青春短し、恋せよ乙女――ただし人狼の。

二式大型七面鳥

文字の大きさ
4 / 9

青春短し、恋せよ乙女――ただし人狼の。 04

しおりを挟む
「まあ、それはおいておいてやな」
 気を取り直して、銀子が話を戻した。
「ホンマの話、どないするつもりやねんな?」
「どうって……」
 銀子の言いたい事は分かる。でも……
「……どうにもならないけど、せめて、気持ちだけでも、伝えたいなって」
 あたしは、思っている事を素直に言う。
 だって。気付いちゃったらもう、あたしは、この気持ちを無しにする事は出来ない。なら、どうせダメになるんだとわかっている・・・・・・なら、何もしないより、何かしてからダメになる方がいい。
「……って、まさか蘭ちゃん、告白するつもりなん?」
「……うん」
 ぐっと前に出てきて問いただす銀子に、あたしは、答える。
「告白して、もしOKやったら、まさか付き合うつもりなん?」
 銀子が、重ねて聞く。
「正体、隠して?」
 直球勝負で。一番重要な事を。

 あたしと、銀子ぎんこと、たまき。三人に共通する、「髪の色が黒くない」以外の共通点。いや、実を言えば、髪の色はこっちの理由の結果でしかないのだけれど。
 それは。
 あたし達が、獣人けものびとである事だ。

 そう。あたし達は、人として暮らしてはいるけれど、けものとしての本性を持った、獣人。 あたしは、入学式の当日、すぐに気付いた。同じクラスに二人、獣人が居る事に。匂いで。
 だから、あたしはすぐにその二人、銀子と環に声をかけた。二人も、あたしが声をかける頃には気付いていた。
 あたし達は、種族が違っても、友達になれる。どうしても相容れない種族もいるけど、それでも、学校とか会社とか、同じ組織にいるなら、極力いがみ合わず、可能な限り仲良くする。人の中で暮らすあたし達は、無用なトラブルで自滅するのを避けるため、自然にそうする様に暗黙の了解が出来た、あたしは婆ちゃんからそう聞いていた。だから、あたしはすぐに二人に声をかけ、すぐに友達になった。狐である銀子と、白蛇である環と。
 あたし達は人間社会では圧倒的に少数派だけど、それでも、規模にもよるけど学校に一人居るかいないか、その程度の比率では居ると、これもあたしは婆ちゃんから聞いていた。でも、同じ学校、同じ学年に三人同時に居るってのはなかなか珍しいって、婆ちゃんもびっくりしてた。そして、狐はともかく、蛇、それも白蛇とはなかなか珍しいとも言っていた。
 そして、あたし達、人狼はもっと珍しいんだと、婆ちゃんはその時、そう付け加えたっけ。

「正体は……そりゃ隠すわよ」
 銀子に聞かれて、あたしは、一瞬詰まってから答えた。
「正体ばらしてメリットある?」
 聞き返したあたしに、銀子が答える。
「そらそうやけど。いやな、ウチの言いたいんはそういうんとちゃうねんけど……」
「……初恋なのよ、あたし。多分、これがあたしの初恋」

「いやあの、ランちゃん?」
「あたしは、蘭馨あららぎ かおるは人狼の娘。所詮、同族以外とは、人間とは結ばれない運命……それはわかってるの」
「蘭ちゃん?あの、かおるさん?」
「でも、でもね?あたしも女の子だもん、誰かを好きになるのは止められないわ……銀子、あんただって女の子だから、わかるでしょ?だからね」
「もしもーし?」
「だから、あたし、決めたの」
 意を決して、あたしは宣言する。
「せめて今だけ、せめて気持ちだけでも、伝えようって……」
「立派なお覚悟どすなぁ。うち、応援しますえ」
 盛り上がりきって人の話なんかまるで聞いてないあたしに、目を細めて微笑みながら、たまきが言った。
「……まあ、うちも女の子やし、分からん事もないけどもやな」
 あぐらをかいた膝の上で頬杖をつきながら、銀子も、半分諦めたみたいな口調で言い足す。
「でしょ!」
 なんだかんだ言っても友達だ。あたしは、恥ずかしいのと不安なのとでドキドキしてた所に同意がもらえて、嬉しくて、安心して、二人を見つめる。
「……あのな、蘭ちゃん、よー聞きや。ヤーマダ君のクラスの娘から聞いた話やねんけどもな」
 眉を寄せた銀子が、低めの声で言う。え、何、止めて、もう誰か好きな娘が居るとかそういうの止めて。
「蘭ちゃん盛り上がってるとこ、わるいんやけどもな」
 ぐっと、銀子が前に出てきて、言った。
「……ヤーマダ君な、イヌ、嫌いらしいで?」
「……は?」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

処理中です...