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157.とくべつなおくすり
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「彼らがあれほど迅速に暴走するとは。あなたも上手く指示を出したものだよ。おかげでこちらが対応を協議している間に、後手に回ることになってしまった」
実はあの事態にあって、レイモンドはこの新旧の王たちと王女の将来について取引めいた会話を交わしている。
レイモンドは別に、罰は与える気でいても、わざわざ出会った番同士を引き離したいとは思っていなかった。
本人もこれまで色々と良からぬ考えを持っていたとして、それを自分で実行したわけではなく、アルメスタとしてあの十年と同等の罪を王女に重ねる気もない。
しかし反省を促す機会として、また新王に王としての厳しさを育んで貰うため、この件はおおいに利用しようと考えた。ついでに先代王夫妻の再教育──。
だから王家とはあえてゆったり話を付けようではないか。
その間にあの王女も番を知りながら側にいられない苦しみを存分に経験するといい。
これがまさか遅れを取る理由となるとは──。
またアルメスタが反省するところであるが。
これほどアルメスタに監視された状態で、彼らが目立って動くとは思っていなかった。
それも彼らの慢心の結果だが、あそこまで彼らが怠惰に陥り、状況を見えていないとは気付けなかったのである。
実力を高く見積もり過ぎての失態が起ころうとは。
アルメスタを十年も出し抜けた、そういう彼らの実績に、目が眩んだ事実は、攻勢に変わった後のアルメスタの反省点。
特に研究所に勤める彼らは、隠密活動とは長く無縁で、そういう動きに敏感ではなかった。
そこに王弟を監視していたアルメスタの油断が加わっている。これも反省点。
王弟が特別王女を害せよという指示を出していない様子だったから。悠長にも時間はたっぷりあるものだと思い込んでしまった。
ここで新王が感情を吐露する。
「あのときは、またお前が怖ろしくなった。私はまだ甘くてね。番相手を得るという最高の幸運を得た妹を、今度こそお前が救おうとするのではないか。彼らを上手く言いくるめ、妹が番と共に過ごせるよう手配してくれるのではないか。私は勝手に期待した。ところがお前は悉く私の予想を裏切った。彼らが暴走するよう仕向けたあとは、あえて静観していたな?」
兄王の言葉だけは、その心に届いているらしい。
王弟は声を荒げ事実を話した。
「私は何もしていない!あれは彼らが勝手をしただけ!その彼らは私が処分した!」
レイモンドは静かに安堵する。
すでに『王の秘薬』を使用した人間の様子は観察済みであったが、この王弟には効き過ぎているのではないかと憂いていたから。
完全に壊れられては楽しくな……観察上都合が悪い。
そして予想通り、薬に抵抗しようと頭を働かせてきた。
気が昂る状態にも慣れて来たのだろう。
黙っていた理由もそれだと思われた。
さすが……と言えるところがなければ。
十年も翻弄されたアルメスタの面目も立たないというもの。
「お前はただ私たちに付けている彼らにそうしたように、『必ず守れ』、『生きられるようにしろ』そう命じるだけで良かったはず。それなのにお前は姫に付けた彼らに対し、それらの言葉を絶対に使わなかった。『好きなようにさせておけ』、『見ていればいい』、『見たものをすべて知らせろ』、そればかり言ってきたそうだな?そして『願いを叶えてやれ』と……あえて他と差を付けて命令する、そこに彼らが何を受け取るか。お前が分からなかったとは言わせない」
王弟の両眼がまた大きく開いた。
「誰だ?そこの獣か?兄上に何を吹き込んだ!」
新王は首を振って、はじめて悲し気に眉を下げるのだった。
「薬の影響から逃れようと言葉を選び答えても無駄だぞ。彼らにも『王の秘薬』を使っている」
「────は?」
気の抜けた顔を見せた直後。
