もつ者は主人公になる

せにな

文字の大きさ
4 / 15

第四話  帰り道

しおりを挟む
 高校生活初めての授業が全て終わり、帰宅路を歩く男女二人の背中に夕日が刺さる。

「それで――」

 下校前、なにか話したいことがあったのか、美夜はホームルームを終えるや否や男子生徒の前に立ちはだかり『帰り付き合って』という言葉を発した。いきなりのことに最初は驚いていたが、男子生徒も物申したいことがあったのか二つ返事で了承し、今に至る。

「――あの後はどうだったの?」
「どうだったって?」

 話したくなさそうに素っ気なく口を聞く龍馬は車道側に目を向ける。

「私もあんまり名前は出したくないんだけど……神月真斗のことよ」
「出したくないなら出さなかったら良いのに」
「もう言ったんだから仕方ないでしょ。それでどうなの?」
「……ずっと話しかけてくるよ」

 美夜に注意された真斗だったが、あの後もめげることはなく、イノシシのように突撃しては龍馬にのらりくらりと避けられるばかりだった。
 目の前にいるはずもないそんな真斗に冷めた目を向ける龍馬を見た美夜は訝しげな表情を浮かべた。

「なんでそんなに嫌がるの?」
「あんなキラキラしてるやつと俺が一緒にいるの考えられるか?」
「かなりお似合いだと思うけどね」
「冗談よせよ」

 龍馬の言葉で二人の会話が終わり、美夜と龍馬の間には静寂が流れ始める。だが、タイミングよく現れた人物によってその静寂は壊されてしまう。

「あ!美夜じゃん~」

 曲がり角から現れた人物――白石李恋は美夜の腕に抱きつくように体を寄せ、右手には先程買ってきたと思われるスハーハックスのカフェオレを握っていた。

「李恋?なんでここにいるの?」
「さっきまで友達と遊んでたから、その帰り道~」
「あーなるほどね」

 腕から李恋を引き離そうと左手で体を押す美夜だったが、離さないと言わんばかりに強く腕を掴む李恋を引き離すことはできず、諦めの溜息を吐いて龍馬の方に目を向ける。
(変わらないなー)
 心の中で呟く美夜はそっと龍馬の耳元に口を近づけて真斗のサポートをするような言葉を口にする。

「――神楽坂それまじ?」
「まじまじ」

 そんな2人が気になったのか、腕を掴む李恋はキョトンと首を傾げて2人を交互に見やる。

「どしたの?2人とも」
「なんでもないよ」
「俣野くんほんと?」
「ほんとほんと」

 美夜に合わせるように返事を返した龍馬は2人の時間を邪魔しないように半歩下がり、横断歩道の前で立ち止まる。

「俺こっちだから」
「あ、そうなのー?」
「うん。じゃあね」

 小さく手を振った龍馬は、車が来ていないことを確認し、横断歩道を渡り始めた。李恋も手を振り返すが龍馬は振り向くこともなく、曲がり角を曲がって美夜と李恋の視界から姿を消した。

「私、龍馬くんに嫌われてるのかな?」
「そんなことはないよ。龍馬は優しいだけだから」
「そっかー」

 美夜にそう言われた李恋は特に気にすることもなく、脇に通した腕はそのままで美夜と一緒に歩き始めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

悪役令嬢だったので、身の振り方を考えたい。

しぎ
恋愛
カーティア・メラーニはある日、自分が悪役令嬢であることに気づいた。 断罪イベントまではあと数ヶ月、ヒロインへのざまぁ返しを計画…せずに、カーティアは大好きな読書を楽しみながら、修道院のパンフレットを取り寄せるのだった。悪役令嬢としての日々をカーティアがのんびり過ごしていると、不仲だったはずの婚約者との距離がだんだんおかしくなってきて…。

幼馴染の許嫁

山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが

akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。 毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。 そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。 数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。 平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、 幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。 笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。 気づけば心を奪われる―― 幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!

ヒ・ミ・ツ~許嫁は兄の親友~(旧:遠回りして気付いた想い)[完]

麻沙綺
恋愛
ごく普通の家庭で育っている女の子のはずが、実は……。 お兄ちゃんの親友に溺愛されるが、それを煩わしいとさえ感じてる主人公。いつしかそれが当たり前に……。 視線がコロコロ変わります。 なろうでもあげていますが、改稿しつつあげていきますので、なろうとは多少異なる部分もあると思いますが、宜しくお願い致します。

拝啓~私に婚約破棄を宣告した公爵様へ~

岡暁舟
恋愛
公爵様に宣言された婚約破棄……。あなたは正気ですか?そうですか。ならば、私も全力で行きましょう。全力で!!!

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

わんこ系婚約者の大誤算

甘寧
恋愛
女にだらしないワンコ系婚約者と、そんな婚約者を傍で優しく見守る主人公のディアナ。 そんなある日… 「婚約破棄して他の男と婚約!?」 そんな噂が飛び交い、優男の婚約者が豹変。冷たい眼差しで愛する人を見つめ、嫉妬し執着する。 その姿にディアナはゾクゾクしながら頬を染める。 小型犬から猛犬へ矯正完了!?

処理中です...