7 / 13
生理的に受けつけないαとΩは婚約解消希望 I
しおりを挟む-----------------------------------------------------------
⚠︎オメガバースの世界観ですが、独自設定あり
大丈夫な方はスクロールしてお読み下さい。
-----------------------------------------------------------
αとΩ、だからオレたちは最悪なことに婚約者となった。
***
8歳の頃、西条 武文(さいじょう たけふみ)は天使と周囲から呼ばれていた。
光を当てなくても輝く金髪、透明感のある湖を移し込んだような大きな目、その目を彩るようにぱっちり生えたまつ毛がクルンとカールし、まろい頬は思わず触りたくなるほどで、小柄でスラっとした体型が余計に庇護欲を刺激した。
そう、俺であった。天使と呼んで然るべき存在であったのがその当時の俺だ。
そんな客観的にも完璧すぎる俺だったせいか、神様は試練を与えたらしい。
8歳の頃に西条家の坊ちゃんとしてお披露目兼誕生日祝いのパーティが開催されたのが、俺の人生に暗雲を立ち込めさせるそいつとの初対面だった。
一目見た時から俺はつい眉を顰めしまった。主役のオレより目立つ可能性のあるやつがいたからだ。
パーティ会場の天井に吊るされているシャンデリアの光を浴びてより一層輝く金髪に、青空を写し込んだような眼、まだ子供の癖に精悍さを見せ始めている顔立ちに、俺よりも10cmは高そうな身長、尽くが気に食わなかった。
そのなかでも1番気に食わないのは、髪と目の色が微かに、本当に微かに被っていることだった。顔立ちとしてはオレは可愛らしい天使のようだと言われるが、これでは兄弟のように見えるのではないか。最悪だった。
相手もそう思ったようで、こちらを見たとき密かに眉毛がピクリと動いた。
初めて会った時からお互いイケすかない奴だと理解し、こいつとは仲良くできないと一目で分かった瞬間だった。
***
お互い親同伴の挨拶回りは終わったのに、ご丁寧に口元に笑みを浮かべてこちらにやってきたあいつは、挨拶を始めた。
「改めまして、西条武文さん。私は紀本 宏輝(きのもと こうき)と申します。お会いできて光栄です」
目元が一切笑っていなかった。ここまでいくと、器用な気がして鼻で笑いかけた。
「ご丁寧な挨拶、ありがとうございます。ええ、こちらこそお会いできて光栄です」
にっこり笑顔で挨拶をしてやった。お互い宜しくしたくないらしく、宜しくの一言はなかった。
もう去ればいいのに、紀本はまだ話し続けた。
「そういえば西条さん、私達同い年なんですよ。よければ楽に話しませんか」
紀本は爽やかそうな雰囲気を出して提案していたが、本音はきっとこうだ。"お前相手に気を使いたくない"
だからオレはこう答えた。
「親しき中にも礼儀あり、ともいいますしお互いを尊重しあえる関係でありたいと思ってますよ(意訳:そもそも関わる気がない)」
お互いに顔を見合わせてにっこりと笑った。
最悪なバースディパーティはまだ開幕したばかりであった。
***
紀本の後は順調に子供同士での挨拶回りが出来た。
やれ可愛らしいだの天使のようだの、容姿への賞賛が飛び交う中、紀本と色合いが似ているなどと鼻につくことをいう察しが悪い人間もいた。
オレの血管と忍耐力が試されることとなり、原因となった紀本がなおさら疎ましかった。
主役と同じ色合いの髪の毛ぐらい染めてこいよと理不尽な考えが過るなか、ダンスの時間が近づいてきた。
オレは背が近い従兄弟と踊る予定であったが、父と紀本の父が仲良くなったようで2人でこちらに向かってくるのが分かった。
父の容姿が黒髪に明るめの青い目でのんびりとした顔つきで中肉中背なのに対して、紀本の父は落ち着いた金髪の髪と青空を移し込んだような目、身長が185cmはありそうなモデル体型であり、紀本の未来予想図であった。
父よ負けるなと心の中で失礼なエールを送っていると、紀本の父がこちらをにっこりとしながら見ていることに嫌な予感がした。
父へのエールを即止めて、あらゆる罵詈雑言と呪いの言葉を頭の中へ浮かべ、察しろと念を送ったが、鈍くて仕方ない父はオレに笑顔で話しかけた。
「武文‼︎紀本さんの息子の宏輝くんがね、踊ってくださるそうだ。踊っていただきなさい」
