話 『100万ジュエル』

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 俺の部屋に恵里香と二人っきり。女性とこんな風に一つの空間を共有することなんて今までなかったから緊張が止まらない。額から汗がツゥと流れる。ここで二人でプレイするんだろうか? 

 ──心臓の鼓動が激しくなる。

 恵里香はソフトの箱を開けて、中から封筒を取り出すと、カードには戦士Dランクと書かれてるカードが出てきた。そして小冊子の他に金色の封筒も入っていた。

「ふーん、剣で戦うのかしら? ユウキは職種何だったの?」

「俺は魔法使いらしいよ。その金色の封筒って何が入っているんだ?」

「なんでそんなこと聞くのよ。ユウキにも入っていたんじゃないの?」

「いや、俺のには入ってなかったから」

 恵里香は中から一枚のカードを取り出した。そこには。

 選ばれしものへ、あなたは1万人の中から幸運にも選ばれました。よって最初から100万ジュエルをプレゼントします。と記されている。

 ──まじか。何でこんなに運がいいんだ。恐らくジュエルとはゲーム内の通貨の事を指しているのだろう。

「そろそろ始める?」
「このゲーム、コツがいるみたいだけど、説明書読まなくてもいいのか? 技の出し方とか見とかないとキツイんじゃないか?」
「技とか何よ! ゆっくりやっていきましょ。時間はたっぷりあるんだから。しかもそんなのやりながら覚えていくわよ。何言ってんのよ」

 恵里香は勝手に俺のベッドにボブっと、仰向けに身を投げ出す。眼鏡型のハードをかけて「どうやってスタートなの?」と、

「ログインと声に出せば……」

 と、言いかけると、

「ログイン!」

 エリカはゲームの世界へと入っていく。俺は机の椅子に腰かけてログインした。

 すると、さきほどの木の立て札の場所に飛ばされた。ここが恐らくゲームの初期位置なのだ。

「そうそう、ジュエルわけてもいいわよ!」

 真っ青な空に緑の綺麗な草原の世界で恵里香はウキウキしている感じがした。白のワンピースを身に纏い、腰に袋と剣を括り付けている。そして袋を開けるとレインボーカラーの宝石が入っているのを自慢げに見せてくれた。

 気前がいいな。お金持ちだから物欲とかないのか? まさか重いから俺にもってくれってことなのか?

 恵里香に袋ごと手渡された宝石は、意外にも軽くて一個一円玉ぐらいの重さしかない。大きさは炭酸飲料のラムネに入っているビー玉くらいの大きさで、数は10個あるから一つ10万ジュエルの価値が有るのだろう。

 この軽さなら持ち運びも楽でいいや。敵を倒すとこういったジュエルが出てくるんだろうか?

「これ貰ってもいいの? 五個も?」
「そんなわけないじゃない? ユウキは二個よ。八個は私のだから無くさないようにして頂戴。余り物を持ったりするの好きじゃないのよ」

 意外とケチだなとか思いつつも、通過の価値が分からないからなんとも言えない。恵里香が嬉しそうだからまあいいか。

 お金を持たせるのは俺の事を信用しているってことだし、そもそもリアルで同じ部屋にいるんだから持ち逃げされる心配もないか。

 この看板の周りの草原地帯は、相変わらず杖や剣をぶんぶん振り回しているプレイヤーが多い。みんな技の練習に励んでいる。

 今のところは自分の事で精一杯だが、こんな大金持っていることが知られたら、真っ先に目を付けられるはずだ。余り人目にさらさないようにしないといけない。日本の100万はかなり価値が高いがこの世界はどれほどのものなのだろう。

 恵里香は何やら空中にスクリーンを出して技の出し方でも調べているのかと思ったら、ネットに繋いでいる。え? このゲームリアルのネットにも繋がるのか?

