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生理的に受けつけないαとΩは婚約解消希望 Ⅲ *
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地獄の交流会、第4回目がやってきてしまった。
けれど、今回の交流会は地獄一歩手前になる予定だ。なんせ、街歩きで現地解散予定。素晴らしいの一言である。
紀本の迎えで街まで行かなきゃならないのが、しんどいというか辛いというか、やってられないがやるしかない。
自宅の部屋という、一番落ち着くべき場所でため息が止まらない。
「あ~気合い入れよ~~」
思わず独り言を呟いてしまったが、やるしかないのだ。
紀本が西条家に着いたことを、うちの執事である佐々本(ささもと)が伝えにきた。佐々本は穏やかそうな顔に黒染めして髪を整えているが、執事というよりも好好爺といったタイプである。
「坊っちゃま。紀本様がお越しになられましたよ」
「え~~~~~~~~~」
「坊っちゃま」
「分かってるって、佐々本。ちゃんとするよ」
佐々本には、俺がこの婚約が不本意極まりないことがバレている。父親が気づかず、執事にバレる。父親の使えなさをフォローしている優秀な執事にはいつも隠し事ができない。
「でもさあ、この婚約ってなんとかなかったことにならない?」
「難しいでしょうな。坊っちゃま方はともかく、両家のご当主様が乗り気なようですから」
しかも紀本の父は、俺も紀本も嫌がっていることを理解した上で婚約させたようだし、絶望的だ。
「どっかに運命の番が落ちてないかなあ」
「坊っちゃま、落ちてないかななどと、お口が悪うございますよ」
「だってさあ~~そしたら、合法的に婚約解消できるだろ?最高じゃん」
運命の番。αとΩで対になる、本能的に惹かれ合う存在のことである。近年では、フェロモンの相性が99%以上を占めるとその割合が高いという研究結果が出ている。
本当にごく偶に運命の番が2人いることがあるらしい。都市伝説レベルだが。
2人もいたら運命の番じゃないのでは??となったが、大概は1人であり会うことすら稀なわけだから、運命と呼んでもいいのかもしれない。
くだらない事を話しながら歩いていたら、紀本が待つ客室に着いた。
「紀本さん、お待たせいたしました」
「いいえ、お茶でおもてなしをして頂いていたので。それではいきましょうか」
お互い和かな笑顔を浮かべながら、紀本の車まで向かい、サッと乗り込んだ。エスコートなどはお互いする気がない。周囲へ取り繕うのも必要最低限だ。
「本日は街歩きの予定なので、そちらへ向かいますね」
「ええ、お願いします」
話し終えたら、お互い窓から景色を見て無言の時間が続いた。心地が悪い無言である。
無言でも心地が良い関係があるというが、俺達には当てはまらず、胃が痛くなる。
こんなことを、あと何回続けなければならないのかとゲンナリした気持ちになるが、どうしようもない。ため息を噛み殺して義務を果たすのだ。
***
街に着いた。晴天である。
「帰りはお送りするので、集合場所は街の中心にある噴水前、時間は15時で」
「分かりました」
現在、10時30分。現地解散がよかったが仕方ない。
紀本は本屋の方面へ行ったので、俺は出店を見て回ることにした。
肉の良い香りがしてきた。フラフラと串焼き肉を売っている店へ近づく。
「おっちゃん。1本ちょうだい。支払いはカードね」
「あいよ」
出店でさえカードが導入されているなんて、便利な世の中である。串焼き肉を受け取り、頬張る。焼肉のタレが濃厚で美味しい。
「これだよこれ~やっぱ美味しいわ」
「ありがとな、坊ちゃん。また来てくれ」
「こちらこそ。また来るわ」
串焼き肉を食べた後は焼きそばを食べて、甘いものが食べたくなってきたのでカフェに向かうことにした。食べてばかりである。
「食欲そそる良い街~~」
ルンルン気分で歩いていたら、後ろから、「αとΩは今すぐ此処から離れろ!」と叫び声が聞こえた。
その瞬間に、密かに感じた匂いに強い危機感を覚え、常時携帯しているΩ用抑制剤を右手で持ち、左の腕に注射した。
