僕は肉便器 ~皮をめくってなかをさわって~ 【童貞新入社員はこうして開発されました】

ヤミイ

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 古いエアコンが耳障りな音を立てている。

 窓一つない地下室は、まともな調度類もなく、まるで刑務所の独房そのものの雰囲気だ。

 ”特別対策室”とは名ばかりの閑職に追いやられてから、はや一か月。

 誰とも会話せぬまま、この地下室に直行して、朝9時から夕方5時までPCでネットサーフィン。

 さすがの僕も、そろそろ嫌気がさしてきていた。

 会社公認の肉便器として、全国の支店を飛び回っていた頃のことが、なつかしい。

 その後、本部付けに昇格して、大きな会議の後、決まって重役たちにこの肉体を供されたことも。

 確かに、夥しい数の見ず知らずの他人から、数々の性的凌辱を受けるのは、心身ともにきつかった。

 精液の味を良くするために、糖尿病になりかけていたせいもある。

 しかし、それでも、あの頃の僕は、今の自分に比べて、ずっと幸せだったと断言できる。

 なぜって、僕は確かに必要とされていたのだ。

 多くの社員たちから、ストレス解消の最大の功労者として。

 それが今は、このザマだ。

 僕は暗澹たる気分で部屋の中を見渡した。

 コンクリート打ちっ放しの壁に、リノリウムの床。

 今現在僕が座っているキャスター付きの椅子と、その前の事務机以外、何の調度類もない。

 しかも、無いのは調度類だけでなく、仕事も、である。

「指示があるまで、ここで待機するように」

 あのラブホテルでの3Pの翌日。

 彼に言われたのが、その一言だった。

 彼はそれ以来この地下室に姿を見せず、最初の頃は、彼のことだ、きっと今頃Kの調教に夢中になっているのだろうと想像するたびに、気が狂いそうになったものだ。

 でも、30日も無為な日々が続くと、さすがにそんな元気もなくなってくる。

 今もそうだ。

 ネットサーフィンに飽きた僕は、あるものを書こうとしていた。

 辞表、である。

 こんな会社、辞めてやる。

 ここ数日、その思いが強いのだ。

 辞めてその後、何か当てがあるわけではない。

 そもそも、社会人になって3年。

 その間ずっと”男娼”としての職務しか与えられなかった僕には、性的なもの以外、何のスキルもない。

 そんなものを生かせる職場がどこか他にあるとは思えなかったけど、こんな蛇の生殺しのような生活はもう御免だった。

 馴れない手書きで辞表を書き終えようとした、その時である。

 ふいに机の上の電話が鳴った。

 どうやら内線らしい。

 ここへきて初めての出来事に、僕はフリーズした。

 ハッと我に返り、あわてて受話器を耳に当てる。

「仕事だ」

 だしぬけに、彼の声が飛び込んできた。

「おまえにしかできない仕事がある。すぐに上がってこい」
 
 
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