命を救った美女令嬢の家でVRMMOをプレイする。いつか彼女と付き合いたい。

茜色 一凛

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二十話 『道具屋との戦闘』

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「名前教えてもらってもいいか?」

 いつまでもメスゴリラ呼ばわりでは人としてどうかと思う。鎧に包まれ筋肉質の体付きだったから男に見えてたけど、実際はかなりの金髪美女だ。余りにも失礼過ぎたと反省する。

「私はアイカって言います。頼みってなんです? 彼女にしたいとか、そっち系は無理ですけど、できるだけユウキの望みに近いことならしてあげられますよ」

 そう言って胸を押さえていたバスタオルを手で広げようとしてくる。

「い、いや、違うんだ。ジュエルを盗られたから取り返すのを手伝って欲しい!」

 俺はそう言って、アイカの手を押さえてそうじゃないと伝えた。アイカは目をパッと見開き輝きを取り戻すと、

「触っても良かったんですけど……。今からでも行けるけど、どんな相手なんです?」
「最初は親切心で話してくるけど、金目のものを狙ってくる。アイカも気をつけた方がいい。しかも、仲間がいるから」

 アイカは脱衣所でタオルの中に鉄の鎧を入れて器用にも着替え始める。

「行けます! 場所はどこですか?」
「道具屋だ。しかも宿屋の向かいの!」

 俺は自販機から買ったコーヒー牛乳を飲むと答える。

 えっ? と言いい懐疑の表情を浮かべて俺を見る。

「ふざけてません?」
「それが大真面目なんだよ! このゲームどうやら町人がパラメータがやたら強くて、性格に難アリなやつも多いみたいなんだ。面倒事になるかもしれないけど行ける?」

 アイカはなんかソワソワしてるトイレでも我慢しているんだろうか?

「大丈夫です! 先程助けて頂きましたし、当分パーティ組んでもいいぐらいです」

 早口で興奮している。

「それじゃ行こうか? エリカにバレる前に片付けたい」

 俺たちは宿屋から出ると向かいの道具屋へと歩く。外はもう雨があがり空には虹がかかっていた。

 俺もエリカもこの世界で死んだら終わりだ。エリカを連れていくのは今回は危険な感じがする。何となく嫌な予感がした。

「ジュエルかえしてください!」

 大きな声を出しながらアイカは力一杯ドアを引くとドアごと外れてしまった。勢い余ってアイカの頭にドアがぶつかる。

「いったーい」

「大丈夫ですか? 怪我したかもしれませんから、傷とかないか見させて頂いても宜しいですか?」

 カウンターの方から優しそうな声が聞こえてきた。
 
 またこのパターンだ。中から先程の女性が出てくる。そして俺の顔を見てギョッとした表情にすぐに変わり、カウンターの奥の方に向かって声を張り上げる。

「パパー、大変よー!」
「性懲りも無くきやがって、お前も人質にしてやろうか?」

 そこに現れたのは、大きな棍棒を両手に抱えた男。背は2mは有るだろうか、上半身裸で至る所に古い刀や爪の様な傷があり、数々の修羅場をくぐり抜けてきたことが分かる。

 アイカは床で頭を抱えて転げ回っているし、戦力にもなりはしない。さて、どうしたものか。

 呼吸を整えると息を吸い杖に1段階魔力を溜めておく。

 ──はやいっ。

 と、思った瞬間、巨大な棍棒が真横から飛んできた。避けられない。

「グハッ!」

 この一撃はヤバい。肋骨が何本かいった。ヒューヒューして立ち上がれない。──くそっここでくたばるのか俺は……。

 仰向けに倒れ込む。作戦失敗だ。作戦もなんもなかったけど。もしやこいつら……。

「報復に来ると思ってドアの金具を外しといて正解だったわね! まさかこんなに上手くいくなんておもわなかったけど。相手がバカで良かったわ!」

 カウンターの上で、あぐらをかいて、扇子を持ってパタパタ仰いでいる。その白のスカートから三角のベージュの色がチラリと見え、少しドキドキしたその時──。

 ──俺のHPは半分回復した。折れたアバラは『ラッキースケベ』の効果によりくっつく。

 床に転がったまま、すぐに息を吸い、杖に二段階目の魔力を溜めると、杖を思いっきりふってやった。

「ファイアーボール!」

 業火の如く、直径1メートルの炎の塊がこのカウンターの女目掛けて飛んでいく。

 だが、間一髪、先程の男が棍棒で打ち返しやがった。俺の横10センチ位、頬を掠めながらファイアーボールは飛んでいき、後方でどーーんと何かにぶち当たった。

 ──まずい。あっちは宿屋だろうが。こいつは本当にヤバい。本当に町人なのか?