「嘘だろ、こんな街中で...」
どうやら、何処かのαとΩがヒートになったらしい。この時代、ヒートにならないように薬で管理できるようになっているのに。
ともかくこの場を離れなければ、と思いながら、ヒートになったαとΩの位置を確認して二度見した。よく見ると、そのΩの前に紀本がいた。
Ωのほうは荒い呼吸で地面に座り込んでいて、紀本は尋常じゃない様子であり、必死に周りが紀本を押さえ込んでる。
「くそったれ!」
大声で紀本を罵りながら、紀本の元へ向かい、紀本のズボンのポケットを漁って見つけたα用抑制剤を紀本の右腕に打った。
即効性があるものなのに、効いた様子がない。
「嘘だろ、もしかして運命の番か」
どうしようもなくて意識を刈り取った。近くに居た人に手伝ってもらって、紀本を連れてタクシー乗り場まで行き、急いでタクシーへ乗り込む。
「死ぬほど迷惑~~~‼︎‼︎」
叫ばずにはいられない心境だった。
***
紀本を紀本家へ捨てて...置きに行き、状況を説明した後、家へとそのまま帰った。
紀本家がなんとかするだろ、と思ったのもあるし、もし運命の番が紀本に現れたということが確認されたら、この婚約は解消されるに違いないと思ったからだ。
前の婚約者は居座るべきではない。
今すぐ全力でこの婚約者の席を譲るので、早く確認してほしい。
紀本と婚約して一年。憂鬱だった日々に終わりが見えてきて、少し涙ぐんだ。
それよりも目先の問題がある。紀本のヒートに少し当てられたことだ。
抑制剤は打ったが、タクシーという狭い空間に一緒にいたせいで当てられた。
自室になんとか避難したが、頬が熱ってきたし、体も熱い。軽く当てられただけでここまでの被害とは最悪である。
「ああ、クソ‼︎‼︎紀本のヤロウ‼︎‼︎」
叫ばずにはおられない。自分を慰めるにしても他の人のことを考えたいのに、怒りでつい紀本のことを考えてしまう。
「...ッ」
「ぁあ~~マジか...最悪...この世の終わり...」
紀本のことを考えながら、自分を慰める羽目になるとは思わなかった。不本意すぎる。腹が立って仕方なくて、床に枕を放り投げた。八つ当たりである。
けれど、今回の交流会は地獄一歩手前になる予定だ。なんせ、街歩きで現地解散予定。素晴らしいの一言である。
紀本の迎えで街まで行かなきゃならないのが、しんどいというか辛いというか、やってられないがやるしかない。
自宅の部屋という、一番落ち着くべき場所でため息が止まらない。
「あ~気合い入れよ~~」
思わず独り言を呟いてしまったが、やるしかないのだ。
紀本が西条家に着いたことを、うちの執事である佐々本(ささもと)が伝えにきた。佐々本は穏やかそうな顔に黒染めして髪を整えているが、執事というよりも好好爺といったタイプである。
「坊っちゃま。紀本様がお越しになられましたよ」
「え~~~~~~~~~」
「坊っちゃま」
「分かってるって、佐々本。ちゃんとするよ」
佐々本には、俺がこの婚約が不本意極まりないことがバレている。父親が気づかず、執事にバレる。父親の使えなさをフォローしている優秀な執事にはいつも隠し事ができない。
「でもさあ、この婚約ってなんとかなかったことにならない?」
「難しいでしょうな。坊っちゃま方はともかく、両家のご当主様が乗り気なようですから」
しかも紀本の父は、俺も紀本も嫌がっていることを理解した上で婚約させたようだし、絶望的だ。
「どっかに運命の番が落ちてないかなあ」
「坊っちゃま、落ちてないかななどと、お口が悪うございますよ」
「だってさあ~~そしたら、合法的に婚約解消できるだろ?最高じゃん」
運命の番。αとΩで対になる、本能的に惹かれ合う存在のことである。近年では、フェロモンの相性が99%以上を占めるとその割合が高いという研究結果が出ている。
本当にごく偶に運命の番が2人いることがあるらしい。都市伝説レベルだが。
2人もいたら運命の番じゃないのでは??となったが、大概は1人であり会うことすら稀なわけだから、運命と呼んでもいいのかもしれない。
くだらない事を話しながら歩いていたら、紀本が待つ客室に着いた。