 『Lack the world 』 戦士 使い方 

 と、検索して掲示板サイトを眺めている。

 フーンとか言いながら、しばらくするとウインドウを閉じる。

「この先の町に向かうけどいい?」
「そうだな。でも、技の練習は大丈夫なのか?」
「平気よ! 何とかなるわよ! いざとなったらユウキが何とかしてくれるんでしょ?」

「まあ」

 と、頼りない返事をしてみる。

 町に向かって俺達は歩き始めると木の上から一匹の白いスライムが突然地面に落ちてこっちに転がってきた。

 ──ぷよん、ぷよん。

「ユウキ私にやらせて!」
「あ、うん」

 エリカはスライムに向かって走ると、剣を頭上に構え、スイカ割のようにスライムに向かって叩きつける。

 ところが、柔らかいスライムはうねうねとその剣をかいくぐり、ジャンプしてそのまま恵里香のワンピの中に上の方からスっと潜り込んでしまったのだ。

「きゃあああああああ!」
「まじか!」
「とってえええ! とってよおおおおおおお!」

 ──取るも何もどうしたらいいんだ。スライムはエリカの服で、ぴょんぴょん跳ねている。服の中はブラとかしてるのか? 一刻を争う一大事だ。こんな時、こんな時はどうしたらいいんだ……。

 俺にはこんな経験人生で無かったから……、そうもこうも言ってられない。 

 しょうがない……。エリカの方を出来るだけ見ないようにしながら、首元から手をワンピの中に入れていく。

 ──いいのかこれ? いいのか? リアルでSPに見られたらどうなるんだよ! これは……投げられるだけでは済まない。でも、やるしかないんだよな?

 ──ん? なんだこれ? エリカの服の中で勢いよく弾んでうごめいているから、ゴソゴソ手探りしてもなかなか掴めない。それでもやっと掴むと、大きなマシュマロのような感触がした。

「あっ、それっ、ち、違うわっ。それはわたしのっ!」
「ご、ご、ごっ、ごめんんんんんんんー!」

 焦りながらも、さらに奥に手を入れて少し固めのスライムを掴みとり、頭上へと掲げた。俺は何とかやりきったんだ。見てくれたか恵里香。

「よしっ、取れた」

 ベリッ。

 勢いよく引っ張ったせいかエリカのワンピースが破れてしまった。それにはさほど驚かずに、

「そんなことより、早くそれどうにかしてくれない?」

 エリカはもしかしたら大物になれる素質があるのかもしれない。

 スライムは俺の腕にガシガシと噛り付いてくる。

 イタタタッ。このスライムってやつは、厄介だな。杖を持ち直して詠唱する

「ファイアーボール」

 スライムは空中で爆ぜ、小さな透明の宝石が1個ポロリと地面に落ちた。

「これジュエルに似ているわね。」
「それより、その服を何とかした方がいいんじゃないか」
「ユウキのせいじゃない! ユウキが無理やり破ったじゃないの! どうしてくれるのよ! 責任取りなさいよ!」

 周りの女性プレイヤーが俺達の方をチラチラ見てくる。勘違いされてはまずい。落ち着かせないと。

「それはそうなんだけどさ」

 この場合は肯定して相手を認めて上げれば落ち着く。こんな格好でこの辺りをうろつくのはまずい。ブラがないから胸がチラチラと見えてしまっている。そのままにはしとけない。

「このワンピ、真ん中で切って、スカートと服に分けたらいけるはず。いい? こっち来ないで。」

 エリカは何を思いついたのか、そう言って木陰に隠れて、剣で器用にワンピースを切り出す。

 スカートの部分は腰で縛って、トップスは胸元を隠すような、一見水着のような感じになった。俺は周りの様子を伺う振りをしてエリカを凝視している。

「どう? これなら大丈夫でしょ?」
「いいんじゃない」

 まさかエリカにこんな才能があるとは思ってもみなかった。でも、恥ずかしさで頬が赤くなり小刻みに脚が震えている。

 無理してるな。早めに町に行って服を買った方が良さそうだ。VRMMOは他人の行動をネットに色々書き込む人がいるから気を付けないといけない。少しでも変だとマウントをとるやつが現れることもあるし。残念だけど妬みや嫉みもある……。