「その女も捕まえて、売り飛ばしましょ」

 荒縄を手にした棍棒野郎がアイカに近づく、慣れた手つきで強引に手首を縛っている。

「やめろおおおおおおー」

 俺は杖を引っ掴んで振りかぶり大男の背中を強打した。

 バキッ!

 杖の先端が折れて飛んでいった。くっそおおおおおー!

 硬すぎる。運営さん。町人の設定おかしくないか?

「きゃあああああああ!」

 大男はアイカの縛られた両腕の紐を壁のフックにかける。

「こりゃ見せしめだな! おい坊主よく見ておくんだな!」

 アイカの兜を外すと滑らかな金髪が肩までサラリと、

「上玉じゃねええか、お前あっちに行ってなさい!」

 そう言って舌なめずりしながら、娘を奥の部屋に行かせる。いやらしい目でアイカを見ている。くそう何とかなんねえか! 俺のせいでえらいことになった。

 そいつは興奮しながらアイカの胸のプレートに手をかけ一気に引きちぎった。

 ボーンと飛び出す二つのスライムが上下にフラフラと揺れている。俺のHPはMAXになった。

 おー! と思わず声を上げて大男が顔を埋めようとしたその時、

 外からガヤガヤと声が聞こえた。

「なに、なに、なに! この部屋から攻撃されたみたいですけど、モンスターの襲来なの?」
「分かりません。宿屋の女将さんは掃除のしすぎで腰を痛めていますし。私達に様子を見て欲しいと言ってましたね!」

 この声はエリカとメグにゃん。来ちゃダメだろ。
 シースルーの服を着たエリカにメイド服のメグがいた。

「ユウキー、これは一体? あなたもあいつの仲間なの?」
「ユウキがこんなことするはずないわ。何かの間違いよ。違うって言いなさいよ!」

 駄目だ。この二人は俺もいっしょになってアイカをひん剥いていると勘違いしている。

「いや違うんだ。俺は助けようとしたんだ」

 そう言って床に転がる何か固いものを掴んだ! まじかそれはアイカの胸当てだった。

「やっぱりそうだったのね。とにかく証拠写真だけでも撮っときましょ」

 メグにゃんは鞄をごそごそしてインスタントカメラを取り出す。そして中腰になり写真をパシャパシャ撮りだした。

「やめてくれー!本当に違うんだよー! あいつに俺たちのジュエルを奪われたから取り戻しに来ただけなんだって!」
「違うでしょ。私のジュエルよ! ユウキそこだけはっきりさせておいて頂戴」
「そいつむちゃ強いから逃げたほうがいい! 誰か仲間を連れてきてくれないか」

 俺は焦り、早口でまくし立てる。


 そんな表情を見てエリカがただ事ではないと理解したのか、

「メグ、もしかしたら本当なのかもしれないわ。あの半裸の男をどうにかしないといけないわね」
「ですね。私は踊り子ですし何もできませんけど応援だけでもよろしいですか?」

 メグは体をくねらせながらヘンテコダンスをしている。手をすぼめ口元に当ててもう片方の手はすぼめた手で腰に当て左右に開いたり閉じたり、これってニワトリダンスか? そもそもダンスと言えるかどうか?

「しょうがないわね。私が攻撃してみわ」

 エリカはそういうと剣を鞘から抜き小脇に抱える。きらりと光る剣。あれいつもの剣と違うような。

「こないだの道具屋さんからサービスで頂いたの。何でも斬れる聖剣カリバンらしわよ」
「すごーい!」

「残念だったな、俺の肉体はどんなものでも折ることのできる肉体よ!」

 さあ打ってみろとこっちに近づいてくる。

 エリカは上に剣を掲げると、この大男に向けて剣を叩きつけた。

 カーン!

 金属音が部屋の中に響き、聖剣カリバンは先が折れて飛んでいく!

「嘘でしょ! そんなはずはないわ。だって道具屋の人がこの剣は折れないって!」
「ごめんそもそもこれどうやって手に入れたの?」
「こないだ、回復薬と魔法薬を買いに行ったときに、シースルーの服でいったらぼっちがーとか言いながら興奮してきて気づいたら聖剣あげるから写真撮らせてと言われたの。きもかったから足で蹴飛ばして剣だけもらってきたわ」

「それはただの鉄の剣だ。ちなみに前の剣は鋼だから前の剣の方がいい」

 
 期待して損した。もうあかん。ここでゲームオーバーかもしれない。諦めて俯きかけたその時カウンターの下にある物を見つけた。

──その名は赤色の三角コーン。

 
 もしかしたらこれでいけるかもしれない。アイカの胸を見てにやつく大男をしり目に作戦会議に入る。

 頷くメグにゃんと、あきれ果てるエリカ。
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