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14.議長様、お忘れのことがございますよ?
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公爵様が仰いました通り、議長様はこの国の第五王子殿下です。
つまりはあの王女殿下の兄上様でいらっしゃいます。
王女殿下をお守りするために、今日はわざわざ議長席に座られているのだと思っておりましたけれど。
公爵様のこの慌て様を拝見するに、私の考えてきたことはすべて間違いである可能性が生じました。
先が読めるまで余計な発言はせずに、事態を見守ることに致します。
「バウゼン公爵殿は、どうしても私をこの場の議長としては認めたくないようだ」
ゆらりと立ち上がった議長様を見て、私はほっと胸を撫で下ろしました。
けれども取られていた手が離れていきません。
あのぅ?手のことをお忘れではございませんか?
議長様は一度こちらを見てにこりと微笑まれましたが、また公爵様へと向き直りました。
いえ、ですからお手を……。
「でん……議長様、私には決してそのような想いはございません。つい普段から慣れた呼び方が出てしまっただけなのです。議長様には大変失礼をいたしました」
「ふむ。まぁ、良いだろう」
議長様も先まで議長らしくないことをされていたのですから何も言えないような……と私は不敬なことを考えておりまして。
公爵様がほっと顔を緩ませていたのは束の間のこと。
「堂々と不敬とし咎めていいと言うのだからな」
「は?」
公爵様だというのに、貴族らしい振舞い方を忘れてしまったのでしょうか。
この公爵様にしてあのご令息様あり、と私は改めて考えているのでした。
「馴れ馴れしく王子と呼んだのは、公爵殿ではないか。罪に問えということだろう?」
「……はて。殿下は何を仰っているのか」
「長く公爵の座にありながら、そんなことも聞かねば分からぬと言う気なのか?」
「は……て、申し訳ありませんが、私のようなものには、王子殿下の尊きお考えはとても簡単には理解出来ぬものにございまして」
上手いこと返せたという御顔をされておりますけれど、それはどうでしょう?
「貴族として当然のことに尊さを求められても困るが。長く話す気はないから、この場は説明してやろう。私は議長としても、ましてや王子としても、お前に発言を許した覚えはない」
「あ……申し訳ありません。常々、忌憚のない発言を求められます議会の場にありましたので、ついいつも通りに議長様へと話し掛けてしまいまして」
忌憚のない発言を求められているとして、公爵様は普段から議長様の許可なく自由なご発言をされているということなのでしょうか?
次々と墓穴を掘っていることに、公爵様は気付いておられないようです。
「お前の普段の様子はよく分かった。して、先ほどからついついと繰り返しているが。お前は下の者がついうっかりと失言をした際に、いつも許してきたということだな?」
「え?は、はい。それはもう。失言くらいでしたら、公爵として寛大な処置を」
そんなことはございませんでしょう。
一度の失言を咎め、使用人を解雇にしていることは私も聞き及んでおりました。
議長様もご存知のうえで、公爵様に聞かれたのではないでしょうか?
だって、ほんの僅かでしたが。
公爵様のお答えを聞いた瞬間に、議長様の口角が上がっておられましたから。
「お前がどういう人間かよく分かった。すぐにでも公爵位を返上するといい。陛下には私からも伝えておく」
「は?」
その方がよろしいですよ、と私からも心よりお伝えしたい気持ちでいっぱいでした。
この方が公爵位にあり続けても、この国の不利益になる未来しか見えません。
つまりはあの王女殿下の兄上様でいらっしゃいます。
王女殿下をお守りするために、今日はわざわざ議長席に座られているのだと思っておりましたけれど。
公爵様のこの慌て様を拝見するに、私の考えてきたことはすべて間違いである可能性が生じました。
先が読めるまで余計な発言はせずに、事態を見守ることに致します。
「バウゼン公爵殿は、どうしても私をこの場の議長としては認めたくないようだ」
ゆらりと立ち上がった議長様を見て、私はほっと胸を撫で下ろしました。
けれども取られていた手が離れていきません。
あのぅ?手のことをお忘れではございませんか?
議長様は一度こちらを見てにこりと微笑まれましたが、また公爵様へと向き直りました。
いえ、ですからお手を……。
「でん……議長様、私には決してそのような想いはございません。つい普段から慣れた呼び方が出てしまっただけなのです。議長様には大変失礼をいたしました」
「ふむ。まぁ、良いだろう」
議長様も先まで議長らしくないことをされていたのですから何も言えないような……と私は不敬なことを考えておりまして。
公爵様がほっと顔を緩ませていたのは束の間のこと。
「堂々と不敬とし咎めていいと言うのだからな」
「は?」
公爵様だというのに、貴族らしい振舞い方を忘れてしまったのでしょうか。
この公爵様にしてあのご令息様あり、と私は改めて考えているのでした。
「馴れ馴れしく王子と呼んだのは、公爵殿ではないか。罪に問えということだろう?」
「……はて。殿下は何を仰っているのか」
「長く公爵の座にありながら、そんなことも聞かねば分からぬと言う気なのか?」
「は……て、申し訳ありませんが、私のようなものには、王子殿下の尊きお考えはとても簡単には理解出来ぬものにございまして」
上手いこと返せたという御顔をされておりますけれど、それはどうでしょう?
「貴族として当然のことに尊さを求められても困るが。長く話す気はないから、この場は説明してやろう。私は議長としても、ましてや王子としても、お前に発言を許した覚えはない」
「あ……申し訳ありません。常々、忌憚のない発言を求められます議会の場にありましたので、ついいつも通りに議長様へと話し掛けてしまいまして」
忌憚のない発言を求められているとして、公爵様は普段から議長様の許可なく自由なご発言をされているということなのでしょうか?
次々と墓穴を掘っていることに、公爵様は気付いておられないようです。
「お前の普段の様子はよく分かった。して、先ほどからついついと繰り返しているが。お前は下の者がついうっかりと失言をした際に、いつも許してきたということだな?」
「え?は、はい。それはもう。失言くらいでしたら、公爵として寛大な処置を」
そんなことはございませんでしょう。
一度の失言を咎め、使用人を解雇にしていることは私も聞き及んでおりました。
議長様もご存知のうえで、公爵様に聞かれたのではないでしょうか?
だって、ほんの僅かでしたが。
公爵様のお答えを聞いた瞬間に、議長様の口角が上がっておられましたから。
「お前がどういう人間かよく分かった。すぐにでも公爵位を返上するといい。陛下には私からも伝えておく」
「は?」
その方がよろしいですよ、と私からも心よりお伝えしたい気持ちでいっぱいでした。
この方が公爵位にあり続けても、この国の不利益になる未来しか見えません。
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