天秤の絆 ~ベル・オブ・ウォッキング魔法学園~

LEKI

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本編

本編ー11.5

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 怒りを隠そうともしない荒々しい足取りで学園長室を出て行ったナギトを見送った、セシリア。
 学園の生徒であり、やしゃごでもあるナギトと逢う機会は、実はそんなに多くない。
 そもそも、地の精霊であるベル・オブ・ウォッキングが支配している範囲外から出れば、即死んでしまうのがセシリアだ。自分の子孫達に逢いに学園外に行く事は叶わず、逢いに来てもらうしか方法がない。
 とは言え、自分の子孫だからを理由で学園に招待する事は、まずありえない。贔屓はしない。それがセシリアの理念だから。
 それに何より――ナギト自身が、望まない。本名のファストレアではなく、アクオーツを家名として名乗っているのが、その証拠。

 ファストレア。
 家名であるファストレアは、現状、直系の人間が名乗れるもの。
 その影響はこのグラナディール大陸だけでなく、他の大陸にも及ぶ程に強く、血縁者でもない赤の他人がファストレアを名乗り、他の大陸で私欲の限りを尽くしていた事すらある。まあ勿論、ちゃんと処分は下されたけれど。
 まあ今では、ナギトの両親であり、指定災害変異超獣ハンターである、ルニ・ファストレアと、ウィーダ・ファストレア夫婦の影響もあって、ファストレアの家名は更に強い影響力を持つようになった。

「やっと帰った。長かった」
「そう言うなよ。私にとっては最高に楽しい時間なんだ、あれでもまだ短いくらいだ」

 感情の薄い、平坦な声が響く。セシリアの座っていた、背凭れの高い書斎椅子の背後から。
 二メートルに迫る長身の誰か、恐らく男。サンドベージュの髪に、ローズグレーの瞳。感情を忘れたような瞳がセシリアを見下ろし、それからナギトが去って行ったドアを見つめる。
 でもそれもほんの一瞬で、すぐに目を逸らす。同時に、自分が腰に何重にも巻いているロングベルトに着けていた細いチェーンに繋がったタリスマンを、セシリアに手渡す。ついさっき、セシリアがナギトに渡した特別禁止書庫の鍵と、全く同じタリスマンを。
 この世に二つしかない、特別禁止書庫の鍵。ナギトに渡したものの、片割れ。

「ああ、悪いな。いやぁ、あれはタイミングだった。前からこの鍵を渡そうとは思っていたが、そもそも呼び出しても来ない。鍵を渡したくとも、アレの性格を考えれば、簡単には受け取らない。どうしたもんかと思っていたが、好都合だ。そう思うだろう?ベル?」
「どうでもいい。興味ない」

 差し出された特別禁止書庫の鍵を受け取りながら、シャルトルーズイエローの髪を揺らしてセシリアは微笑む。
 が、ベルと呼ばれた誰かは、これまた平坦な声で返す。
 冷淡とは違う。拒絶とも違う。感情を忘れたと言うよりも、感情をそもそも持っていないような、平坦で、感情の色も、感情の動きも読み取れない、声で。
 他人であれば、なんとも言えない異様な圧を感じて萎縮するところだが、相手はあのセシリア。そこは付き合いの長さから慣れたもの。
 楽しそうにからからと、声を立てて笑う。

「そうだなぁ!ベルは私以外には興味がないものなぁ!もう百年以上私の前だけしか姿を見せないせいで、お前が学園の七不思議みたいな扱いだもの。卒業生だったとしても、姿を見たことあるヤツは……居ないだろうなぁ」
「どうでもいい」
「お前はもう少しボキャブラリーを増やせ。私の話し相手を務めるなら、尚更な。地の精霊は知識の精霊なんて言われているんだ、人間の夢を真正面から壊しにかかるなよ、ベル・オブ・ウォッキング」

 ムスッとしながらセシリアが振り返り、椅子に座ったまま向ける言葉の連続攻撃。
 けれど、当のベル――ベル・オブ・ウォッキングは、やっぱり感情の抜け落ちた顔で、声で、セシリアを見下ろしていた。見下ろして、まるでそれしか言葉を知らないかのように、同じセリフを口にする。
 嗚呼嘆かわしい。大袈裟なまでに大袈裟な動作で前髪を掻き上げ、ふぅとため息を吐いて見せながら。
 普通の人間であれば、ムッとしたり飽きれたりするところなのだろう。が、相手はあのベル・オブ・ウォッキング。真顔で光の加減で色が変わって見えるセシリアの髪を眺め、そして口を開く。
 次に絶対こう言うだろうなと言う、セシリアの想像通りに。

