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大遅刻のエイプリルフール

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「あのさもう別れよ?飽きちゃった」

 いつもより崩した言葉で言ったこの言葉は、彼にどう聞こえたのだろう。

 エイプリルフールから数日経っているけれど、まだ、嘘をつく免罪符は有効だと自分に言い聞かせないとこの言葉を口に出すことが出来なかった。

 目の前で驚いた顔をしている彼とは幼い頃からの付き合いがある。

 ある日、木登りをしていた彼が落ちてきて咄嗟に助けたときに私が骨を折ったことから始まった歪な関係。

 彼はあの日から異様に私が怪我をするのを恐れるようになった。後遺症もなく怪我一つ残っていないと何度言っても伝わらないのだ。

 幼馴染という関係から、守護する者と守護される者。最終的には何故か恋人という関係になったが、それも今日で終わりにしなければ。

「...なんで?俺なんかしちゃった?」
「そういうのじゃない。もう別れたくなっただけ」
「俺は別れたくない」
「私は別れたい。私はお前のこともう好きじゃない」
「俺は好きだよ、側に居たい。別れたくないよ」

 目の前で泣きそうな顔をする彼の言葉に嘘はないのだろう。私のことを本当に好きだし側に居たいと思ってる。別れたくないとも思ってる。

 でも、それが恋心じゃないことに気づいていないだけなのだ。

「幼馴染の関係に戻ろう」
「俺の恋人のままじゃ嫌なの?」
「幼馴染って関係の方が好きなんだよ」
「恋人の方が良いじゃん」

 駄々を捏ねる彼に先程までの決意は瓦解し、もうそれでもいいかなって気分になる。私は充分過ぎるほどに彼に対して義理を果たしたのではないか。

 彼が無意識に見つめる存在がいること、その時に今まで見たことないような熱の篭った目をしていること。

 本人が気づかないうちに恋をしていることに気づいたことに対して、忘れたフリ、見なかったフリ。

「...嘘だよ。エイプリルフール思い出したから言ってみただけ」
「なんだそれ!エイプリルフールから数日経ってんじゃん!」
「ごめん、許してくれる?」
「許すから、2度としないで」
「うん、分かった」

 そういうと安心した様子の彼を見て、私は卑怯にも彼の恋を気づかなかったフリをすることにした。

「大好きだよ」
「本当に俺が好きだな」
「へへ、本当に大好きなんだから」

 嬉しそうに抱きしめられて、何だか泣きそうになった。彼の恋が日の目を見ないうちは、この交わらない平行線な感情を持て余すことにした。


________________________

ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございます。

皆様はエイプリルフール、いかがお過ごしだったでしょうか?

この小説の『大遅刻のエイプリルフール』というタイトル。実はこのタイトルを使いたくてこの話を書きました。

毎年、エイプリルフールを過ぎてからエイプリルフールに気づくので開き直って大遅刻を付けました笑

主人公は彼に対して永遠に恋をするし、彼は主人公に対して永遠に守る者としての愛を捧げる。

お互いに愛はあるけど、愛に違いがあるからずっと平行線であるというお話でした。

片想いじゃないのに片想いしてるから、主人公は永遠に恋心を捨てることも実らせることも出来ません。

主人公は恋が実ってからお互いに愛を育んでいくことで恋愛感情が落ち着いて、家族愛にシフトするタイプです。

家族愛になればお互いに良い関係が築けるけれど、それは難しいので年々と恋愛感情を拗らせていく...という展開が今、思いつきました。
後付け設定ですがこういう展開も好きなので、いつか書けたら嬉しいなと思います。

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