【完結】子爵家の四女として生まれたキーラ。元家族はとんでもない人たちでした。

春風由実

文字の大きさ
11 / 17

11.元お姉さまたちも、とんでもない方々でした。 キーラ編

しおりを挟む
 義兄ローレンスが優しくもぐいぐいと手を引いているけれど。
 キーラは立ち止まって、声がした方を眺めた。

 若い女性が三人、同じソファーに並び座っている。
 しかしキーラには、姉だろうと予測がついても、彼女たちがどの姉かの判別は付かなかった。


「あなただけ素敵なお兄さまがいて羨ましいわ。私たちにも紹介してちょうだい?」


 一人の女性が言った。
 たった今聞いた声とは違っていたから、先ほどキーラに待てと言ったのは、この女性ではないようだ。


「そうよ。それにあなたのお兄さまなら、私たちのお兄さまにもなるわ。挨拶をさせてちょうだい?」


 これもまた、待てと言った女性とは違う声だった。
 するともう一人が、退室しようとするキーラを止める発言をした女性なのだろう。

 
 キーラは彼女たちに少しは似ているかしら?という思いで、ローレンスを見上げたが。
 ローレンスは優しく微笑むばかりで、何も伝わっていないことを悟る。


「お姉さまたちは弟でしょう?彼の方が年下よ?」


「あなたも彼よりひとつ上でしょう?」


「ひとつくらいは変わらないわよ。お姉さまたちとは違うの」


「嫌ね。あなたはすぐ私たちを年上扱いして。あの子のお兄さまなんだから、全員のお兄さまでいいでしょう?」


 養子先で妹に兄が出来たら、元の家族にとっても兄?
 そんな理屈があるだろうか。

 キーラは教わったことのない話に首を傾げていたが、彼女たちのお喋りが止まらず、疑問を重ねていくことになった。



「お姉さまたちこそ嫌だわ。私と結婚しても彼は弟よ?年齢を自覚してちょうだい」


「まぁ、結婚するのがあなたとは限らないでしょう?」


「お姉さまたちでは年上過ぎるわ。私で決まりよ」


「あら?最近は年上女房というのが流行っているのよ?その方が夫婦仲良く暮らせるのですって。知らないの?」


 勝手にお喋りを続ける三人娘が、貴族家の令嬢として教育を受けてきたキーラにはとても信じられなかった。

 おかげで姉たちにも何の想いも抱けず、安堵したキーラはローレンスを見上げ頷く。
 もう出ましょう、という合図だ。

 そこにちょうど、義父ウェーバー侯爵から二人に声が掛かった。


「発表前に無関係の者たちに告げたくはないのだがね。煩わしいことこの上ない。良いな?」


 キーラが先に頷いたことを確認してから、ローレンスは言った。


「それなら私が自分で言います。いいよね、キーラ?」


「えぇ、隠すことではありませんし構いませんわ。いずれは知られることですもの」


 ローレンスがぎゅっと握りしめた手を、キーラは笑顔で握り返した。
 するとローレンスの頬が一度すっかり緩んだが、ローレンスは厳しい顔付きを作ると、エンデベルク子爵家の者たちを見て言った。


「私はまもなくキーラと結婚します。キーラは一度この家から籍を抜きますが、親類の家の養女となりますので、エンデベルク子爵家とは変わらず無関係のままです。したがって結婚後も、我々にはエンデベルク子爵家と交流する気はありません」


 ローレンスはきっぱりと言い切ったが、最後まで真面に聞けていたかどうか。


「結婚だと!」

「結婚ですって!」


 エンデベルク子爵夫妻の驚きの声に、三人娘の声も重なった。


「嘘よ!」

「そんな!」

「酷いわ!」


 驚くにしても、最後の酷いという言葉はなんだろうか?とキーラはまた首を傾げる。

 その間もエンデベルク子爵家は話し続けた。


「親に相談もなく結婚を決めたというのか?」


「あなた、予定が狂うわよ。止めないと」


「さすがに兄妹での結婚はどうなのかしら?」


「お兄さまと呼んでいる方と結婚なんて気持ちが悪くてよ」


「酷いわ。酷い裏切りだわ!」


 義両親、義兄から冷ややかな視線を受けようと、一向にお喋りを止めようとしないエンデベルク子爵家の者たちを眺めて。
 親がこうだから、娘たちもこうなのだと、キーラは感じ取った。
 
 子どもにとっては、常に側にいる存在、育ての親の方が大事なのかもしれない。


 これは将来の参考になっているかしら?
 今日会うことにした目的を思い出して、キーラは考える。


 そのうち、三人娘が怒り出した。


「何よ何よ、私だって保護されたかったわ!あの子ばかり幸せで狡い!」


「そうよ。保護されていたのが私だったら、私がそこにいたはずなのに!」


「まぁ、あなたたち。あまり騒いではいけないわ。まだ分からないわよ?」


「え?」

「え?」

「え?」


 二人の娘の声のあと、キーラも続いて声が出た。そうすると、確かに姉妹のようだ。


「女性と交流されてこなかったと聞いているわ。側にいたその子しか知らないのでしょう?ねぇ、妹のお兄さま。私たちとも仲良くしてみませんこと?妹が気に入ったのですもの、私たちを知ればもっと良く思うかもしれなくてよ?」


 驚いたキーラがローレンスの手をぎゅうっと握り締めれば、ローレンスは蕩ける笑みを見せ、空いた手でキーラの頬を撫でていく。

 きゃあっと重なる声がしたが、ローレンスはそちらを見なかった。






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】逃がすわけがないよね?

