愛する婚約者は、今日も王女様の手にキスをする。

古堂すいう

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覚悟

約束

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「……気をつけよう」

反省するように目線を伏せたガブリエルはロメリアの小さな手を握り、安心させるように撫でさする。

人と話すことも、接触することさえ厭うことも多かった彼のあまりの変化に、ロメリアは今日何度驚いたか分からない。

もしかしたら、無理をしているのかもしれないと、心配になってくる。

「……無理に私に触れることないわ。あなた、他人に触れられるのあまり好きではないんじゃない?」
「そんなことはない」
「……?……そうだったかしら」

記憶違いだったんだろうか。

だが、時折悪夢で見ていたガブリエル……つまり、原作のガブリエルは年を経るごとに人に触れられることが苦手となっていったと記憶している。

だから騎士見習いとなり王女と再会したばかりの頃は彼女に触れられることさえ苦手としていて徐々に慣れていった……と思っていたのだが。

(一体……どういうことかしら)

考え込むロメリアに対して、ガブリエルが口を開く。

「幼い頃から、君はよく私の手や腕を触っていただろう」
「うん」
「触れられることが嫌いになる云々の前に、慣れてしまった」
「……」

(それはそれで……どうなのかしら)

ロメリアは内心で冷や汗をかいた。

小説の中ではあんなにも人に触れられることが苦手だったのに、そもそも苦手だと認識する前に慣れさせてしまうほどべたべたと触っていたということか。

「ご、ごめんなさい」
「……?……謝る必要はない。君が触れて話してかけてくれたおかげで、騎士見習いとなった時も周囲との軋轢が生じずに済んだ」
「そういえば、すごく元気な同僚さんがいたわね……お友達なの?」

確か、リュダという名前だったはずだ。

ガブリエルとは全く異なる人種のように感じたが、あんな風にお喋りが大好きそうな人間のほうが案外、ガブリエルのように物静かな人間との相性はいいのかもしれない。

「彼がブローチ選びを手伝ってくれた」
「え!……こ、これの?」

ガブリエルに握られていた方の掌を開く。藤色のブローチは手の熱さに萎れることなく、花開いていた。

「持っていたのか」
「うん。とても気に入ったから」
「そうか……それはよかった」
「……これは彼が選んだの?」
「選んだのは私だが、店を紹介してくれたのは彼だ」
「とても良いお店を知っているのね」

こんなにも細かい装飾を金属で作り上げるには相当の修練がいるはずだ。腕の良い希少な職人を雇うためには、店の品性や格も問われることがあると聞く。

「今度、一緒に訪ねよう」
「いいの? あなた、騒がしい王都の街はあまり好きではないじゃない」
「問題ない」
「……そう? じゃあ……体力が戻ったら連れて行って頂戴」
「分かった」

ガブリエルは快く頷いてくれる。

体力が戻ったら……と前向きなことを言えるようになったことに内心でやはり驚きながらも、少し先の未来に楽しみを作っておくのも気力を蓄えるためには必要なことだと、ロメリアは実感した。
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