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1 警視庁島流し
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朝のコンビニが混むのはいつものことだ。
が、自分の番になったところでレジが故障するのは、いつものことでは決してない。
「釣りはいらん!」
山城は千円札を一枚、レジカウンターにたたきつけて、あんパンと缶コーヒーを掴んでコンビニを出た。
急いでいるのだ。とにかく時間がない。
寝坊した山城の自業自得だが、そこはどうこう言っても現状は変わらないから棚上げだ。時間がない。それが事実。
自宅最寄りのコンビニから職場まで、普段なら電車を使って三十分ほどの距離である。
だが、とにかく急ぐというのなら、直線距離を走って行くのが一番早い。仕事前に疲れるのが嫌だからやらないが、今朝は別だ。
まっすぐ走る。突っ走る。体力には自信がある。
山城はあんパンの袋を破いてポケットに突っ込み、中身をくわえた。
大きくひとくち、もぐもぐもぐ。
遅刻寸前の窮地であっても、腹が減っては戦はできない。マラソンランナーがバナナを食って走るように、あんパンは山城のエネルギーになる。
自分の袖口、ちらっと見えた腕時計の針は恐ろしい時間を示していた。
「ぐぁああ! 遅刻遅刻っ!」
パンをくわえたまま走る者が吠えるには、これ以上相応しいセリフはないぞ。と、どこか冷静な頭の奥で自分を評価しつつ、山城は角を曲がった。
見えたのはトラック、四トン車だ。はっきり、運転手と目があった。
派手なクラクションが生活道路に響き渡る。
次の瞬間、山城が感じたのは衝撃と、水だった。
「あぶねぇなあっ! ナンバー覚えたかんなぁっ!」
山城が遠ざかっていくトラックに向かって吠えたところで現実は待ってくれない。
頭の天辺から太股あたりまでびしょ濡れになった山城のあんパンはもう帰らない。クリーニングから返ってきたばかりのスーツもだ。
明け方まで降っていた雨の名残の水たまりとトラックのコンビネーションアタックの前にはあまりにも無力だった。
水ハネと汗とでずぶ濡れになり、息を切らして、ようやく桜田門に辿り着いたのは始業ぎりぎりの時間だった。
警視庁刑事部捜査一課が山城の職場だ。
刑事の勤務時間は不規則になりがちだが、大きな事件に関わっていなければ朝七時半には出勤することになっている。もっと早く出て、柔剣道場で鍛錬に励む者も少なくないが、生憎、山城は武闘派ではない。
冷静沈着な頭脳派敏腕警部補、それが山城清澄という男なのだ。
ちなみに、本来の始業定時は八時半であるが、。
捜査一課の大部屋のドアに手を掛けると、話し声が耳に入った。
「や、も、びっくりっしょ。突然だし、季節外だし」
平野の声だ。
「ついにやらかしたかね、クロさん」
「『俺のカンに間違いはねーんだよ!』って、つっ走っちゃうヒトですしねー」
「確かに当たると大きいけど、いつもギリギリのクロさんだしなぁ。そのうち訴えられるだろうとは思ってたんだが」
偉そうなことを言っているのは同僚の古参刑事達だ。第四強行犯捜査殺人犯捜査第6係での山城は中堅。いわゆるノンキャリ組が昇進試験を受ける条件に勤続年数があるから、階級が同じでも年次が上のヤツの方が上だ。
山城は鼻をひとつ鳴らしてドアを開けた。
通常、山城の城の字から『シロさん』と呼ばれるが、陰では『クロさん』と嘲られているのは知っている。
組織が強固であればあるほど、噂話や陰口は増える。慣れたものだ。出る杭は打たれる。むしろ、自分がいないところで謗られるのは能力がある証と言える。
「……あ、おはよっす、シロさん」
目が合った途端、気まずそうに平野が言った。噂話の相手はさっさと逃げ去っていった。
チキン野郎共はどうでもいい。
気になるのは、ざわついているはずの捜査一課の大部屋がしんと静まりかえったことだ。皆の視線が自分に集まっているのは、濡れネズミの酷い有様だからという訳ではないだろう。