「紀本さん、お待たせいたしました」
「いいえ、お茶でおもてなしをして頂いていたので。それではいきましょうか」
お互い和かな笑顔を浮かべながら、紀本の車まで向かい、サッと乗り込んだ。エスコートなどはお互いする気がない。周囲へ取り繕うのも必要最低限だ。
「本日は街歩きの予定なので、そちらへ向かいますね」
「ええ、お願いします」
話し終えたら、お互い窓から景色を見て無言の時間が続いた。心地が悪い無言である。
無言でも心地が良い関係があるというが、俺達には当てはまらず、胃が痛くなる。
こんなことを、あと何回続けなければならないのかとゲンナリした気持ちになるが、どうしようもない。ため息を噛み殺して義務を果たすのだ。
***
街に着いた。晴天である。
「帰りはお送りするので、集合場所は街の中心にある噴水前、時間は15時で」
「分かりました」
現在、10時30分。現地解散がよかったが仕方ない。
紀本は本屋の方面へ行ったので、俺は出店を見て回ることにした。
肉の良い香りがしてきた。フラフラと串焼き肉を売っている店へ近づく。
「おっちゃん。1本ちょうだい。支払いはカードね」
「あいよ」
出店でさえカードが導入されているなんて、便利な世の中である。串焼き肉を受け取り、頬張る。焼肉のタレが濃厚で美味しい。
「これだよこれ~やっぱ美味しいわ」
「ありがとな、坊ちゃん。また来てくれ」
「こちらこそ。また来るわ」
串焼き肉を食べた後は焼きそばを食べて、甘いものが食べたくなってきたのでカフェに向かうことにした。食べてばかりである。
「食欲そそる良い街~~」
ルンルン気分で歩いていたら、後ろから、「αとΩは今すぐ此処から離れろ!」と叫び声が聞こえた。
その瞬間に、密かに感じた匂いに強い危機感を覚え、常時携帯しているΩ用抑制剤を右手で持ち、左の腕に注射した。
「嘘だろ、こんな街中で...」
どうやら、何処かのαとΩがヒートになったらしい。この時代、ヒートにならないように薬で管理できるようになっているのに。
ともかくこの場を離れなければ、と思いながら、ヒートになったαとΩの位置を確認して二度見した。よく見ると、そのΩの前に紀本がいた。
Ωのほうは荒い呼吸で地面に座り込んでいて、紀本は尋常じゃない様子であり、必死に周りが紀本を押さえ込んでる。
「くそったれ!」
大声で紀本を罵りながら、紀本の元へ向かい、紀本のズボンのポケットを漁って見つけたα用抑制剤を紀本の右腕に打った。
即効性があるものなのに、効いた様子がない。
「嘘だろ、もしかして運命の番か」
どうしようもなくて意識を刈り取った。近くに居た人に手伝ってもらって、紀本を連れてタクシー乗り場まで行き、急いでタクシーへ乗り込む。
「死ぬほど迷惑~~~‼︎‼︎」
叫ばずにはいられない心境だった。
***
紀本を紀本家へ捨てて...置きに行き、状況を説明した後、家へとそのまま帰った。
紀本家がなんとかするだろ、と思ったのもあるし、もし運命の番が紀本に現れたということが確認されたら、この婚約は解消されるに違いないと思ったからだ。
前の婚約者は居座るべきではない。
今すぐ全力でこの婚約者の席を譲るので、早く確認してほしい。
紀本と婚約して一年。憂鬱だった日々に終わりが見えてきて、少し涙ぐんだ。
それよりも目先の問題がある。紀本のヒートに少し当てられたことだ。
抑制剤は打ったが、タクシーという狭い空間に一緒にいたせいで当てられた。
自室になんとか避難したが、頬が熱ってきたし、体も熱い。軽く当てられただけでここまでの被害とは最悪である。
「ああ、クソ‼︎‼︎紀本のヤロウ‼︎‼︎」
叫ばずにはおられない。自分を慰めるにしても他の人のことを考えたいのに、怒りでつい紀本のことを考えてしまう。
「...ッ」
「ぁあ~~マジか...最悪...この世の終わり...」
紀本のことを考えながら、自分を慰める羽目になるとは思わなかった。不本意すぎる。腹が立って仕方なくて、床に枕を放り投げた。八つ当たりである。
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