愛する婚約者は、今日も王女様の手にキスをする。

古堂すいう

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覚悟

無自覚

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「……何かまだ疑問があるの?」

その問いかけに、ガブリエルはしばし熟考した後に頷いた。

「君が嫌がることはしたくないが……不安を抱えて寝込んでしまわないかと、気が気でない」
「……もう、大丈夫よ」

とはいえ「大丈夫」と言っても「そうか、大丈夫なのか」と頷くガブリエルではない。彼の物事に対する関心の薄さは尋常ではないものの、他人の言葉の真意を読み取る能力は人よりも鋭いくらいだ。

騎士見習いは国を守護するためにありとあらゆることを学ぶと聞く。剣の扱いはもちろん、国の情勢、他国の情勢、外交、貿易、農耕、政。その中で、相手の真意を探る方法も教えられたのかもしれない。  

会えなかった期間で、彼は随分と大人になった。未だに病弱な幼い少女のような容姿をしている自分と並ぶと、より彼の男らしさが際立つことだろう。


ロメリアがそんなことをぼんやりと考えていると、ガブリエルが視線を合わせてきた。

「なにを」

見ていたんだ?あるいは、考えていたんだ?と聞きたいのだろう。

「背がとても高くなったなあと思ったの。もう、見上げないとあなたの顔が見られないわね。首が痛くなりそう」
「……?こうしていれば、視線は同じだ」

ほら、とでも言うようにガブリエルは膝をトントンと叩く。

「ずっとこんな姿勢でいるの?」
「君の首が痛くなりそうになったら、こうすればいい」

当たり前のこと言っている、と思っているのか。彼は無表情のまま見つめてくる。首が痛くなるたびにこんな姿勢になっていたら、可笑しいではないか。

「……ふふ」

思わず笑ってしまうと、彼は不思議そうにまた首を傾げた。

「私は何かおかしなことを言ったか」
「ううん、あなたの言葉とは思えないくらい甘いから、可笑しかったの」
「甘いことを言った……のか?私は」
「うん」
「……そうか」

そうなのか、と己の言葉を顧みているのか。ガブリエルは長い指先を顎に当てる。

「無自覚なのね」

ガブリエルが以前より多く話してくれるのは嬉しい。

だが、無自覚に甘い言葉を吐いてしまったところを見ると少し不安になる。多く話すようになったとはいえ、普通の人間からしたらガブリエルの言葉数はまだまだ少ない。

そんな彼から甘い言葉をかけられたら、勘違いする者も出くるだろう。

「……何を考えている?」

顔を覗き込んでくるガブリエルに、ロメリアは誤魔化すことはしないほうがいいと悟って思ったことを素直に口にする。

「そんなだと、たくさんの女があなたを好きになるのは必然だわね」

若干不貞腐れたように言ってしまったことを後悔していると、ガブリエルの湖面の瞳がゆらりと揺れた。
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