悪意なく特大の悪意を向けてきた父へ心の中での罵詈雑言が悪化した。
「いえ、そんな。従兄弟と踊る予定でしたし。いきなり頼むなんて宏輝さんに悪いですよ」
頼む、父。遠回しに断ってんだろう。理解しろ。
父には伝わっている様子がなかったが、断る方向で話を進めようとした時に、紀本の父がにっこり笑ってこう言った。
「そんな訳がない。こんなに可愛らしい武文くんと踊れる機会がもらえるなんて、私の息子は幸運だ。すぐに呼んでくるから待っていてくれたまえ」
一瞬、断頭台のギロチンが目の前に見えた気がした。
今日は俺の誕生日パーティのはずなのに。
なんてことをしてくれたんだと目を見開いて父を無言で見たが、父は少したじろいだぐらいでこちらの意図を察しなかった。父よ、使えなさすぎる。
頭痛腹痛眩暈吐き気その他諸々が紀本に襲いかかることを願ったが、叶うはずもなく、紀本の父とともにこちらへやってきた。紀本は口元に笑みを浮かべた。
「父から話を聞きました。武文さんと踊れるなんて私は幸運ですね」
紀本は心にもないことを白々しく述べたが、やはりというか目元が笑っていなかった。
「いえ、そんな。急な話でしたのでご迷惑でしょう(意訳:断れ)」
「いいえ、そのようなことは。光栄ですよ」
相手からは断る気がないらしい。親の目、周囲の目、目、目、目。全員、目潰して回りたくなった。
どれだけ腹ただしく、もはやギロチンの幻覚が見えようとも関係ない。
俺は西条家の人間として責務を果たすことにした。
「それではお言葉に甘えて、踊っていただけますでしょうか」
「ええ、喜んで」
後からオレはこの時のことを思い出して、責務を果たす役割をしたことは後悔してないが、この時のことが周囲にどのように見え、また影響を与えるのかの換算が甘かった自分に舌打ちした。
***
パーティ会場を覆うような弦楽器の音が厳かに始まった。
今日はオレが主役なのでファーストダンスだ。目立つ。本当に目立つ。
ダンスという晴れの舞台を何故こいつを相手役として迎えているのか。意味が分からなすぎて憤死しそうだった。
そんな内心は1ミリも出さず、お互い和かな表情を浮かべながら、ダンスを踊った。和やかすぎるほどに。ここまで和かな表情が変わらないといっそ無表情と変わらないと思えるほど、お互いピクリとも表情が変わらなかった。
紀本から、「ダンスがお上手ですね」と本人が相当上手い癖にそんな言葉を投げかけられたが、「ええ、この日のために猛特訓したので」とサラリと流した。
最悪なお披露目である。パートナーが特に。というか元凶である。
曲も終盤に差し掛かり、弦楽器の音が止み、礼をした後、拍手をあびるように受けた。
当然の結果であったが、少し嬉しい。
パートナーさえ違えば完璧であった。
その後、父達の下へ向かうと笑顔で出迎えられた。父はお似合いの2人であった、と絶賛し、紀本の父が同意するように笑顔で肯定していた。こんなにも人に殺意が湧く瞬間が訪れようとは思わなかった。
これ以上ここにいても血圧が上がるだけだと思い、早々に別れようとしたオレを紀本の父が止めて、笑みを深めながらこう言った。
「武文くん。君達があまりにもお似合いなものでね、君の父君と話し合ったのだが、宏輝がαで武文くんがΩで丁度いいとのことで婚約する手筈になったよ」
一瞬、あまりにも衝撃的な言葉に理解することが出来なかった。頭がフリーズしたが、急激に回り始めた脳みそが紀本の父に諮られたのだとオレに理解をさせた。
最初からそのつもりで紀本とオレを踊らせたに違いなかった。
瞬間、表情が自分でも分かるぐらい抜け落ち、紀本は分かっていてやったのか確認するために紀本を見たが、あいつも同じ表情をしてた。
「婚約まで整うなんて、素晴らしい誕生日になった」と父は大喜びだったが、オレは父を今すぐ張り倒したくなる衝動を抑えるのに必死であった。
あまりの怒りで強く握りしめた手を自分の背後に見えないように隠した。
αとΩだからなんだというのか。この世に人類が五万といるのに何故こいつなのか。叫び散らかしてそこら中のものを破壊し、全てなかったことにしたかった。
これまでの人生で1番、最悪な誕生日パーティであった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる