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第一章 無知な少女の成長記
さぁ話し合いましょうか拳で
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「そう、ゴルバチョフと話し合うことにしたのね」
「うん。師匠は何でもかんでも隠したり誤魔化したりするから、一度真正面からぶつからないといつまでも私たちの関係は変わらないと思うの。それにもし玉砕してもエルお兄ちゃんが養ってくれるって約束してくれたの。これで後先考えず話せるよ」
「あらそうなの?ふふエルドレッドやるじゃない、でもエルドレッドだけじゃなくて私も他の精霊たちみんな貴方のことを本当に大切だと思っているのよ。だからもしあの頑固者が嫌になればいつでも帰ってきなさい。みんな家族なんだから。ね?」
「う”ん”……う”ん”!」
クロエ母様はいつも優しい…いや怒らせたら怖いけど…嵐や地震やら精霊界が大変なことになるレベルだけど。だけど厳しさの中にも愛があるって感じる。みんな母様が大好きで私も大好き。初めて会った時から母様は私を慈しんでくれた。泣きながらグチャグチャになった心の中を話した時も不安で押しつぶされそうになった時も、母様はいつも私の傍で話を聞いて抱き締めてくれた。おでこにキスをして優しく頭を撫でてくれる。抱き締めてあの大好きな笑顔で名前を呼んでくれる。それはあの日から変わらない習慣のようなもので、怒られた日も我儘を言った日も癇癪を起した日も母様は何も変わらなかった。それがどれだけ嬉しかったか今でも鮮明に覚えてる。拒絶されないことが、呆れられないことが嬉しくてたまらなかった。
他の皆も私を妹だと言ってくれた。本当の兄弟みたいに喧嘩して、馬鹿やって怒られてとても楽しくって自分の暗いところに目がいかないほど構い倒してくれた。喋れない子達達も私の跡をついて着たり舐めてりとても可愛くって仕方がない。
みんな家族だと言ってくれた日は思わず泣いてしまって皆を驚かせてしまった。
ここは私に家族の愛情を教えてくれた。
でも…でも私にとって師匠も大切な《家族》なんです…だから、行ってきます。
「しぃぃぃぃぃぃぃしょぉぉぉぉぉぉ!起きてください!」
バンッ!!
「ふぉっ!?なんじゃなんじゃ!?」
時刻は午前3時26分。精霊界から戻ってきたルクレツィアは薬剤室のソファーにいた剣の姿の《エクスカリバー》を回収しゴルバチョフの部屋のドアを勢いよく開けた。《エクスカリバー》は何か喚いていたが気にせず突き進み、およそ半年ぶりのゴルバチョフに涙が出そうになった。
飛び起きたゴルバチョフは、数時間ぶりにみた弟子はあんなに弱り切っていた姿はどこへらやら、ゴルバチョフは生き生きとした表情の弟子をみて驚き喜んだ。だが次の瞬間頭を抱えた。
「さあ話し合いましょう!」
剣を構え何故だか含みのある提案に、ゴルバチョフは《エクスカリバー》と話した自分の短所がしっかり受け継がれていることを再確認した。育て方を間違えてしまったのかと思ったが、息子も妻がいたにもかかわらず似たようなものだったため深く考えることをやめた。そういえば妻も血の気が多かったんだ。
突然寝室に乱入してきたルクレツィアに転移させられ、気が付くと昼に戦った亜空間に来ていた。ゴルバチョフは魔法で寝間着からいつもの服に着替えると、ルクレツィアは《エクスカリバー》を一振りだけ構えた。
「せっかちな弟子じゃのう。年寄りをもっと労わらんか馬鹿者」
「むっ、それですけど私師匠に色々言ってやりたいことがあるんですよ。むこうで半年も時間があったんです。その間色々考えて皆に教えてもらって、師匠に力ずくで聞き出せるくらいに強くなったんですからね!大人になったんです、師匠と落ち着いて話しできるくらい精神的に成長したのです」
