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女神の祝福
あなたのままで
しおりを挟む「……私、エルゲンがこの先苦しまない決断をして欲しいと思うわ」
思い詰めた顔をするエルゲンに対して、セレーネは自分の思うままを告げた。
「私、エルゲンの慈悲深いところが好きよ。人を人の道にちゃんと戻そうとしているあなたが好き」
「……セレーネ」
「ごめんなさい。私が攫われたからあなたが決断に迷うことになってしまった」
「いいえ、そのように謝らないで。私が皇帝陛下から役目を享受したのです」
「あの人達を死なせないためでしょう?」
「……はい」
「それなら、そうすればいいと思うわ。あなたは確かに怒っている。極刑に処したいと思っているのは本当……でも、あなたは更生する機会を与えることも大事だと分かっているのね」
「……はい」
「そんなあなただから、女神はあなたに祝福を与えたのよ」
「……」
「彼女の与える罰は人の10倍以上重いって言うじゃない?それを補ってあまりある慈悲深さが必要だったからあなたに祝福を与えたのよ。ただの推測だけど……もしそうだとしたら、あなたはあなたの願いではなく、性格に従って判断を下すべきじゃない?」
「……後悔、してしまいそうなのです」
「後悔?」
「あの時、極刑に処していればと後悔するような日来るかもしれないと」
「エルゲン……。たぶん、あなたなら心の底で分かっていると思うけど、結局どちらを選択してもあなたは後悔すると思うわ。綺麗さっぱり後悔せずに済む選択なんて、最初から悩んでいなかったか、奇跡的に自分にとって最良の選択をした時だけよ」
「……はい」
「それだったら、あの時自らの願いで動いてしまった……と、後悔するよりも。女神と……それから私が愛するあなたのままで選択したことで後悔するほうがいいのではない?」
いつになく頼りなげなエルゲンの頬に両手を添える。
「大丈夫よ、エルゲン」
根拠のない大丈夫だ。それでも、エルゲンを安心させたい一心でこの時、セレーネは言葉を尽くした。
そして、エルゲンは最終的に自らの性格に従って動いた。
エルゲンの下した決断には、そのような経緯があった。
そのことを思い出しながら、セレーネは今、神殿へ向かう馬車に乗っている。
「……奥様、大丈夫でございますか」
そう心配してくれたのはヤーナだった。セレーネはエルゲンに助け出され、屋敷に戻ってすぐにヤーナの容態を聞いた。幸いに、矢は深く刺さったわけではないため、しばらく療養すれば治ると聞いて、ほっと安堵した。
「ええ、大丈夫」
何故、教会へ向かっているのか。それはエルゲンから悩みを打ち明けられると同時に聞いたことが関係している。
セレーネはそのことを聞いた時、あまり衝撃を受けなかった。
やっぱり、そうなのか。と何処かで納得している自分がいたのだ。
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