小話まとめ(bl)

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好きが尊ばれる世界で嫌いを尊ぶ

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 小さい頃に近所の兄ちゃんに恋心を抱いたのが悪夢の始まりだった。

 兄ちゃんを純粋に慕うだけの時は楽しかった。会えれば嬉しいし心が弾んで仕方なくて、この世の幸せを詰め込んだような素敵な世界で生きていた。

 でも、そんなのただのまやかしだった。

 兄ちゃんは俺を見ていない。俺は俺で兄ちゃんを一方的に好きで、兄ちゃんは兄ちゃんで俺の姉貴を一方的に好きだった。

 兄ちゃんが見る俺は"姉貴の弟である俺"でしかない。俺はただのオマケ以下の存在だった。

 俺は俺で兄ちゃんにアピールすることに必死で、兄ちゃんは兄ちゃんで姉貴にアピールすることに必死だった。

 視線の行き先が交わらないことが、こんなに自分を惨めな気持ちにさせて、こんなにも虚しくさせるなんて知りたくなかった。

『片思いをしている時が一番楽しい』なんて、何処かで聞いた時はキレそうになった。
 何が楽しいんだ。相手はどうやったってこっちを見ないし、ゴミのように溜まっていく恋心を掃き溜めに捨てることさえ上手くできない。

 他の人間と交わっても何の意味もなくて、それこそ生産性がないのに虚しさを埋める何かが欲しくなるなんて。

 どんどん素行が悪くなる俺を兄ちゃんは心配してくれた。それにまた心がときめいて死にたくなった。

 酷い言葉が口から出ていく。考えたこともなかったような言葉が。

 何処かで聞いた罵詈雑言をそのまま再生してるような、本当に無価値な言葉なのに相手を傷つける言葉が。

 兄ちゃんに傷ついてほしいとも思ってないのに、言葉が後から後から垂れ流された。口までゴミになったなんて笑えない。

 転げ落ちるように何一つ上手くいかないし、意味がないのに何処かに救いを求めてる。

 酷い言葉を吐き続ける俺に、段々と嫌悪の感情が目に宿っていくのにそれでも兄ちゃんは構い続ける。

 "姉貴の弟である俺"だから。

 いつまで経ってもどんな姿でどんなことをしたって、俺は俺として見られないことに変な笑いが出た。

 俺のことが嫌いな癖に優しくするこいつが嫌いで好きで本当に嫌いでどうしようもなかった。

 俺のことが嫌いだって顔を見るとイライラするし腹が立つし、俺だってお前が嫌いだ!って声にさえ出してしまうのに。

 嫌いな俺さえ姉貴のためなら見捨てられない兄ちゃんの顔を見ると、酷く自分が惨めになる。

 嫌いなら嫌いなままの方がずっと楽で、早く永遠に嫌いになれたらと思ってる。
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