魔法少女

茜色 一凛

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ミーニャン

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 サトルの好きだと言ってくれた言葉。私は凄く嬉しかった。でもそれよりもエリカの気持ちを考えたら、私の出す答えは決まってしまう。

 振り返るとサトルの不安そうな顔が見えた。情けない顔だ。サトルはいざという時本当にしっかり出来ないよね。普段は優しくて気遣いもできるのに。

「ごめんなさい。私、一度もサトルのことそんな風に考えたことないから……」

 言葉を発した瞬間、心臓が酷く締め付けられた。気を緩めると涙が出そうで我慢した。それでも、あんなに好きなのに、両思いでも親友と取り合うとかしたくなかった。

 ましてやエリカがいるとこでそんなことしないで欲しい。

 サトルは寂しげな表情を一瞬したけど、直ぐにいつものサトルに戻り、

「そっか。まー、そうだよな。突然すぎだよな。俺たち幼なじみだし、これまでどうりでいいよな」

 と早口で言う。その後ろにいるエリカは青ざめて棒立ちになってた。

 一度に二人と気まずくなるとかなんなのよ! 私はこの場にはいたくなかった。

 そうだ。私はあの場所に行こう。海の見える白浜海岸。ここからだと走れば10分くらいでつく。

 嫌なことや落ち着きたい時は砂浜に幾つか並ぶ白のベンチに座って波をよく眺めてた。

 しばらく走ると、潮風の香りがしてくる。堤防の急斜面の階段を降りると砂浜が見えその奥には広大な海が地平線の彼方まで続いていた。

「もう嫌だ……」

 全てを投げ出したい時、体ってこんなにも重くなるもんなの? 砂に靴が埋まり足取りが重たい。片方の靴が砂に半分埋まり脱げても、そのまま白い木のベンチにたどり着き、海を眺める。

 涙が溜まりぼやけた視界には荒々しい波が岩に何度も体当たりを繰り返し飛沫が空に舞い上がる。

「私、これからどうしたら良いんだろう……」

 家に帰るのも辛いし、エリカやサトルと顔を合わせるのも辛い。

 それから夕方位までただ呆然と海を眺めていた。いっその事、海に飛び込んだらどうなるんだろう。

 夕焼けの中をとぼとぼと足取り重く自宅に向かって歩くと、電信柱の影のダンボール箱の中に羽の生えた猫がいるのを見かけた。
「ねえ、そろそろならない? 魔法少女に!」

 あいつだ。こないだ合った怪しい猫だ。私が無視をしても付きまとってくる。

「ねえ! 何があったかしらないけど、元気だしてよ!」
「お願いだからほっといてよ! あなたは何がしたいの? 私にはもう何も無いのよ!」

 猫相手に怒鳴り散らしてもなんの意味もない。羽付きだからそもそも猫ではないのかもしれない。

「そうそう。言うの忘れてたけど、あのでんでん虫倒せば、壊された街や人も元に戻るんだけど。ツグミには関係ない事だよね!」

 この猫は明るい口調で話すものの、意地悪そうな目付きでチラリとこっちを見てくる。

 それは本当の話なの? 駄目だ。心が疲れきっていて判断できない。でももしそれが本当ならママは戻ってくるのかな?

 ──いけないこんな怪しい手のひらサイズの猫。しかも羽もついてるし、喋ってる。こんな猫の話を真に受けて本当に大丈夫なの?

 それでも前に進まないといけない。

「──いいよ。魔法少女になるよ」

 私は半分騙されていると分かってて魔法少女になることを決めた。私に居場所はない。ないなら作るしかない。たとえそれが間違っていたとしても。

「僕の事はミーニャんで呼べばいいから。あと君は魔法少女の時はレイカって名前で呼ぶからこれから宜しくね!」

 猫はそう言うと、嬉しそうに空中を飛び回り始めた。

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