とりあえず一番濡れた上着は脱いだし、ギリギリ買えたタオルを首に掛けている。その辺にうようよしている、ちょっとがんばったランナーくらいの見た目のはずだ。
「つか、今朝は遅かったっすね」
平野が取りなすように言葉をつないだ。
山城は鼻頭に皺を寄せて、平野を睨みつけた。
「寝坊して、機種変したばっかのスマホを便ポチャして、車にひかれそうになってずぶ濡れになったんだよ」
「便ポチャ? あ、便器にポチャン」
「うるせぇ復唱すんな。……で? 何だよ、この空気」
白けたような、憐れむような。そういう居たたまれない視線が山城に集まっているのは間違いない。
「辞令、知らないんすか? シロさんの席、6係にはもうないっすよ」
「辞令? 俺?」
山城は慌てて、自分のデスクに駆け寄った。捜査一課各係は大部屋にそれぞれの島を作って机を配置している。山城のデスクはもちろん、6係にあった。あったはずだった。
「……ない」
机の上はまっさらで何もなく、据え付けの内線電話しか残っていない。引き出しの中身も空っぽだった。
「おい、これ、どういうことなんだよ!」
ついてきた平野の胸ぐらを掴んで吠えると、係長の宮下がデスクから立ち上がった。
「うるさいぞ、山城。ついてこい」
「え? 係長、え? どういう?」
「黙ってついてこい」
警察組織は基本、年功序列だ。上位者からの指示には逆らいにくい。山城は不貞腐れて宮下の後ろを歩くしかなかった。
辿り着いたのは、刑事部長室だった。刑事部長というのは文字通り、刑事部のトップのことである。警視庁内でも指折り偉い職位だ。
「失礼します」
ドアを叩いて宮下が言った。
山城が刑事部長に呼ばれることは滅多になかったが、呼び出されると碌なことではなかった。大体、叱責か罵倒か痛罵か譴責か大目玉だ。
心当たりはないこともないが、昨日今日、叱られるようなことはなかったと思いたかった。
「入りたまえ」
ドアの向こうから声がして、宮下がノブを回した。
開いた室内、応接セットに男が三人いた。ドアに近い下座の席に戸田捜査一課長、その隣に三井刑事部長、一番上座には若い男が座っている。
見るからに高級そうなスーツを着た、少女の夢に出てきそうなとんでもないイケメンだ。睫毛ビシバシ、色白、通った鼻筋。滅多に見かけないようなイケメンである。座っているけど背は高そうだ。足がなんか、めちゃくちゃに長い。
山城はその男に覚えがあった。
「おはようございます、刑事さん」
山城に気がついた男が言った。
「お前は昨日のっ!」
刑事部長のことも、捜査一課長のことも、係長のことも頭から吹っ飛ばし、山城は男を指さした。
「貴様、角鹿先生に向かってなんて口の利き方をする! わきまえなさいっ!」
当の男より先、三井刑事部長が大声をあげた。怒鳴られるのには慣れているから、山城は怯まない。むしろ、三井の言葉のほうが気になった。
「は? 先生? こいつがですか」
「角鹿クラウド先生だ」
「名刺は昨日、お渡ししましたね」
三井の紹介を受けて、男、角鹿クラウドが言った。
そうだったと思い出し、山城はズボンの尻ポケットから手帳を引っ張り出した。いつも上着の内ポケットにいれてある手帳は、山城本体とともに水浸しになってふやけている。
無論、挟んであった名刺もぶよぶよだった。
「いんようし、つのがクラウド」
名刺を読み上げると、クラウドがやれやれと言わんばかりに首を横に振った。
「陰陽師、角鹿クラウドです」
「先生は山城をご存じでしたか」
「昨日少し」
見たこともないほど丁重な言葉使いで、三井がクラウドに話しかけた。クラウドが女が腰砕けになりそうな笑顔で応じる。
「スカしやがって、この野郎。……てめぇ、俺に何した」
「私の言葉が正しかったことをご理解いただけたようですね」
クラウドは余裕の笑みを崩さない。
山城は思いきり顔を顰めた。
認めたら負けな気がする。
「とにかくだ、山城。今日からお前は角鹿先生のお世話係だ。いいな」
三井が選手宣誓みたいに声を張り上げた。
「詳しいことは特命捜査8係で聞くように」
戸田が付け足す。
「は? 8係なんてありましたっけ?」
思わず口にした疑問に、宮下が小さく頷いた。