いや剣を構えている時点で落ち着いて話し合うつもりないだろという《エクスカリバー》のツッコミは無視され、ゴルバチョフは楽しそうに自分の槍を構えた。自らの魂を変化させ戦う【魂魔法】は並みの才能と精神では具現化することも武器として使うこともままならず、その魔法が使えることは術者のレベルの高さを示している。
今までルクレツィアとゴルバチョフは幾度となく戦ってきたが、師は一度だって自分に刃を向けたことはなかった。《エクスカリバー》と戦ってもゴルバチョフの魔法や拳の前では防戦一方で、かすり傷一つ付けることが出来ないなんてことが当たり前だった。
そんな師が今、自分に本気を見せてくれている。ルクレツィアは歓喜に震える体を抑え、どうしても上がってしまう口角のまま剣を構えた。そして一瞬少女の身体が魔法に包まれ弾けた。
「さあ師匠、始めましょう」
光が弾け現れたのは、腰までまっすぐに伸びた輝くブロンドの髪を揺らし、アメジストのような吸い込まれそうなほど深く鮮やかな瞳の美しい女性だった。白く輝くような肌にスラリと伸びた長い手足と完璧なプロポーション。美しい白金の鎧を身に付け、純白のスリットの入ったドレスのような戦闘服を身にまとっていた。施された繊細な刺繍と胸元で輝く紫の宝石が、ブレスレットとして身に着けていた《エクスカリバー》の変化した姿であることを証明していた。
子供の甲高い声ではなく落ち着いた大人の声でゴルバチョフを見つめる彼女は、女神のような神秘的な儚い容姿に強い生を感じさせる瞳が紛れもないルクレツィアの成長した姿だった。
「あぁ…メリル…」
ゴルバチョフの呟きはルクレツィアの攻撃に掻き消され、二人は互いに嬉しくて仕方がないといった顔で火花を散らした。
ーーーーーーーーー
エルドレッドの養う発言は恋愛的意味ではなく、自分の作ったゴスロリファッションを着せる相手として面倒を見てやるという意味です。ルクレツィアの顔があまりに良かったのでみんな着飾りたくて仕方ないのです。
次回 愛されヒロイン
「うん。師匠は何でもかんでも隠したり誤魔化したりするから、一度真正面からぶつからないといつまでも私たちの関係は変わらないと思うの。それにもし玉砕してもエルお兄ちゃんが養ってくれるって約束してくれたの。これで後先考えず話せるよ」
「あらそうなの?ふふエルドレッドやるじゃない、でもエルドレッドだけじゃなくて私も他の精霊たちみんな貴方のことを本当に大切だと思っているのよ。だからもしあの頑固者が嫌になればいつでも帰ってきなさい。みんな家族なんだから。ね?」
「う”ん”……う”ん”!」
クロエ母様はいつも優しい…いや怒らせたら怖いけど…嵐や地震やら精霊界が大変なことになるレベルだけど。だけど厳しさの中にも愛があるって感じる。みんな母様が大好きで私も大好き。初めて会った時から母様は私を慈しんでくれた。泣きながらグチャグチャになった心の中を話した時も不安で押しつぶされそうになった時も、母様はいつも私の傍で話を聞いて抱き締めてくれた。おでこにキスをして優しく頭を撫でてくれる。抱き締めてあの大好きな笑顔で名前を呼んでくれる。それはあの日から変わらない習慣のようなもので、怒られた日も我儘を言った日も癇癪を起した日も母様は何も変わらなかった。それがどれだけ嬉しかったか今でも鮮明に覚えてる。拒絶されないことが、呆れられないことが嬉しくてたまらなかった。
他の皆も私を妹だと言ってくれた。本当の兄弟みたいに喧嘩して、馬鹿やって怒られてとても楽しくって自分の暗いところに目がいかないほど構い倒してくれた。喋れない子達達も私の跡をついて着たり舐めてりとても可愛くって仕方がない。
みんな家族だと言ってくれた日は思わず泣いてしまって皆を驚かせてしまった。
ここは私に家族の愛情を教えてくれた。
でも…でも私にとって師匠も大切な《家族》なんです…だから、行ってきます。
「しぃぃぃぃぃぃぃしょぉぉぉぉぉぉ!起きてください!」
バンッ!!
