もつ者は主人公になる

せにな

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第五話  授業

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 驚いた。神楽坂が俺の味方をするとは。まさか哀れみの目を向けられたのか?それともただの気まぐれか?

 授業を受ける真斗は、昨日の放課後のことを思い出しながらペンを走らせる。

 神楽坂が俣野を誘って一緒に帰ることも、その後に白石が現れることもすべてわかっていたんだが――

「――聞いてる?当てられてるよ?」

 隣に座る美夜からデコピンを喰らい、我に返った真斗は慌てて立ち上がり、黒板に書かれている問題に目を通す。

 この問題は因数分解はできないから解の公式で解いて、このルートは素因数分解できて約分できるから答えは、

「X=さ――ねぇ神楽坂さん。この問題の答えなに?」
「……少しぐらい考えたら?」

 真斗が立ち上がってから1秒も経たずに答えを求められる美夜は睨みを利かせる。
 所詮は高校生の問題というのもあるのか、隠れ天才という主人公を目指したい真斗は大学生以上の知識を兼ね備えている。だが、神楽坂に答えを聞く方が都合がいいと感じたのか、真斗は答えようとする言葉を言い止す。

「ほんっとわからない。だから……ねっ?」

 首を傾げ、縋るようにお願いを突き通そうとする真斗に、周りには聞こえないように小さく溜息を吐き捨てる美夜。

「X=-3±2√3」
「あざ!答えはX=-3±2√3です!」

 美夜に言われたことをそのまま口にする真斗に目を細める教師だったが、答え自体はあっているので黒板に向き直り、チョークを走らせだす。

「正解だが、あんまボーッとしすぎるなよ?あと神楽坂にちゃんとお礼しとけ」
「すみませーん」

 軽く言葉を返した真斗は席に付き、隣で教師の説明を熱心に聞く美夜に体を向けて手を合わせる。

「ほんとありがとね」
「はいはい」

 冷たく反応した美夜は右手に持つシャーペンを赤ペンに持ち替え、ノートの隅に小さく文字を書き始めた。しかし、そんな美夜のことなど気にも止めない真斗は改めて頭の中で昨日のことを考え始める。

 俺の都合が良い方に転がってくれたから良かったものの、このラブコメの邪魔になるような真似をされるのは困る。だが、神楽坂はヒロインという立場。モブならばどうにかできるが、重要人物は俺がカバーしないとな。

 胸中で今後の新たな課題を定めた真斗は誰にも聞こえないように鼻で溜息を吐き、数学のことなどそっちのけでこれからのことを考え始める。
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