「新設だ。山城、お前は今日から8係だ」
部長課長係長。雁首揃えた強面と余裕綽々のイケメンを前に、山城には言葉もなかった。
が、自分の番になったところでレジが故障するのは、いつものことでは決してない。
「釣りはいらん!」
山城は千円札を一枚、レジカウンターにたたきつけて、あんパンと缶コーヒーを掴んでコンビニを出た。
急いでいるのだ。とにかく時間がない。
寝坊した山城の自業自得だが、そこはどうこう言っても現状は変わらないから棚上げだ。時間がない。それが事実。
自宅最寄りのコンビニから職場まで、普段なら電車を使って三十分ほどの距離である。
だが、とにかく急ぐというのなら、直線距離を走って行くのが一番早い。仕事前に疲れるのが嫌だからやらないが、今朝は別だ。
まっすぐ走る。突っ走る。体力には自信がある。
山城はあんパンの袋を破いてポケットに突っ込み、中身をくわえた。
大きくひとくち、もぐもぐもぐ。
遅刻寸前の窮地であっても、腹が減っては戦はできない。マラソンランナーがバナナを食って走るように、あんパンは山城のエネルギーになる。
自分の袖口、ちらっと見えた腕時計の針は恐ろしい時間を示していた。
「ぐぁああ! 遅刻遅刻っ!」
パンをくわえたまま走る者が吠えるには、これ以上相応しいセリフはないぞ。と、どこか冷静な頭の奥で自分を評価しつつ、山城は角を曲がった。
見えたのはトラック、四トン車だ。はっきり、運転手と目があった。
派手なクラクションが生活道路に響き渡る。
次の瞬間、山城が感じたのは衝撃と、水だった。
「あぶねぇなあっ! ナンバー覚えたかんなぁっ!」
山城が遠ざかっていくトラックに向かって吠えたところで現実は待ってくれない。
頭の天辺から太股あたりまでびしょ濡れになった山城のあんパンはもう帰らない。クリーニングから返ってきたばかりのスーツもだ。
明け方まで降っていた雨の名残の水たまりとトラックのコンビネーションアタックの前にはあまりにも無力だった。
水ハネと汗とでずぶ濡れになり、息を切らして、ようやく桜田門に辿り着いたのは始業ぎりぎりの時間だった。
警視庁刑事部捜査一課が山城の職場だ。
刑事の勤務時間は不規則になりがちだが、大きな事件に関わっていなければ朝七時半には出勤することになっている。もっと早く出て、柔剣道場で鍛錬に励む者も少なくないが、生憎、山城は武闘派ではない。
冷静沈着な頭脳派敏腕警部補、それが山城清澄という男なのだ。
ちなみに、本来の始業定時は八時半であるが、。
捜査一課の大部屋のドアに手を掛けると、話し声が耳に入った。
「や、も、びっくりっしょ。突然だし、季節外だし」
平野の声だ。
「ついにやらかしたかね、クロさん」
「『俺のカンに間違いはねーんだよ!』って、つっ走っちゃうヒトですしねー」
「確かに当たると大きいけど、いつもギリギリのクロさんだしなぁ。そのうち訴えられるだろうとは思ってたんだが」
偉そうなことを言っているのは同僚の古参刑事達だ。第四強行犯捜査殺人犯捜査第6係での山城は中堅。いわゆるノンキャリ組が昇進試験を受ける条件に勤続年数があるから、階級が同じでも年次が上のヤツの方が上だ。
山城は鼻をひとつ鳴らしてドアを開けた。
通常、山城の城の字から『シロさん』と呼ばれるが、陰では『クロさん』と嘲られているのは知っている。
組織が強固であればあるほど、噂話や陰口は増える。慣れたものだ。出る杭は打たれる。むしろ、自分がいないところで謗られるのは能力がある証と言える。
「……あ、おはよっす、シロさん」
目が合った途端、気まずそうに平野が言った。噂話の相手はさっさと逃げ去っていった。
チキン野郎共はどうでもいい。
気になるのは、ざわついているはずの捜査一課の大部屋がしんと静まりかえったことだ。皆の視線が自分に集まっているのは、濡れネズミの酷い有様だからという訳ではないだろう。
とりあえず一番濡れた上着は脱いだし、ギリギリ買えたタオルを首に掛けている。その辺にうようよしている、ちょっとがんばったランナーくらいの見た目のはずだ。
「つか、今朝は遅かったっすね」
