5 / 6
ミーニャン
しおりを挟む
サトルの好きだと言ってくれた言葉。私は凄く嬉しかった。でもそれよりもエリカの気持ちを考えたら、私の出す答えは決まってしまう。
振り返るとサトルの不安そうな顔が見えた。情けない顔だ。サトルはいざという時本当にしっかり出来ないよね。普段は優しくて気遣いもできるのに。
「ごめんなさい。私、一度もサトルのことそんな風に考えたことないから……」
言葉を発した瞬間、心臓が酷く締め付けられた。気を緩めると涙が出そうで我慢した。それでも、あんなに好きなのに、両思いでも親友と取り合うとかしたくなかった。
ましてやエリカがいるとこでそんなことしないで欲しい。
サトルは寂しげな表情を一瞬したけど、直ぐにいつものサトルに戻り、
「そっか。まー、そうだよな。突然すぎだよな。俺たち幼なじみだし、これまでどうりでいいよな」
と早口で言う。その後ろにいるエリカは青ざめて棒立ちになってた。
一度に二人と気まずくなるとかなんなのよ! 私はこの場にはいたくなかった。
そうだ。私はあの場所に行こう。海の見える白浜海岸。ここからだと走れば10分くらいでつく。
嫌なことや落ち着きたい時は砂浜に幾つか並ぶ白のベンチに座って波をよく眺めてた。
しばらく走ると、潮風の香りがしてくる。堤防の急斜面の階段を降りると砂浜が見えその奥には広大な海が地平線の彼方まで続いていた。
「もう嫌だ……」
全てを投げ出したい時、体ってこんなにも重くなるもんなの? 砂に靴が埋まり足取りが重たい。片方の靴が砂に半分埋まり脱げても、そのまま白い木のベンチにたどり着き、海を眺める。
涙が溜まりぼやけた視界には荒々しい波が岩に何度も体当たりを繰り返し飛沫が空に舞い上がる。
「私、これからどうしたら良いんだろう……」
家に帰るのも辛いし、エリカやサトルと顔を合わせるのも辛い。
それから夕方位までただ呆然と海を眺めていた。いっその事、海に飛び込んだらどうなるんだろう。
夕焼けの中をとぼとぼと足取り重く自宅に向かって歩くと、電信柱の影のダンボール箱の中に羽の生えた猫がいるのを見かけた。
「ねえ、そろそろならない? 魔法少女に!」
あいつだ。こないだ合った怪しい猫だ。私が無視をしても付きまとってくる。
「ねえ! 何があったかしらないけど、元気だしてよ!」
「お願いだからほっといてよ! あなたは何がしたいの? 私にはもう何も無いのよ!」
猫相手に怒鳴り散らしてもなんの意味もない。羽付きだからそもそも猫ではないのかもしれない。
「そうそう。言うの忘れてたけど、あのでんでん虫倒せば、壊された街や人も元に戻るんだけど。ツグミには関係ない事だよね!」
この猫は明るい口調で話すものの、意地悪そうな目付きでチラリとこっちを見てくる。
それは本当の話なの? 駄目だ。心が疲れきっていて判断できない。でももしそれが本当ならママは戻ってくるのかな?
──いけないこんな怪しい手のひらサイズの猫。しかも羽もついてるし、喋ってる。こんな猫の話を真に受けて本当に大丈夫なの?
それでも前に進まないといけない。
「──いいよ。魔法少女になるよ」
私は半分騙されていると分かってて魔法少女になることを決めた。私に居場所はない。ないなら作るしかない。たとえそれが間違っていたとしても。
「僕の事はミーニャんで呼べばいいから。あと君は魔法少女の時はレイカって名前で呼ぶからこれから宜しくね!」
猫はそう言うと、嬉しそうに空中を飛び回り始めた。
振り返るとサトルの不安そうな顔が見えた。情けない顔だ。サトルはいざという時本当にしっかり出来ないよね。普段は優しくて気遣いもできるのに。
「ごめんなさい。私、一度もサトルのことそんな風に考えたことないから……」
言葉を発した瞬間、心臓が酷く締め付けられた。気を緩めると涙が出そうで我慢した。それでも、あんなに好きなのに、両思いでも親友と取り合うとかしたくなかった。
ましてやエリカがいるとこでそんなことしないで欲しい。
サトルは寂しげな表情を一瞬したけど、直ぐにいつものサトルに戻り、
「そっか。まー、そうだよな。突然すぎだよな。俺たち幼なじみだし、これまでどうりでいいよな」
と早口で言う。その後ろにいるエリカは青ざめて棒立ちになってた。
一度に二人と気まずくなるとかなんなのよ! 私はこの場にはいたくなかった。
そうだ。私はあの場所に行こう。海の見える白浜海岸。ここからだと走れば10分くらいでつく。
嫌なことや落ち着きたい時は砂浜に幾つか並ぶ白のベンチに座って波をよく眺めてた。
しばらく走ると、潮風の香りがしてくる。堤防の急斜面の階段を降りると砂浜が見えその奥には広大な海が地平線の彼方まで続いていた。
「もう嫌だ……」
全てを投げ出したい時、体ってこんなにも重くなるもんなの? 砂に靴が埋まり足取りが重たい。片方の靴が砂に半分埋まり脱げても、そのまま白い木のベンチにたどり着き、海を眺める。
涙が溜まりぼやけた視界には荒々しい波が岩に何度も体当たりを繰り返し飛沫が空に舞い上がる。
「私、これからどうしたら良いんだろう……」
家に帰るのも辛いし、エリカやサトルと顔を合わせるのも辛い。
それから夕方位までただ呆然と海を眺めていた。いっその事、海に飛び込んだらどうなるんだろう。
夕焼けの中をとぼとぼと足取り重く自宅に向かって歩くと、電信柱の影のダンボール箱の中に羽の生えた猫がいるのを見かけた。
「ねえ、そろそろならない? 魔法少女に!」
あいつだ。こないだ合った怪しい猫だ。私が無視をしても付きまとってくる。
「ねえ! 何があったかしらないけど、元気だしてよ!」
「お願いだからほっといてよ! あなたは何がしたいの? 私にはもう何も無いのよ!」
猫相手に怒鳴り散らしてもなんの意味もない。羽付きだからそもそも猫ではないのかもしれない。
「そうそう。言うの忘れてたけど、あのでんでん虫倒せば、壊された街や人も元に戻るんだけど。ツグミには関係ない事だよね!」
この猫は明るい口調で話すものの、意地悪そうな目付きでチラリとこっちを見てくる。
それは本当の話なの? 駄目だ。心が疲れきっていて判断できない。でももしそれが本当ならママは戻ってくるのかな?
──いけないこんな怪しい手のひらサイズの猫。しかも羽もついてるし、喋ってる。こんな猫の話を真に受けて本当に大丈夫なの?
それでも前に進まないといけない。
「──いいよ。魔法少女になるよ」
私は半分騙されていると分かってて魔法少女になることを決めた。私に居場所はない。ないなら作るしかない。たとえそれが間違っていたとしても。
「僕の事はミーニャんで呼べばいいから。あと君は魔法少女の時はレイカって名前で呼ぶからこれから宜しくね!」
猫はそう言うと、嬉しそうに空中を飛び回り始めた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生先はご近所さん?
フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが…
そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。
でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
心が折れた日に神の声を聞く
木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。
どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。
何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。
絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。
没ネタ供養、第二弾の短編です。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる