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興味
②
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改めて兄さんに顔を覗かれると、本当に困ってしまう。
兄さん、中性っぽい顔立ちしているし。
実際、下手なアイドルよりもカッコいいし。
亡くなったお母さんに、似たからなのかな。
「もしかして、この前のバイトの話?」
私の中で、“チャンス”っていう声がかかる。
「あっ、あのね。その話なんだけど……」
「決まらなかったんだろ?」
兄さんの返事に、私は言葉が詰まった。
「無理する事はないよ、美雨。」
「どうして?」
優しい兄さん。
けれど、私の事を何でも知っているかのように、話を遮られると、とても虚しく感じる。
「まだ大学生だろ?バイトなんてしなくたって、小遣いが足りなければ、俺が出すから。」
私は“ううん”と首を横に振った。
「美雨?」
「私、やりたい事があるの。」
両親が亡くなってから、懸命に私を守ってくれた兄さんだけれども、私は兄さんに甘えて、自分の人生を失いたくない。
「将来、お店を持ちたいの。」
「店?」
兄さんが顔を歪めた理由は、なんとなくわかる。
自分も会社を持っていて、お店を経営すると言うことが、どんなに難しい事なのか、知っているからだと思う。
「ほら!私、小さな小物とか、食器とか集めるのが好きでしょう?だから、そういうのを扱うお店を開きたいの!」
「雑貨屋って事?」
「うん……」
食べる事を止めて、足を組んだ兄さんは、机をトントンと指で叩きだした。
兄さんの考えている時のクセ。
「美雨がそう言うのなら、応援しないわけでもないけど。」
「本当?よかったぁ。私ね、雑貨屋さんになるのが、小さい頃からの夢だったの!」
兄さんに、私のやりたい事を分かってもらえた嬉しさに、思わず両手でスプーンをギュッと握った。
「その代わり、ちゃんと勉強もすること!いいね。」
「は~い。」
私は“わかってます”って顔で、渋々右手を上げた。
そのリアクションが余程面白かったのか、兄さんは額に手を当てながら、ずっと笑っている。
「もう。いつまで笑ってるの?兄さん。」
「ああ、ごめんごめん。」
謝りながらまだ笑い続ける兄さんだけれども、正直兄さんに笑顔が戻って、私は嬉しかった。
そんな兄さんの笑顔をかき消すように、携帯がけたたましく鳴った。
「どうした?」
すぐ電話に出た兄さんは、私が目の前にいるのに、『うん、うん。』と、電話の向こうの人の話を聞いている。
「わかった。また明日。」
短い電話を終えて、兄さんは携帯を、テーブルの上に置いた。
「……仕事?」
「うん。」
それにしても、あまり厳しい顔をしていなかったなって思うのは、私がまだ社会人じゃないから?
「何、疑ってんの?」
「えっ!?」
なぜか私の考えがバレバレの事に、動揺する。
「だって、もしかしたら彼女さんからの電話かなって、思ったり!」
「違う違う!本当に仕事の電話だよ!!」
そんなに全力で否定されると、返って疑ってしまうのは、なぜなんだろう。
「俺の事よりも美雨は?」
「私?いないいない!!」
思いがけない返しに、今度は私が全力で否定する。
あっ、今。
兄さんの気持ちが、少しだけわかったような気がする。
「大学生だったら、キャンパスの中に男なんて、たくさんいるだろうし。合コンとかもあるだろう?」
「う、うん……」
そう言えば、友達に誘われて何回か行ったことはあるけれど。
「いいなぁって思ってヤツ、いないのか?」
兄さんのその言葉に、少しだけ考えてしまう。
いいなぁって思った人……
私の頭の中に浮かんだのは
あの雨の日に出会った
兄さんのお友達だと言う人……
あの人は、雨の日に
恋人とどんな会話を交わすんだろう……
兄さん、中性っぽい顔立ちしているし。
実際、下手なアイドルよりもカッコいいし。
亡くなったお母さんに、似たからなのかな。
「もしかして、この前のバイトの話?」
私の中で、“チャンス”っていう声がかかる。
「あっ、あのね。その話なんだけど……」
「決まらなかったんだろ?」
兄さんの返事に、私は言葉が詰まった。
「無理する事はないよ、美雨。」
「どうして?」
優しい兄さん。
けれど、私の事を何でも知っているかのように、話を遮られると、とても虚しく感じる。
「まだ大学生だろ?バイトなんてしなくたって、小遣いが足りなければ、俺が出すから。」
私は“ううん”と首を横に振った。
「美雨?」
「私、やりたい事があるの。」
両親が亡くなってから、懸命に私を守ってくれた兄さんだけれども、私は兄さんに甘えて、自分の人生を失いたくない。
「将来、お店を持ちたいの。」
「店?」
兄さんが顔を歪めた理由は、なんとなくわかる。
自分も会社を持っていて、お店を経営すると言うことが、どんなに難しい事なのか、知っているからだと思う。
「ほら!私、小さな小物とか、食器とか集めるのが好きでしょう?だから、そういうのを扱うお店を開きたいの!」
「雑貨屋って事?」
「うん……」
食べる事を止めて、足を組んだ兄さんは、机をトントンと指で叩きだした。
兄さんの考えている時のクセ。
「美雨がそう言うのなら、応援しないわけでもないけど。」
「本当?よかったぁ。私ね、雑貨屋さんになるのが、小さい頃からの夢だったの!」
兄さんに、私のやりたい事を分かってもらえた嬉しさに、思わず両手でスプーンをギュッと握った。
「その代わり、ちゃんと勉強もすること!いいね。」
「は~い。」
私は“わかってます”って顔で、渋々右手を上げた。
そのリアクションが余程面白かったのか、兄さんは額に手を当てながら、ずっと笑っている。
「もう。いつまで笑ってるの?兄さん。」
「ああ、ごめんごめん。」
謝りながらまだ笑い続ける兄さんだけれども、正直兄さんに笑顔が戻って、私は嬉しかった。
そんな兄さんの笑顔をかき消すように、携帯がけたたましく鳴った。
「どうした?」
すぐ電話に出た兄さんは、私が目の前にいるのに、『うん、うん。』と、電話の向こうの人の話を聞いている。
「わかった。また明日。」
短い電話を終えて、兄さんは携帯を、テーブルの上に置いた。
「……仕事?」
「うん。」
それにしても、あまり厳しい顔をしていなかったなって思うのは、私がまだ社会人じゃないから?
「何、疑ってんの?」
「えっ!?」
なぜか私の考えがバレバレの事に、動揺する。
「だって、もしかしたら彼女さんからの電話かなって、思ったり!」
「違う違う!本当に仕事の電話だよ!!」
そんなに全力で否定されると、返って疑ってしまうのは、なぜなんだろう。
「俺の事よりも美雨は?」
「私?いないいない!!」
思いがけない返しに、今度は私が全力で否定する。
あっ、今。
兄さんの気持ちが、少しだけわかったような気がする。
「大学生だったら、キャンパスの中に男なんて、たくさんいるだろうし。合コンとかもあるだろう?」
「う、うん……」
そう言えば、友達に誘われて何回か行ったことはあるけれど。
「いいなぁって思ってヤツ、いないのか?」
兄さんのその言葉に、少しだけ考えてしまう。
いいなぁって思った人……
私の頭の中に浮かんだのは
あの雨の日に出会った
兄さんのお友達だと言う人……
あの人は、雨の日に
恋人とどんな会話を交わすんだろう……
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