平野が取りなすように言葉をつないだ。
山城は鼻頭に皺を寄せて、平野を睨みつけた。
「寝坊して、機種変したばっかのスマホを便ポチャして、車にひかれそうになってずぶ濡れになったんだよ」
「便ポチャ? あ、便器にポチャン」
「うるせぇ復唱すんな。……で? 何だよ、この空気」
白けたような、憐れむような。そういう居たたまれない視線が山城に集まっているのは間違いない。
「辞令、知らないんすか? シロさんの席、6係にはもうないっすよ」
「辞令? 俺?」
山城は慌てて、自分のデスクに駆け寄った。捜査一課各係は大部屋にそれぞれの島を作って机を配置している。山城のデスクはもちろん、6係にあった。あったはずだった。
「……ない」
机の上はまっさらで何もなく、据え付けの内線電話しか残っていない。引き出しの中身も空っぽだった。
「おい、これ、どういうことなんだよ!」
ついてきた平野の胸ぐらを掴んで吠えると、係長の宮下がデスクから立ち上がった。
「うるさいぞ、山城。ついてこい」
「え? 係長、え? どういう?」
「黙ってついてこい」
警察組織は基本、年功序列だ。上位者からの指示には逆らいにくい。山城は不貞腐れて宮下の後ろを歩くしかなかった。
辿り着いたのは、刑事部長室だった。刑事部長というのは文字通り、刑事部のトップのことである。警視庁内でも指折り偉い職位だ。
「失礼します」
ドアを叩いて宮下が言った。
山城が刑事部長に呼ばれることは滅多になかったが、呼び出されると碌なことではなかった。大体、叱責か罵倒か痛罵か譴責か大目玉だ。
心当たりはないこともないが、昨日今日、叱られるようなことはなかったと思いたかった。
「入りたまえ」
ドアの向こうから声がして、宮下がノブを回した。
開いた室内、応接セットに男が三人いた。ドアに近い下座の席に戸田捜査一課長、その隣に三井刑事部長、一番上座には若い男が座っている。
見るからに高級そうなスーツを着た、少女の夢に出てきそうなとんでもないイケメンだ。睫毛ビシバシ、色白、通った鼻筋。滅多に見かけないようなイケメンである。座っているけど背は高そうだ。足がなんか、めちゃくちゃに長い。
山城はその男に覚えがあった。
「おはようございます、刑事さん」
山城に気がついた男が言った。
「お前は昨日のっ!」
刑事部長のことも、捜査一課長のことも、係長のことも頭から吹っ飛ばし、山城は男を指さした。
「貴様、角鹿先生に向かってなんて口の利き方をする! わきまえなさいっ!」
当の男より先、三井刑事部長が大声をあげた。怒鳴られるのには慣れているから、山城は怯まない。むしろ、三井の言葉のほうが気になった。
「は? 先生? こいつがですか」
「角鹿クラウド先生だ」
「名刺は昨日、お渡ししましたね」
三井の紹介を受けて、男、角鹿クラウドが言った。
そうだったと思い出し、山城はズボンの尻ポケットから手帳を引っ張り出した。いつも上着の内ポケットにいれてある手帳は、山城本体とともに水浸しになってふやけている。
無論、挟んであった名刺もぶよぶよだった。
「いんようし、つのがクラウド」
名刺を読み上げると、クラウドがやれやれと言わんばかりに首を横に振った。
「陰陽師、角鹿クラウドです」
「先生は山城をご存じでしたか」
「昨日少し」
見たこともないほど丁重な言葉使いで、三井がクラウドに話しかけた。クラウドが女が腰砕けになりそうな笑顔で応じる。
「スカしやがって、この野郎。……てめぇ、俺に何した」
「私の言葉が正しかったことをご理解いただけたようですね」
クラウドは余裕の笑みを崩さない。
山城は思いきり顔を顰めた。
認めたら負けな気がする。
「とにかくだ、山城。今日からお前は角鹿先生のお世話係だ。いいな」
三井が選手宣誓みたいに声を張り上げた。
「詳しいことは特命捜査8係で聞くように」
戸田が付け足す。
「は? 8係なんてありましたっけ?」
思わず口にした疑問に、宮下が小さく頷いた。
「新設だ。山城、お前は今日から8係だ」
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