もつ者は主人公になる

せにな

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第六話  友達

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 数学が終わり、昨日なら休み時間に入ると龍馬の所へと向かう真斗だったが、今日は龍馬の席に行くことはなく、自分の机に頭を突っ伏せていた。そんな真斗を不思議に思ったのか、美夜は椅子を蹴って真斗の姿勢を無理やり起こす。

「……俺と話したいならもっと普通に呼んでくれない?」
「私の中ではこれが普通なの」
「……そっすか」

 顔を起こした真斗は目を細めて睨むが、気にする素振りを見せない美夜は龍馬の方を小さく指さして口を開く。

「今日は話さないの?」
「ちょっと休憩してるだけだよ。昨日はこっぴどく拒否られたからねー」
「ふーん」

 口を尖らせる美夜は真斗から視線を外し、龍馬の方に目を向ける。

 多分、昨日の行動が無駄になりそうなことに不満を持ってるのだろう。勝手にやったことなのに不満を持つのは些か傲慢だが、ヒロインの自己中を受け止めてこその主人公だろう。

「まぁ話しかけてやるかぁ。俣野もボッチきついだろうしなー」
「あっそ?勝手にすれば」
「ならそうさせてもらうわー」

 尖らせた唇はほくそ笑み、真斗から表情が見えないように窓の外に顔を向けた。そんな美夜に変な感情が湧くわけでもなく、横目で見やった真斗は龍馬の席へと向かいだす。

「俣野くーん。はーなーそー」

 何気なく龍馬に話しかける真斗は腰をかがめ、机に突っ伏す龍馬を覗き込むように目を見上げる。

「別にいいけど」
「まじ!?やったー」

 龍馬の了承にあたかも邪念がないようにせせら笑い、最近の珍事件や晩御飯のことを一方的に話しかける真斗。すると、空いた真斗の席には美夜の唯一の友達である李恋が座った。

「あの2人って仲良かったっけ?」
「今仲良くなったんのよ」
「ほへ~」

 真斗と龍馬が仲良くすることを予想できていなかったのか、李恋は心底驚いたように口を開ける。そんな李恋に訝しげな表情を向ける美夜は小首をかしげて口を開く。

「そんなに意外だった?」
「すっごく意外だった。だって真逆じゃん?あの2人」
「まぁそれはそうだね」
「だけどまぁ、俣野くんの表情が少し明るくなってるからなんでも良いんだけどね」

 中等部から龍馬を見て来た李恋はいつも暗い顔をする龍馬に思うところがあったのか、今の少しだけ明るくなった龍馬の顔を見て微笑を浮かべながら頬杖を付く。

「そんなに嬉しい?」
「良い方向に人が変わったら嬉しいんだよね~。てか、美夜も口元ニヤけてんじゃん~」
「え?」

 慌てて口元を手で覆う美夜は、指先で口を触ってニヤついたことを確認する。これまでにも時折ニヤつくことがあった美夜だったが、人に見られるのが初めてなのか動揺を見せながらも言い訳を考える。
(えーっと、こういう時はどうしたら……なんて言い訳すれば――)
 ほんのわずかに思考を巡らせる美夜だったが、良い言い訳が見つからずに数秒口を閉ざしていると、勘違いをしている李恋が手を差し伸べる。

「――美夜も俣野くんがちょっと明るくなって嬉しいんでしょ?」
「あ、いや、別にそんなことはないけど……」
「あー美夜なら神月くんに友達ができて嬉しがってるのか」
「ごめん、それだけはない」

 先程まで動揺を見せていた美夜だったが、真斗の名前が出たことでわかりやすく表情をこわばらせて冷たい声色で言葉を放つ。

「えーなんでー?」
「なんでって……別に私と神月さんはなんの関係もないから」
「うっそだー。だって入学初日からイチャついてたじゃんー」
「それは誤解だから。てかチャイムなるよ?」

 話を逸らすかのように時計に目を向けた美夜は、早く自分の席に帰れと言わんばかりにしっしっと手で払う。そんな美夜が気に食わなかったのか、プクーっと頬を膨らませた李恋は講義しようと席を立ち上がるが、タイミングよく休み時間の終わりを伝えるチャイムが鳴り、講義ができなかった李恋はジトッとした目で美夜を見て自分の席に戻っていく。

「俣野と友達になれたわー」

 李恋との入れ替わりで更にうるさい真斗が帰ってきたことに小さく溜息を吐いた美夜は「よかったね」と軽く言葉を返す。

「まじでよかったー」

 真斗が呟くと、教室に化学の教師が入ってきて号令の挨拶がかかる。それに合わせて体を前に向けて立ち上がる真斗だったが、美夜が少しのニヤつきを浮かべたことを見逃すことはなかった。
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