春風由実
恋愛
寝室の窓から逃げようとして捕まったシャーロット。 それは二人の結婚式の夜のことだった。 何故新妻であるシャーロットは窓から逃げようとしたのか。 理由を聞いたルーカスは決断する。 「もうあの家、いらないよね?」 ※完結まで作成済み。短いです。 ※ちょこっとホラー?いいえ恋愛話です。 ※カクヨムにも掲載。

【完結】初夜の晩からすれ違う夫婦は、ある雨の晩に心を交わす

春風由実
恋愛
公爵令嬢のリーナは、半年前に侯爵であるアーネストの元に嫁いできた。 所謂、政略結婚で、結婚式の後の義務的な初夜を終えてからは、二人は同じ邸内にありながらも顔も合わせない日々を過ごしていたのだが── ある雨の晩に、それが一変する。 ※六話で完結します。一万字に足りない短いお話。ざまぁとかありません。ただただ愛し合う夫婦の話となります。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載中です。

【完結】捨てたものに用なんかないでしょう?

風見ゆうみ
恋愛
血の繋がらない姉の代わりに嫁がされたリミアリアは、伯爵の爵位を持つ夫とは一度しか顔を合わせたことがない。 戦地に赴いている彼に代わって仕事をし、使用人や領民から信頼を得た頃、夫のエマオが愛人を連れて帰ってきた。 愛人はリミアリアの姉のフラワ。 フラワは昔から妹のリミアリアに嫌がらせをして楽しんでいた。 「俺にはフラワがいる。お前などいらん」 フラワに騙されたエマオは、リミアリアの話など一切聞かず、彼女を捨てフラワとの生活を始める。 捨てられる形となったリミアリアだが、こうなることは予想しており――。 ※他サイト様にも載せています。

【完結】虐げられて自己肯定感を失った令嬢は、周囲からの愛を受け取れない

春風由実
恋愛
事情があって伯爵家で長く虐げられてきたオリヴィアは、公爵家に嫁ぐも、同じく虐げられる日々が続くものだと信じていた。 願わくば、公爵家では邪魔にならず、ひっそりと生かして貰えたら。 そんなオリヴィアの小さな願いを、夫となった公爵レオンは容赦なく打ち砕く。 ※完結まで毎日1話更新します。最終話は2/15の投稿です。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い

腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。 お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。 当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。 彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。

忘れ去られた婚約者

かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』 甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。 レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。 恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。 サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!? ※他のサイトにも掲載しています。 毎日更新です。

【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。

櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。 夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。 ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。 あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ? 子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。 「わたくしが代表して修道院へ参ります!」 野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。 この娘、誰!? 王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。 主人公は猫を被っているだけでお転婆です。 完結しました。 小説家になろう様にも投稿しています。

結婚して3年経っても子供ができないという理由で離縁されたエマは、前世の記憶を思い出して幸せになる。周りが勝手に復讐してくれました。

山田 バルス
恋愛
 結婚三年目の春、エマは伯爵家の夫アンドレオから突然、側室を迎える話を告げられる。子をなせなかったことを理由に、彼女は僅かな補償のみで離縁された。妻として過ごした三年間は「無価値だった」と突きつけられ、エマは貴族社会から静かに切り捨てられる。  また実家の父母の墓参りに行くと、当主になっていた兄に離縁金を奪われてしまう。  大ピンチのエマには、秘密があった。なんと彼女は幼少期に前世の記憶を思い出していたのだ。  かつて観光地で石を磨き、アクセサリーを作り、人に喜ばれる仕事をしていた人生。何も持たない今だからこそ、もう一度「自分の手で生きる」ことを選び、あの人が住む商業国家スペイラ帝国へ向かう決意をする。  国境への道中、盗賊に襲われるが、護衛兵ロドリゲスの活躍で難を逃れる。彼の誠実な態度に、エマは「守られる価値のある存在」として扱われたことに胸を打たれた。  スペイラ帝国では身分に縛られず働ける。エマは前世の技術を活かし、石を磨いてアクセサリーを作る小さな露店を始める。石に意味を込めた腕輪やペンダントは人々の心を掴み、体験教室も開かれるようになる。伯爵夫人だった頃よりも、今の方がずっと「生きている」と実感していた。  ある朝、ロドリゲスが市場を訪れ、エマの作ったタイガーアイの腕輪を購入する。ところがその夜、彼は驚いた様子で戻り、腕輪が力を一・五倍に高める魔道具だと判明したと告げる。エマ自身は無意識だったが、彼女の作るアクセサリーには確かな力が宿っていた。  後日二人は食事に出かけ、エマは自分が貴族の妻として離縁された過去を打ち明ける。ロドリゲスは強く憤り、「最悪な貴族だ」と彼女と一緒になって怒ってくれた。その気持ちが、エマにとって何よりの救いだった。彼は次に防御力を高める腕輪を依頼し、冒険者ギルドで正式な鑑定を受けるよう勧める。  翌日、冒険者ギルドで鑑定を行った結果、エマの腕輪は高い防御効果を持つことが判明。さらに彼女自身を鑑定すると、なんと「付与特化型聖女」であることが明らかになる。聖女が付与した魔道具は現実の力として強く発現するのだ。  価値がないと切り捨てられた人生は、ここでは確かな力となった。スペイラ帝国で、聖女エマの新しい人生が、静かに、そして輝かしく始まる。

処理中です...