僕は家畜人 ~”連続絶頂” どうせ逝くなら、君の手で~

ヤミイ

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89 ぬくもりを求めて②

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 まずい!
 僕は蒼ざめた。
 女性は、初めて見る顔だった。
 歳は僕と同じ、10代後半から20代前半ぐらいだろうか。
 清楚な顔立ちで、シックな白のブラウスを着ている。
 その眼は今や恐怖で極限まで見開かれ、全裸の僕を凝視していた。
 いや、正確に言うと、窓枠から鋭く突き出した、僕の勃起ペニスを…。
 最近、向かいの部屋に越してきたのだろうか。
 向かいの部屋には今までずっと人気がなかったので、勝手に空き家だと思い込んで油断していた。
 それが失敗だったのだ。
 僕は慌ててカーテンを閉め、下着と服を身にまとった。
 しばらくここにはいられない。
 そう思った。
 あの女性に警察に通報されでもしたら、と思うと、一刻も早くどこかへ姿をくらましてしまいたかった。
 でも、どこへ?
 この前みたいに、休日なのに畜舎に出勤する気にはとてもなれなかった。
 確かにいったん仕事に入ってしまえば、僕は快楽の渦に飲み込まれ、狂ったようになる。
 そうして一時的にではあるけれど、すべてを忘れることは可能だろう。
 でも今は、まず体力的な不安があった。
 この体調では、とても数時間にも及ぶ搾乳には耐えられそうもない。
 途中で気を失ってしまうのがオチだろう。
 いや、それどころか、最悪、体調を崩し過ぎた挙句、腎虚になりかねない。
 こんなところでインポテンツに陥ってしまっては、今後のバイト人生に甚大な影響が出てしまうというものだ。
 それに、と思う。
 そもそも、全裸で窓辺に立つというこの行為ー。
 そんな変態的な行為を仕出かす所まで僕を追い込んだのは、ソウルフーズではないのか。
 搾乳のアルバイトこそ、従業員を淫楽に堕した家畜人に仕立て上げ、精神を破壊する元凶ではないのだろうかー。
 でも、それが言い訳に過ぎないことも、僕にはよくわかっていた。
 なぜって、僕がこれをやったのは今回が初めてではないからだ。
 全裸で窓辺に立ち、あわよくば通行人に恥ずかしい姿を見られたいと思う。
 そう夢想しているうちに烈しく勃起して、窓辺に立ったまま無意識理に自分の恥辱まみれの肉バナナを扱き、欲情に任せて白いものを外に放出してしまう…。
 向いのマンションの、あの部屋の閉まった窓ガラスに映る自身の卑猥極まりない全裸の痴態をオカズにしてー。
 そんな恥ずべき行為を、何度繰り返してきたことかー。
 そろそろ、潮時だった。
 このままでは僕は、性犯罪者として司法の手に落ち、捕らえられてしまうことだろう。
 それを避けるためには、何かもっと健全な方向へと、己を導かねばならないのだ。
 そうー。
 例えば、恋をするとか…。
 恋をして、この破滅的な性欲を、清らかな愛情に変換する、というのはどうだろう。
 恋。
 その言葉とともに僕の脳裏に浮かんだのは、不思議なことに若い男の面影だった。
 まさか。
 打ち消そうにも、一度浮かんだイメージは、鮮烈なまでにまぶたの裏に残り続けた。
 そしてそれに伴い、いつかの、あの”手”の感触が、躰の中心に蘇る。
 僕を握ってくれた、あの力強い”手”の持ち主…。
 会いたい。
 不意に、どうしようもなく強い衝動が突き上げた。
 もう一度僕を、ぎゅうっと強く握って、ほしい。
 そうして気づくと僕は、いつのまにか自室を飛び出し、地下鉄の駅へと続く道を、全速力で駆けていたー。

 
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