もつ者は主人公になる

せにな

文字の大きさ
3 / 15

第三話  友達作り

しおりを挟む
 ラブコメといえば男2人と女2人の4人構成がテンプレだ。ハーレムを作りたいなら男1人女4人という構成もあるが、このラブコメは純愛として成立させる。俺の性格的には明るい系だからハーレムだと思われるかもしれないが、俺が作るラブコメはハッピーエンドで終わらなければならない。例えそれが俺以外の重要人物であろうとな。そのハッピーエンドを成立させるには1人の男友達が必要だ。

「ねぇ、君。なにボーッとしてるのー?」

 数席離れる男子生徒の肩を小突きながら話しかける真斗。
 前髪は目元まで伸びており、頬杖をつく男子生徒はゆっくりと真斗の顔を見上げると、またすぐに頬杖をついて窓の外に視線を戻す。

「無視しないでよー」

 彼こそが真斗が友人として狙う男――俣野龍馬またのりょうまだ。入学してから2日が経ったが、友達作りをするどころか、誰も話しかけるなという不穏な雰囲気が龍馬の身を纏っていた。
 そんな龍馬をなぜ、真斗が声をかけたのかは分からないが、龍馬の目線や龍馬の情報を元に、ハッピーエンドを作るのなら彼が最適解だと判断した。

「……なんで俺に話しかけてくんの?」
「だって暇そうじゃん~」
「……別に暇じゃないっすけど」

 ラブコメのテンプレならば、主人公としては逆。友人キャラが陽キャ。そして陰キャの主人公に話しかけ、良好な関係を築いていく。それがラブコメのテンプレだ。だが、真斗が取った行動はテンプレとは全くの逆で、主人公が陽キャ、友人キャラが陰キャ。テンプレを好む真斗からは想像がつかない選択――

「――うっそだー」
「まじですが……」
「まぁとりあえず友達になろうぜー」
「なぜ俺……?」
「俺、不思議っ子が好きだからさー」
「はぁ……」

 呆れたような溜息を吐く龍馬は真斗に冷たい視線を送り、真斗の後ろを通りかかった1人の女に目を向けた。

「あの、神楽坂さん。この人どうにかしてくれませんか?」

 いきなり呼び止められた美夜は面食らった顔を浮かべたかと思えば、眉のあたりにシワを寄せる。

「嫌ですけども」
「隣の席じゃないですか」
「それでも嫌ですけど」

 頑なに頷かない美夜に対し、龍馬は本当に嫌そうに手を合わせて頭を下げる。

「ホントお願いします」
「……分かった」

 頭を下げられた美夜は渋々龍馬のお願いを了承し、真斗の首根っこを引っ張って窓側の席に連れ戻そうとする。

「な、なんで!俺、なにも悪いことしてない……!」
「一応龍馬は私の幼馴染だから、何かあったらお母さんに怒られるのは私なの」
「だから俺、なにもしてないって……!」
「はいはい」

 2人が幼馴染のことも、美夜が後ろを通ることもすべてを読んでいた真斗の口元には一瞬笑みが浮かび上がるが、なんとか堪らえて美夜から離れないぐらいの力加減で抵抗をするふりを演じる。

 まさか一回目で龍馬を俺の友人に引き込めるとは思っていない。あの性格はラブコメで学んでいるからわかるが、かなりめんどくさい方だ。自分は醜いと信じ込み、自分は人に迷惑を掛けると思い込み、自分には魅力はないと考え込む。そんな面白くないやつを俺は友人として――重要キャラとして認めてやってるんだ。しっかり俺の思い通りに動いてくれよ?

 瞬きの瞬間、龍馬に欲望を押し付けるような目を向けた真斗はヒロインの顔を見上げながら微笑みを向ける。

「今思ったけど、俺の世話係みたいで良いなこれ」
「な、なにバカなこと言ってんの?」

 真斗のセリフで多少の動揺を見せる美夜だったが、席に着くやいなや、ゴミを捨てるかのように真斗から手を離す。

 今はこれでいい。距離が遠いぐらいがラブコメの序盤には丁度いいからな。こんなので優しくされたら孤高の名が汚れてしまうから俺から願い下げさせてもらうんだが。

 美夜を睨みつけるように見上げた真斗は、地面に手を付けて立ち上がる。

「ひっどいなー。俺痛いのあんまり好きじゃないんだよー?」
「知らないよ、そんなこと」
「ほんとひどいなぁ……」

 苦笑を浮かべる真斗は大人しく自分の席に付き、不服気な顔を浮かべながら教室に入ってくる教師に目を向けた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

悪役令嬢だったので、身の振り方を考えたい。

しぎ
恋愛
カーティア・メラーニはある日、自分が悪役令嬢であることに気づいた。 断罪イベントまではあと数ヶ月、ヒロインへのざまぁ返しを計画…せずに、カーティアは大好きな読書を楽しみながら、修道院のパンフレットを取り寄せるのだった。悪役令嬢としての日々をカーティアがのんびり過ごしていると、不仲だったはずの婚約者との距離がだんだんおかしくなってきて…。

幼馴染の許嫁

山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが

akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。 毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。 そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。 数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。 平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、 幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。 笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。 気づけば心を奪われる―― 幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!

ヒ・ミ・ツ~許嫁は兄の親友~(旧:遠回りして気付いた想い)[完]

麻沙綺
恋愛
ごく普通の家庭で育っている女の子のはずが、実は……。 お兄ちゃんの親友に溺愛されるが、それを煩わしいとさえ感じてる主人公。いつしかそれが当たり前に……。 視線がコロコロ変わります。 なろうでもあげていますが、改稿しつつあげていきますので、なろうとは多少異なる部分もあると思いますが、宜しくお願い致します。

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

拝啓~私に婚約破棄を宣告した公爵様へ~

岡暁舟
恋愛
公爵様に宣言された婚約破棄……。あなたは正気ですか?そうですか。ならば、私も全力で行きましょう。全力で!!!

わんこ系婚約者の大誤算

甘寧
恋愛
女にだらしないワンコ系婚約者と、そんな婚約者を傍で優しく見守る主人公のディアナ。 そんなある日… 「婚約破棄して他の男と婚約!?」 そんな噂が飛び交い、優男の婚約者が豹変。冷たい眼差しで愛する人を見つめ、嫉妬し執着する。 その姿にディアナはゾクゾクしながら頬を染める。 小型犬から猛犬へ矯正完了!?

処理中です...