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女神の祝福
金色の光
しおりを挟む煙充満する部屋に、金色の光がまるで星のように瞬いた。かすかに百合の香りがして、気づけば部屋に充満していた煙は浄化されたかのように無くなっていた。
「あ……」
声が出るようになった。呼吸が楽になる。一方で、ロイは苦しみ藻掻いている。
(逃げるなら、今の内なのに!)
手足が縛られていて、逃げようにも逃げられない。もどかしく歯噛みしていると、鮮やかな紗の向こう側から金色の光が溢れて、セレーネの身体全身を包んだ。
「セレーネ!!」
「……っ」
その声を聞いた瞬間、瞳から涙が零れて止まらなくなった。金色の光が広く視界を満たして、駆け寄って来るその人──エルゲンの顔が見えない。
「ああ、セレーネ……良かった。あなたの命があって……本当に。生きた心地がしなかった」
近くにある温かい身体。抱きしめられて「ああ、助かった」と泣きたくなるほどの喜びが胸にせり上がって来る。
ああ、良かった。本当に、良かった。またあなたに会えた。
「……うっ……うぅ……あ……」
嗚咽を漏らして泣くと、エルゲンがぎゅぅと抱きしめてくれる。
「怪我は?……ああ、足が擦り剝けて……顔にも」
指先で、頬を辿られる。その温もりがあまりにも愛しくて、愛しくて。また涙が溢れてくる。
「逢いたかった……エルゲン」
「私もですよ」
優しい口づけをされ、また抱きしめられる。しばらく2人で抱き合っていると、いつのまにかロイの声が聞こえなくなっていた。おずおずと視線を向けると、ロイは眠ったように動かなくなっている。呼吸の音は聞こえるが、なにやら苦しそうだ。
「ど、どうしちゃったの?」
「眠ってもらっただけですよ」
「……」
(それにしては、ものすごく苦しんでいたような……ううん、それより)
「エルゲンって、魔法が使えるの?」
部屋に咲いた金色の光は既にない。あの幻想的な光景は、魔法で作り出されたとしか思えない。キョトンとした顔をするエルゲンは、少し考えた後で、クスクスと忍び笑いを漏らした。
「魔法……ではありませんね。似たようなものではありますが」
「?」
「女神に少し力をお借りしました」
「そんなことが出来るの?」
「ええ。ですが、頻繁にはお借り出来ませんよ。今日はたまたま女神の機嫌が良かったのであなたの居場所を教えてもらい、力を借りることができました。……おそらくしばらくはまた一日中祈りを捧げなければなりませんね」
苦笑を零しながら、エルゲンはまたぎゅぅぎゅぅと抱きしめてくる。そんな仕草が愛おしくて、セレーネはエルゲンの背を柔く撫でた。
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