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第17話 ベッド直行
しおりを挟む僕は都心からは少し離れたマンションに住んでいる。一応区内だけど、ちょっと北に上がれば埼玉だ。
九条さん宅は皇居近くというから、都心のど真ん中。もしかして皇居に住んでたりして(それはさすがにないか)。もちろん僕のところには来たことないし、住所もさっき初めて教えた。
けど、今は便利な社会だ。九条さんは1時間も経たないうちに我がマンションのオートロックにたどり着いていた。
「既に飲んでたんでね。迎えは明日の朝に頼んだ。構わないだろ」
迎え入れた僕をがっしりした腕に抱きとめ、耳もとで囁く。誰に頼んだのかわからないけど、九条さんのところにはお抱え運転手さんがいるのかも。
「うん……もちろん」
リビングに入りもせず、九条さんは僕を熱いキスで襲う。長い髪からはシャンプーの香り、皺ひとつない黒シャツの肌触りが心地よい。酔いしれるってこういうことを言うのかな。
付き合いだしてまだ日が浅い。こんなふうにお互いを求め合うのは普通のことなのかも。けど、こんなに大人になっても高校生みたいに相手が欲しいと思うんだと、なんだか不思議な気持ちがした。
僕は九条さんの筋肉質な身体に手を這わす。指に伝わるしなやかさが堪らないよ。
「好きだよ。真砂……」
九条さんがここに来るまでの1時間、リビングと寝室をざっくり片づけた。元々そんな汚れてるわけじゃないので良かった。九条さんはお風呂上りみたいだったから、シャワーも浴びて……つまり準備万端。
「ベッド直行でもいいか?」
「いいかって……いいに決まってる」
朝まで居てくれるなら、とりあえずベッドでしょ。疲れ果てて眠ったあとには、夜明けの珈琲とか飲んだりして。
「ふふ。そういう淫らなところも好きだ」
淫らっ。またそんな直球なことを。いや、それは身に覚えのあることだけど、はっきり言われるとちょっとハズイ。
「そ、それはお互い様だと思います……」
鼻の頭まで赤くして言うことじゃないけど、とりあえず言い返してみる。
「ははっ。確かにそうだ」
九条さんはくくっと目じりに皺を寄せて笑う。うわあ、笑うとこんなに可愛いんだ。そう言えば今は前髪をあげずに横に流してる。これもまたセクシーだな。
「うわっ」
突然、九条さんが屈むと僕の体が宙に浮いた。膝の下に手を置き持ち上げたんだ。所謂お姫様抱っこされてしまった。
「では、遠慮なく。しかし軽いな」
バランス取れなくて慌てて九条さんの首に腕を巻きつける。けど、微動だにしない。さすがいつも重いバーベル持ち上げてるだけあるや。
「九条さんが力持ちなんですよ」
安定感抜群の戦士に抱かれて寝室に入る。ポンっとベッドの上に投げ出された。バウンドする間もなく九条さんが僕に覆いかぶさって来る。
「せ、狭くてすいません」
当然ベッドはシングルだ。
「どうして? 狭い方がいい。真砂の逃げ場がない方が楽しめるだろ?」
そ、そんな言い方されたら、それだけでいってしまいそうだよー。
九条さんは黒シャツを脱ぎ捨て、僕のパーカーをはぎ取る。再び激しいキスをみまわれた僕は、ずぶずぶと九条沼に溺れていった。
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