「「興味ない」」

 声が重なる。セシリアとベル・オブ・ウォッキングの、二人分の声が。綺麗に、一音の乱れもなく。
 その直後、僅かに、本当に数ミリの世界で、微かに、ベル・オブ・ウォッキングの片方の眉がぴくりと動いたのを、あのセシリアが見逃す筈がなかった。
 微かではあるが、ベル・オブ・ウォッキング本人からしてみれば、かなり大きな変化。
 出逢った頃は、この感情を知らない精霊を前に、何を考えているのか、何を思っているのかわからず、恐怖した事すらあったけれど。今はもう、恐怖のきの字も浮かばない。むしろ、どう突けばどんな反応をするか、楽しむ余裕すら出て来ているのだから、慣れとは怖い。

「アッハッハッハ!お前は本当にわかりやすい精霊だなぁ!」

 そう言って、からからと声を立てて笑うセシリアを見下ろすベル・オブ・ウォッキングは、なぜ笑っているのかと頭を数度、傾ける。

 理解は出来ない。
 何年、何十年、何百年経っても、理解出来ない。だからこそ、飽きない。もっともっと、見て居たいと思う。
 どうして笑うのか。何をしたら笑うのか。何を考えているのか。何を思っているのか。もっと知りたいと思う、彼女限定で。だからもっと、もっと、自分の傍に居てもらわなきゃ。永遠に理解出来ない彼女を知りたいと思う、この気持ちが消えるまで。

 ベル・オブ・ウォッキングから受け取ったタリスマンを、上着の袖の中に入れる。次にセシリアが袖の中から手を出した時には、もうタリスマンは握っていなくて。上着のどこかに隠したのは、明白。
 別に隠す必要もないだろうに。あのタリスマンが特別禁止書庫の鍵だと知っているのは、学園内でもごく一部なのに。
 更に言えば、学園長であるセシリアから特別禁止書庫の鍵を奪うべく襲い掛かる者なんて早々居ないだろうし、奪い取る事が出来る者も、居ないだろうけれど。

 だって相手は、このグラナディール大陸のみならず、クレティア全土においても最強と言われる攻撃魔法士、セシリア・ファストレアなのだから。

「そう言えば……お前は私が一番らしいが、『あの子の声・・・・・』は届くのか?」

 ふいに投げかけられた問いかけに、一度ゆっくりと瞬きをするベル・オブ・ウォッキング。
 視線を正面、窓の向こうへと目を向けながら、少しの間を開けてから、頷く。考えているようにも見える素振りだが、その実、ベル・オブ・ウォッキングが考えているのかはわからない。
 自分の内面を読ませない、と言うよりも、読む事が出来ない精霊だから。

「……もしまた、もう一度『あの時の声・・・・・』が響いたとして、抗いたいとも思わない」

 驚いていた。セシリアは、確かに驚いていた。普段、短い言葉でしか喋らない目の前の精霊が、長い言葉で喋っている現実に。
 興味ないだとか、どうでもいいだとか、そんな言葉ばかりだったのに。
 何がどうして、どう言う理由で、理屈で、ベル・オブ・ウォッキングにここまで喋られる原因は、なんだ。否、話の流れからわかっているけれど、まさかここまで大きくベル・オブ・ウォッキングを揺らすとは思わなかった。

 あの子は――ユヅキ・ホヅミは、精霊達にとって、なんなのか。

 気になる事は多い。けれどベル・オブ・ウォッキングは語らない。訊いたところで、今のように答えてくれるとは限らないから。
 だから、今手元にある情報だけで考えないといけない。

「……『抗えない』ではなく、『抗いたいとも思わない』か」
「特に今は、空の統括大精霊が常に共に在る。風は音を運ぶ。空を駆ける。空の統括大精霊が共に在れば、声は一瞬で空を駆ける。このグラナディール大陸において、その声が届かない精霊は、居ない」

 全く答えになっていない言葉。
 会話を知っているかと、ちょっと本気でベル・オブ・ウォッキングに問いただしたい。
 ただわかるのは、空の統括大精霊と言うのは、ユヅキが契約している空を司る風の統括大精霊、シエロの事だ。
 ベル・オブ・ウォッキングの話が確かなら、普段は姿を消しているだけで、常にユヅキの傍に居て、やろうと思えば一瞬でユヅキの声をグラナディール大陸全土に届けられる、と。それは考え方を考えれば、爆弾だ。
 それも、このグラナディール大陸全てを、一瞬で消し飛ばす事も可能な、爆弾。
 ユヅキ自身がそれを自覚していないだけで、やろうと思わないだけで。やろうと思って、かつシエロが手助けをすれば、グラナディール大陸全土の精霊は、その声に頭を下げ、従う。

「……なんともまあ。うちの人間はとんでもびっくり人間になったり、周りの人間がそのタイプになる事が多いなぁ。そう言う運命か?」
「びっくり」
「そうだろう?最たるは私だが、ナギトには全ての精霊に無条件に愛されるお姫様が居る。そしてナギトの父親、超絶論外チート。そしてその妻、ウィーダ。アレはアレで凄かったなぁ。あの時の学園は、特に賑やかだったなぁ」
「賑やか……」

