聖剣使いの乙女は実は魔王の娘だった

桐夜 白

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魔王の娘 と 休戦締約と同盟条約

魔王の娘 と 休戦締約と同盟条約 7

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「コチラは魔素がどれだけあるか測ることの出来る水晶です。
同時に属性も測れます。
エディーリン姫と一緒に残られると言うのなら、魔素の量によります」

「…コノ子、魔法も魔術も使えなくってよ?」
 
 
 
クリステン卿が説明し、手で水晶を示すと、エディーリン姫はきょとんとしながらディプスクロスを水晶の上に置いた。
水晶の中にグレーの霧のようなモノが若干現れるも、特に大きくもなく、むしろ小さい方で、遠くからだと目を凝らさないと見えないのではないか?という大きさだった。
 
 
 
「…陽と陰のバランスが取れてはいるものの、本当に魔法も魔術も使えないようですね…。
まるでただの烏だ」

「魔族の国で生まれた烏だけれど、他の烏魔族と違ってコノ子は普通の烏だから…、魔法も魔術も使えないの。
不思議なのは言語を覚えたことくらい」

「カアー!オレ様いろいろ喋れる!カアー!」

「ではエディーリン姫、同じように触れてください」
 
 
 
クリステン卿が不思議そうにディプスクロスと水晶を見ながら言い、エディーリンが淡々と言ってディプスクロスを抱き上げると、ディプスクロスは誇らし気に喋れることを両の翼を広げて叫んだ。
どこからどう見てもただの……、喋る烏だった。

クリステン卿が次を促すようにエディーリンに言う。
エディーリンが水晶に触れる。
すると黒い炎がブワアッと広がり、水晶を出て大きく広がった。
エディーリン姫の赤い華の耳飾りが神や服と共に揺れてキラリと光る。
 
 
 
「なんて魔素の量だ!
クリステン卿よ!
やはりコノ娘は危険だ!
殺すべきです!!」
 
 
「彼女を殺めることは天子の名において禁じます!

…なるほど、陰の気で炎属性ですか」
 
 
「魔族は陰の気を持つ者ばかりだから、黒色の炎なのね」
 
 
 
あまりの威力で水晶から噴き出した黒い炎を見て、エンテイラー国王は叫んでクリステン卿に言った。
コノ娘は危険だと、殺すべきだと。
しかしソノ時、クリステン卿は初めて厳しく殺めることを禁じると声に出した。
ソレは何処か怒りを含んだようにも見えた。
しかしそれもつかの間、彼は落ち着いたように水晶とエディーリン姫を見る。
エディーリンはクリステン卿の言葉を聴いて、納得したように言い、水晶から手を離す。
水晶は元の透明な水晶に戻っていた。
 
 
水晶を持ってきた神職者がこれからどうするのだろうと、伺うようにクリステン卿を見る。
 
 
 
「ふむ…、天子の名において、魔王の娘を殺めることを禁じる、ですか。
なるほどなるほど」
 
 
 
カレイディル帝国皇帝が白い髭を撫でながら、納得したように言う。
 
 
 
「これで西洋五大国の誰もがこのお嬢さんに手を出せなくなったわけだ。
ところで属性は炎なんだろう?
なればコノ情熱と炎の国──ヴァレッタディーヴァ国が彼女を預かるのはいかがか!」

「……いえ、エディーリン姫にはエンテイラー国に留まっていただきましょう」

「⁈」

「彼女に手を出すことは、天子の名において禁じます。
よろしいですね、エンテイラー国王」

「…くっ!!」
 
 
 
ヴァレッタディーヴァ国王が楽し気にそして興味あり気にエディーリンを自国で預かると申し出ると、クリステン卿は少し考えて彼女が留まる国をエンテイラー国に指定した。
ソレにエンテイラー国王が驚きクリステン卿を見る。
クリステン卿は少し冷ややかな目で、念を押すようにエンテイラー国王に言うと、エンテイラー国王は悔し気に机を叩いた。
 
 
 
「ねぇ、さっきから気になっていたのだけれど、ソノ“てんし”って何かしら?」

「ご説明しましょう、エディーリン姫。
天子様は、天の子と書いて“てんし”と読みます。

天子…。
ソレは西洋五大国の象徴で、コノ世で最も神気を持っておられる御方。
神のコエを直接聴き、過去のコエを直接聴き、未来をも見れることが在る存在です」

「まぁ!
人間界にはそんなすごい方が居るのね!
なるほど」
 
 
──ソレで私に手を出せないようにしたわけか。
西洋五大極の象徴。
彼は私を護ってくれたのかしら…。
でも、まぁ御父様の建てた“人間と魔族の休戦締約と同盟条約”を真剣に考えてくれている証ってことよね。
それにしても災難…、というべきかしら?
まさかさっきから怒鳴り散らして私達を特に軽蔑してるであろうあの隻眼の王の国に留まることになるなんて…。
クリステン卿は…、何かお考えがあってなさったのかしら?
 
 
 
エディーリンが考え事をしていると、ディプスクロスが上を向きエディーリンを見て口ばしで突っつく。
エディーリンがソレに気づくと、微笑んだ。
 
 
 
「魔族の国の烏、ディプスクロスに関しては基本無害と言えるでしょう。
そしてエディーリン姫にはエンテイラー国にディプスクロス殿と“人間と魔族の休戦締約と同盟条約”についての結果が出るまで留まっていただきます。
よろしいですね、エディーリン姫」

「ええ、勿論問題ありませんわ。
ありがとう、クリステン卿」
 
 
 
クリステン卿が言い、エディーリンが言うと、エディーリンと共に魔族の国からやってきたお付きの者達はヨルガを含め、武器を返してもらって魔族の国へ帰国の帰路についた。
しかしエディーリンの赤く美しい剣はエンテイラー国王の指示の許、“人間と魔族の休戦締約と同盟条約”の話が決まるまで返却しないことになった。
つまり彼女は丸腰になったわけだ。
ヨルガ達はソレを心配していたが、エディーリンが「大丈夫よ、御父様と御母様達に今回のことちゃんと伝えておいて」と言って微笑むと、ヨルガ達は心配を隠し切れず会議の場を後にし帰国していった。
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