「似合ってるよ! でも町に着いたら洋服店にいこうか」
「そうね。こんな服だとユウキに襲われるかもしれないから早く行くわよ!」

 両手を伸ばして前で組んで、もじもじするエリカ。そんな姿も可愛い。

 こんな服装では戦闘は出来ない。敵に遭わないように、とにかく町に急ごう。

 しばらく10分ぐらい歩くと街が見えてきた。ここなら洋服店の一つはあるはず。

 先ずは武器屋が見えて、その奥に盾のマークの看板が壁に掛けられた防具屋がある。

 ──洋服店はさすがに無いよな。

「いらっしゃいませ! どんな服をお探しですか?」

 小太りのひげを生やした年配の男性はエリカを見て頬を赤らめ、

「なるほど……」

 と舌なめずりをする。NPCにしては反応がキモイ……。

「戦士向きだと、鎧がいいと思いますが、どれにしましょう」


 ・皮の鎧     100ジュエル
 ・うろこの鎧   200ジュエル
 ・ゴスロリの服 100万ジュエル


 ん? ゴスロリの服?

「すみません、陳列がおかしいのかもしれませんが、ゴスロリの服ってこれも戦士用なんですか?」
「そうですよ。何やら運営から問い合わせがありまして急遽一枚だけ入れることになったんです」

 なにをいっているんだ。こんなところにまで宮内財閥の力が及んでいるのだろうか。末恐ろしい。

「どうする?」

 エリカはこれでしょと言わんばかりにゴスロリの服を穴があくくらいの勢いで見ている。こうなっては買うしかないかな。もともとエリカのジュエルだし。

「買ってもいいよね?」

 顔を近づけながら似合うでしょと言わんばかりに手に持ったゴスロリの服を体に合わせて俺の目をまじまじと交互に見つめてくる。

「因みにこれは何ジュエルなんです?」

 先ほどのスライムが落とした透明なものを見せると。

「これだと1ジュエルですね」

 エリカはウインクしながら、手を合わせて今度は俺を拝んでくる。

 分かったよ。買いましょう。でもちょい待てよ。これ値切れないか? 言い値で買わなくてもこのゲームはリアルに近いと確か説明書に書いてあったし。いつも素直にああ、そうですかと、バカみてた事を考えると、ここはひとつ、

「これっていくらになりますか?」
「お客さんこれは一点ものですよ」
「こんな初期のお店で100万なんて大金、誰も持ち合わせてはいませんよ。本当はいくらなんです?」

 店主は困ったような顔をしながら、こちらを見てくる。

 この場合、視線を逸らしたら負けだ。しっかりと相手の目を見ないと。

「わっ、わかりました。少しお値段お下げましょう。80万ジュエルにしましょう」
「お兄さん! もう一声! この店安いって他の人にも紹介するからさ」

 相手を喜ばせる会話をしたほうが、相手がリズムに乗りやすい。これはほかのVRMMOで俺が学んだことだ。

「仕方ないですねー。分かりました。50万ジュエルに負けましょう」
「よしっ。買います」
「ユウキにしてはやるじゃない!」

 エリカはとびっきりの笑顔をこちらに向けてきた。

 すぐに試着室に入るとゴスロリの服に着替えだした。

 やっぱゴスロリが似合うよな。次はパラソル型の剣でも探してみるか?

 突然左上のスクリーンに赤のドッキリマークが出ている

 アラート

 なんだこれ

 開くと、VRMMOのロット番号3011番のログインボタンが不良です。最近眼鏡型のハードを買われた方はご注意ください。と書かれている。

 ──ちょい待てよ。

 指で情報画面を開いてロット番号を調べる。

 3011

 まじか。

 エリカはどうなんだろう。

 カーテンの隙間から中を覗くとしゃがみこんでいる。

 情報を見たらしい。

「あのさ、ロット番号見た?」

 俺は声をかけると、

「私の3011だった。どうしよう」

 俺の腕を掴むと試着室に引き込んだ。取り敢えず、ログアウトしてみよう。

 2人声を合わせて

「ログアウト」

 出来ない

「ログアウト」

 出来ないよな?

「ログ……」

「これ、リアルの世界で誰かが眼鏡型のハードを取らないと駄目なんじゃない?」

「お手伝いさんが取るまでゲームを楽しんでいればいいだろ」

 まさかこれが始まりだとは、この時は思ってもみなかった。

 ──それより、パンツが落ちてるけど、あれって……。

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