 あれは賑やかと言うのだろうか。思わずベル・オブ・ウォッキングは考えていた。セシリアの事以外で、頭を働かせていた。
 だがまあ、セシリアがそう言うのも無理はないのかもしれない。
 事実、ナギトの両親であるルニ・ファストレアとウィーダ・ファストレアがこのベル・オブ・ウォッキング魔法学園に在籍していた頃は、それはそれは賑やかだったから。荒れているとは違う。でも毎日常にどこかで騒ぎが起きていた、そんな時代があった。
 しかも、決まってその騒ぎの中心にはルニかウィーダ、あるいは両方が居て、一番酷い時は、魔法剣士学科と魔法銃士学科の代表戦みたいな個人戦にまで発展した事があって。
 まあ、本当に危険な状況に陥る前に、大抵セシリアか、姿を消したままベル・オブ・ウォッキングが止めて、事なきを得ていたけれど。あれを賑やかの一言で済ませられるのだから、変な話だ。

 超絶論外チート、曾祖母にそう言わせる男、ルニ・ファストレア。
 闇属性以外の光、火、水、地、風の魔法属性を持ち、保有する魔力も強大。魔法剣士として扱う剣は、最大刃長二メートル八十センチにも及ぶツヴァイハウンダー。
 見た目は虫も殺さないような穏やか男なのに、扱う剣が凶悪だと、入学当初から話題になっていた。
 俗に言う天才で、一度見た魔法は次の瞬間には使えるようになるし、その場その場で新しい魔法を創り出して、更にはそれまで誰もしなかった以前に、やろうとすら思わなかった、魔法の軌道を変えるなんて離れ業をしてみせた。
 それも、喉が渇いたから水を飲む、お腹が減ったからご飯を食べる、そんな至極当然の動作をするように。
 驚愕に言葉を失う周囲を意にも介さず、もっとこうしたかったのにと言ってのけた。
 そうして、三年スキップして、一気に一年生から四年生に上がった実力者。

 ウィーダ・ファストレア。もとい、ウィーダ・アクオーツ。
 魔法属性は火、水、風の三属性。魔法銃士であり、入学前から自分と相性の良い魔法銃を見付けており、当初はステアーSGG04を使っていたが、ベル・オブ・ウォッキング魔法学園在学中に、相性の良い短銃、コルトパイソン357マグナム・6インチを見付けて、長銃と短銃、両方を使う特殊な魔法銃士となった。
 性格としては男勝りで気が強く、負けず嫌い。いつの間にか魔法銃士学科のボスとなり、なぜか魔法剣士学科に喧嘩を売る事が多かった。しかも、なぜか拳で。

 それまで連戦連勝で来ていたウィーダを止めたのが、スキップ進級して来たルニ。
 三つ年下のルニに初めて負けてから、今度は何かとルニに突っかかるようになり、学園内でも喧嘩をする事が多かった。在学中、実技演習場の半壊八回、全壊二回。他の学園施設の被害は数多く。それでもウィーダがルニに勝つ事は、一度としてなかったけれど。
 そんな二人がソキウス契約を交わした時は、学園中が大騒ぎ。しかもそのまま卒業後もパーティを組み続けた果てに結婚するのだから、世の中どう転ぶのかわからない。

「賑やか」
「うんうん。まあ……そんな親を持った子供はいい迷惑だがな」

 ふーっと細く長く息を吐きながら、肘置きに頬杖を突くセシリア。
 そうして頭の中で思い浮かべるのは、ナギトとルニ。偶然か必然か、同じ魔法剣士が一番適した職業で、そのせいか、どうにもナギトの基準はズレまくっている。父親は天才だと理解している分、自分は劣っていると思っているところがある。自己評価が低いのだ、魔法剣士として。同年代と比べれば、頭一つどころか、二つか三つは飛び抜けているのに。
 仮にそうだとしても、それは両親の影響でスタートラインを切るのが早く、訓練や実戦における経験値が多くて、周りから飛び抜けているだけだ、と。
 スタートラインが同じだったら、自分は同学年の子供達と同じだ、と。

「アレは、父親とは違うベクトルの天才だ。才能がある。そうでなければ、いまだに成功者が少ない魔法軌道変更があの年齢で出来る筈がないのさ」

 どうやったら理解するものか、なんて。考えてしまうのは、セシリアがナギトの高祖母だからと言うわけではなく、学園長として、教育者として。
 背凭れに全身を預け、両腕を組む。なんとも難しい問題だ、これは。
 しかも、すぐ隣には、これまでの精霊術師の在り方を根底から覆すような、天性の素質を持った精霊術師も居る。その存在があるからこそ、余計に自分は才能があるとは思っていない要因になっているのだから、本当に困った話。
 教育者として二百年過ごしているが、簡単に答えの見付からない問題はいつになっても出て来るものだと、軽くこめかみを押さえながら、セシリアは大きなため息を吐き出した。
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