「ふぉっ!?なんじゃなんじゃ!?」
時刻は午前3時26分。精霊界から戻ってきたルクレツィアは薬剤室のソファーにいた剣の姿の《エクスカリバー》を回収しゴルバチョフの部屋のドアを勢いよく開けた。《エクスカリバー》は何か喚いていたが気にせず突き進み、およそ半年ぶりのゴルバチョフに涙が出そうになった。
飛び起きたゴルバチョフは、数時間ぶりにみた弟子はあんなに弱り切っていた姿はどこへらやら、ゴルバチョフは生き生きとした表情の弟子をみて驚き喜んだ。だが次の瞬間頭を抱えた。
「さあ話し合いましょう!」
剣を構え何故だか含みのある提案に、ゴルバチョフは《エクスカリバー》と話した自分の短所がしっかり受け継がれていることを再確認した。育て方を間違えてしまったのかと思ったが、息子も妻がいたにもかかわらず似たようなものだったため深く考えることをやめた。そういえば妻も血の気が多かったんだ。
突然寝室に乱入してきたルクレツィアに転移させられ、気が付くと昼に戦った亜空間に来ていた。ゴルバチョフは魔法で寝間着からいつもの服に着替えると、ルクレツィアは《エクスカリバー》を一振りだけ構えた。
「せっかちな弟子じゃのう。年寄りをもっと労わらんか馬鹿者」
「むっ、それですけど私師匠に色々言ってやりたいことがあるんですよ。むこうで半年も時間があったんです。その間色々考えて皆に教えてもらって、師匠に力ずくで聞き出せるくらいに強くなったんですからね!大人になったんです、師匠と落ち着いて話しできるくらい精神的に成長したのです」
いや剣を構えている時点で落ち着いて話し合うつもりないだろという《エクスカリバー》のツッコミは無視され、ゴルバチョフは楽しそうに自分の槍を構えた。自らの魂を変化させ戦う【魂魔法】は並みの才能と精神では具現化することも武器として使うこともままならず、その魔法が使えることは術者のレベルの高さを示している。
今までルクレツィアとゴルバチョフは幾度となく戦ってきたが、師は一度だって自分に刃を向けたことはなかった。《エクスカリバー》と戦ってもゴルバチョフの魔法や拳の前では防戦一方で、かすり傷一つ付けることが出来ないなんてことが当たり前だった。
そんな師が今、自分に本気を見せてくれている。ルクレツィアは歓喜に震える体を抑え、どうしても上がってしまう口角のまま剣を構えた。そして一瞬少女の身体が魔法に包まれ弾けた。
「さあ師匠、始めましょう」
光が弾け現れたのは、腰までまっすぐに伸びた輝くブロンドの髪を揺らし、アメジストのような吸い込まれそうなほど深く鮮やかな瞳の美しい女性だった。白く輝くような肌にスラリと伸びた長い手足と完璧なプロポーション。美しい白金の鎧を身に付け、純白のスリットの入ったドレスのような戦闘服を身にまとっていた。施された繊細な刺繍と胸元で輝く紫の宝石が、ブレスレットとして身に着けていた《エクスカリバー》の変化した姿であることを証明していた。
子供の甲高い声ではなく落ち着いた大人の声でゴルバチョフを見つめる彼女は、女神のような神秘的な儚い容姿に強い生を感じさせる瞳が紛れもないルクレツィアの成長した姿だった。
「あぁ…メリル…」
ゴルバチョフの呟きはルクレツィアの攻撃に掻き消され、二人は互いに嬉しくて仕方がないといった顔で火花を散らした。
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エルドレッドの養う発言は恋愛的意味ではなく、自分の作ったゴスロリファッションを着せる相手として面倒を見てやるという意味です。ルクレツィアの顔があまりに良かったのでみんな着飾りたくて仕方ないのです。
次回 愛されヒロイン
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