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90 ぬくもりを求めて③
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確か、ここだった…。
街角に立ち、僕は正面に聳える全面ガラス張りの超高層ビルを見上げた。
WASIOビル。
この建物の地下通路の多機能トイレで、僕は初めて一ノ瀬渉に出会ったのだ。
何食わぬ顔で、自動ドアをくぐる。
清涼な空気に、体中の汗が引いていくのがわかった。
会えるだろうか…。
周囲を見回してみる。
スーツ姿の男女が足繁躯く行き来する広大なフロアで、いかにも学生風のラフな服装の僕は明らかに場違いだった。
あの時の渉の言葉を思い出してみる。
ー俺は、このビルを管理する企業の保安課の者だー
確か彼は、僕を慰みものにした痴漢に対し、そう啖呵を切ったものだ。
このビルを管理するのは、IT関連で有名な鷲尾ホールディングス。
保安課へ行けば、彼に会えるということなのか。
受付嬢たちに訊く勇気はなかった。
ただでさえ彼女たちは、時折僕のほうに意味ありげな視線を投げては、その度コソコソ耳打ちし合っているのだ。
仕方なく、案内板を探すことにした。
目当てのものは、奥へと続く通路の入口の壁に設置されていた。
それによると、1階から7階までが様々なテナント企業のオフィスに割り当てられ、8階から12階が管理会社の鷲尾ホールディングス関連のフロアになっているらしかった。
更にその上は、頂上階まで全部、系列会社のホテルの客室という塩梅だ。
ホテル…。
僕は先日、一ノ瀬渉に連れられ、ロイヤルホテルの一室で休憩した時のことを思い出した。
初めての、兜合わせ。
硬く、弾力のある二本の肉棒を、同時にぎゅっと、握られて…。
く。
くう…。
不意にフラッシュバックした映像とそれに伴う性器の疼きに危うく声を上げそうになって、僕は半身を折った。
あの時のビキニショーツを、今日も穿いてきていることを思い出したからである。
あれ以来、この下着なしではいられない。
特に、自分で自分を辱める時は、絶対…。
渉の魂胆に反発を覚えつつも、その実、それが僕の悲しい性だった。
思いもかけないほど近くで、人の囁き声が聴こえてきたのはその時だ。
「な、いいだろ? すぐ済むから」
若手のリーマンがふたり、肩を組むようにしてこちらのほうへと歩いてくる。
ガタイのいいほうが、小柄なほうの肩に覆いかぶさるようにしているさまが、いかにも不自然だ。
「わかってるだろ? おまえの躰は、お偉いさんたちだけのものじゃない。みんなのものなんだぜ」
なんだ?
カラダが、どうしたって?
会話の内容の不穏当さにピンときて、僕は柱の蔭に身を隠しながら首だけ出してふたりを観察した。
そして、次の瞬間「あっ」と喉の奥でかすれた声を上げていた。
近づいてくる二人組の、背の低いほうは、間違いなくあの一ノ瀬渉だったのだ。
街角に立ち、僕は正面に聳える全面ガラス張りの超高層ビルを見上げた。
WASIOビル。
この建物の地下通路の多機能トイレで、僕は初めて一ノ瀬渉に出会ったのだ。
何食わぬ顔で、自動ドアをくぐる。
清涼な空気に、体中の汗が引いていくのがわかった。
会えるだろうか…。
周囲を見回してみる。
スーツ姿の男女が足繁躯く行き来する広大なフロアで、いかにも学生風のラフな服装の僕は明らかに場違いだった。
あの時の渉の言葉を思い出してみる。
ー俺は、このビルを管理する企業の保安課の者だー
確か彼は、僕を慰みものにした痴漢に対し、そう啖呵を切ったものだ。
このビルを管理するのは、IT関連で有名な鷲尾ホールディングス。
保安課へ行けば、彼に会えるということなのか。
受付嬢たちに訊く勇気はなかった。
ただでさえ彼女たちは、時折僕のほうに意味ありげな視線を投げては、その度コソコソ耳打ちし合っているのだ。
仕方なく、案内板を探すことにした。
目当てのものは、奥へと続く通路の入口の壁に設置されていた。
それによると、1階から7階までが様々なテナント企業のオフィスに割り当てられ、8階から12階が管理会社の鷲尾ホールディングス関連のフロアになっているらしかった。
更にその上は、頂上階まで全部、系列会社のホテルの客室という塩梅だ。
ホテル…。
僕は先日、一ノ瀬渉に連れられ、ロイヤルホテルの一室で休憩した時のことを思い出した。
初めての、兜合わせ。
硬く、弾力のある二本の肉棒を、同時にぎゅっと、握られて…。
く。
くう…。
不意にフラッシュバックした映像とそれに伴う性器の疼きに危うく声を上げそうになって、僕は半身を折った。
あの時のビキニショーツを、今日も穿いてきていることを思い出したからである。
あれ以来、この下着なしではいられない。
特に、自分で自分を辱める時は、絶対…。
渉の魂胆に反発を覚えつつも、その実、それが僕の悲しい性だった。
思いもかけないほど近くで、人の囁き声が聴こえてきたのはその時だ。
「な、いいだろ? すぐ済むから」
若手のリーマンがふたり、肩を組むようにしてこちらのほうへと歩いてくる。
ガタイのいいほうが、小柄なほうの肩に覆いかぶさるようにしているさまが、いかにも不自然だ。
「わかってるだろ? おまえの躰は、お偉いさんたちだけのものじゃない。みんなのものなんだぜ」
なんだ?
カラダが、どうしたって?
会話の内容の不穏当さにピンときて、僕は柱の蔭に身を隠しながら首だけ出してふたりを観察した。
そして、次の瞬間「あっ」と喉の奥でかすれた声を上げていた。
近づいてくる二人組の、背の低いほうは、間違いなくあの一ノ瀬渉だったのだ。
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