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第63話 ベガス! その4
しおりを挟むカジノは基本的にお客同士が戦わない。賭けをする相手はあくまでもディーラーなんだ。
だから客同士が争うなんてのは愚の骨頂。なのに、こいつはそれをしようと言うのか。こんなのに付き合う必要はないんだ。
「佐山……」
「生憎だったな。俺はここに楽しく遊びに来たんだ。つまんねえオッサンに付き合う趣味はない」
ガツンと言い放った佐山。やっぱり心底カッコいいよっ! 僕は思わずあいつの手を握った。
「行こうか、倫」
ニコリと笑って僕の肩に手を置いた。
「ふんっ。そんな度胸もないか。人まねするしかない日本人じゃ仕方ないね」
「な……」
僕はあの男が口癖のように言っていた『モノマネ』に、思わず振り向きそうになった。
「よせ、倫。気にするな。言わせておけばいいんだ」
佐山は肩に置いた腕に力を入れて抱き寄せる。激高していた感情が急速に落ち着きを取り戻した。
「佐山……」
「ああいうのをな、負け犬の遠吠えって言うんだぜ。倫はスラングまでしっかり理解できるから仕方ないけど、俺には『ぎゃんぎゃん』にしか聞こえない」
スラングならおまえの方が得意だろうに。でも、確かにそうだな。
「ホントだ。僕にもそう聞こえるよ」
佐山はあいつに背を向けたまま僕の頬にキスをした。ビルの遠吠えが一段と激しくなったが僕らは知らん顔でその場を立ち去った。
ホテルのカジノはどこも盛況。24時間営業だから、夜も日もない。その喧騒の中に入ってしまったら、嫌な感情もどこかへ消えてしまった。
――――だけど、あの野郎もこのホテルに泊まってるのかな。広いカジノだけど、同じテーブルに来られたりしたら嫌だな。
かといって、違うホテルカジノに行くのも癪に障る。佐山は気にしないだろうけど。
「よし、明日のために資金調達しておこう」
「え? 今夜は偵察だけじゃないのか?」
いくつものゲームテーブルが立ち並ぶフロア。賭け事を楽しむ人々の間を縫うように僕らは歩いた。その一つのテーブルの前で佐山が立ち止まる。
「少しだけだよ。ほら、倫も座って」
佐山は空席があったルーレットのテーブルに座る。ダウンタウンでもそうだったけど、佐山のお気に入りはこれらしい。確かに一番当たりがあった気がする。
「100ドルでやめておくから。な」
「あ、ああ。大丈夫だよ。信頼してる」
「安心しろ。部屋でのお楽しみがあるから、そんなに遅くまでしない」
口角をビローっと上げてスケベな顔を見せる。部屋でのお楽しみ……僕は思わず赤面した。
相変わらずどんな時でもマイペースなおまえ。それでは僕は、そのお楽しみを妄想しながらおまえのギャンブラーぶりを眺めることにしよう。
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