「ふふっ。はははっ。あはは。あはははは。あっはっはっ」
響いた甲高い笑い声は、そこにいる誰にとってもあまりに耳障りなものだった。
実はあの事態にあって、レイモンドはこの新旧の王たちと王女の将来について取引めいた会話を交わしている。
レイモンドは別に、罰は与える気でいても、わざわざ出会った番同士を引き離したいとは思っていなかった。
本人もこれまで色々と良からぬ考えを持っていたとして、それを自分で実行したわけではなく、アルメスタとしてあの十年と同等の罪を王女に重ねる気もない。
しかし反省を促す機会として、また新王に王としての厳しさを育んで貰うため、この件はおおいに利用しようと考えた。ついでに先代王夫妻の再教育──。
だから王家とはあえてゆったり話を付けようではないか。
その間にあの王女も番を知りながら側にいられない苦しみを存分に経験するといい。
これがまさか遅れを取る理由となるとは──。
またアルメスタが反省するところであるが。
これほどアルメスタに監視された状態で、彼らが目立って動くとは思っていなかった。
それも彼らの慢心の結果だが、あそこまで彼らが怠惰に陥り、状況を見えていないとは気付けなかったのである。
実力を高く見積もり過ぎての失態が起ころうとは。
アルメスタを十年も出し抜けた、そういう彼らの実績に、目が眩んだ事実は、攻勢に変わった後のアルメスタの反省点。
特に研究所に勤める彼らは、隠密活動とは長く無縁で、そういう動きに敏感ではなかった。
そこに王弟を監視していたアルメスタの油断が加わっている。これも反省点。
王弟が特別王女を害せよという指示を出していない様子だったから。悠長にも時間はたっぷりあるものだと思い込んでしまった。
ここで新王が感情を吐露する。
「あのときは、またお前が怖ろしくなった。私はまだ甘くてね。番相手を得るという最高の幸運を得た妹を、今度こそお前が救おうとするのではないか。彼らを上手く言いくるめ、妹が番と共に過ごせるよう手配してくれるのではないか。私は勝手に期待した。ところがお前は悉く私の予想を裏切った。彼らが暴走するよう仕向けたあとは、あえて静観していたな?」
兄王の言葉だけは、その心に届いているらしい。
王弟は声を荒げ事実を話した。
「私は何もしていない!あれは彼らが勝手をしただけ!その彼らは私が処分した!」
レイモンドは静かに安堵する。
すでに『王の秘薬』を使用した人間の様子は観察済みであったが、この王弟には効き過ぎているのではないかと憂いていたから。
完全に壊れられては楽しくな……観察上都合が悪い。
そして予想通り、薬に抵抗しようと頭を働かせてきた。
気が昂る状態にも慣れて来たのだろう。
黙っていた理由もそれだと思われた。
さすが……と言えるところがなければ。
十年も翻弄されたアルメスタの面目も立たないというもの。
「お前はただ私たちに付けている彼らにそうしたように、『必ず守れ』、『生きられるようにしろ』そう命じるだけで良かったはず。それなのにお前は姫に付けた彼らに対し、それらの言葉を絶対に使わなかった。『好きなようにさせておけ』、『見ていればいい』、『見たものをすべて知らせろ』、そればかり言ってきたそうだな?そして『願いを叶えてやれ』と……あえて他と差を付けて命令する、そこに彼らが何を受け取るか。お前が分からなかったとは言わせない」
王弟の両眼がまた大きく開いた。
「誰だ?そこの獣か?兄上に何を吹き込んだ!」
新王は首を振って、はじめて悲し気に眉を下げるのだった。
「薬の影響から逃れようと言葉を選び答えても無駄だぞ。彼らにも『王の秘薬』を使っている」
「────は?」
気の抜けた顔を見せた直後。
「ふふっ。はははっ。あはは。あはははは。あっはっはっ」
響いた甲高い笑い声は、そこにいる誰にとってもあまりに耳障りなものだった。
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