11 / 36
第3部 戦の前夜 ③
しおりを挟む
低く、かすれるような声。
その響きだけで、胸が震えた。
「……顔だけ?」
アシュレイ殿下が私の髪に触れながら、囁く。
「その声も……」
「声も?」
彼の瞳が、静かに潤んでいた。
深くて、やわらかくて――すべてを見透かすような眼差し。
「……キスも。」
そう言った瞬間、彼の唇が私の唇にそっと重なった。
甘く、静かな口づけ。
それはまるで、戦の音さえ遠ざける魔法のようだった。
「本当はね。戦の前に女を抱くのは、禁忌なんだよ。」
「えっ……!」
私は驚いて、思わず身を引こうとした。
「私……ごめんなさい。」
けれどアシュレイ殿下は、私の手を離さなかった。
「いいんだよ。たしかに、女を抱くと戦意を失うって言われる。だけど……」
彼は、静かに微笑んだ。
「リリアーナといると……勝ちたいって、思えるんだ。」
その言葉が、私の胸を深く、強く、満たしていった。
私の想いは――この人に、きっと届いている。
だから私は、はっきりと口にした。
「……好きです。」
胸が張り裂けそうだった。でも、言わなければ後悔すると思った。
「明日、死ぬかもしれないって思ったら……伝えないとって。」
その瞬間、アシュレイ殿下は私を力強く、優しく抱きしめた。
「それを言うなら――俺の方こそ、リリアーナに惹かれてる。」
彼の胸元に顔を埋めると、鼓動が静かに、でも確かに響いてきた。
(この音を、忘れたくない。)
「……今夜は、リリアーナを抱いて眠りたい。」
その囁きに、身体が熱くなる。
「殿下……」
見上げると、彼が微笑んだ。
「今夜だけは、“アシュレイ”って呼んで。」
たった一夜かもしれない。けれどこの夜だけは、何もかもを――許される気がした。
私は小さく頷いて、震える唇で彼の名を呼んだ。
「……アシュレイ。」
その名が、恋として私の中に確かに灯った。
私はアシュレイの広いベッドに身を横たえた。
彼の腕が、優しく私を抱き寄せる。
「……眠ろう。」
「はい。」
ただこの腕の中にいられるだけで、夢のようだった。
けれど――しばらくして、彼の唇がそっと私の唇に重なる。
「……アシュレイ。」
名前を呼ぶと、彼の額が私の額に触れた。
「ごめん……我慢できなくて。」
吐息まじりの声が、耳に触れる。
そしてアシュレイは、自らの服を脱ぎ始めた。
「……抱いたらダメだって、女は禁忌だって分かってるんだけど……」
その瞳は苦しげで、それでも私を求めていた。
私は静かに、でも確かに――彼の背に腕を回した。
「……抱いて。」
たとえ明日、この世界から消えても――
この夜に、あなたと一つになりたい。
それが、私の最初で最後の願いだった。
アシュレイの手が、そっと私の服に触れる。
一枚一枚、丁寧に剥がすように、私の肌が夜気に晒されていく。
その響きだけで、胸が震えた。
「……顔だけ?」
アシュレイ殿下が私の髪に触れながら、囁く。
「その声も……」
「声も?」
彼の瞳が、静かに潤んでいた。
深くて、やわらかくて――すべてを見透かすような眼差し。
「……キスも。」
そう言った瞬間、彼の唇が私の唇にそっと重なった。
甘く、静かな口づけ。
それはまるで、戦の音さえ遠ざける魔法のようだった。
「本当はね。戦の前に女を抱くのは、禁忌なんだよ。」
「えっ……!」
私は驚いて、思わず身を引こうとした。
「私……ごめんなさい。」
けれどアシュレイ殿下は、私の手を離さなかった。
「いいんだよ。たしかに、女を抱くと戦意を失うって言われる。だけど……」
彼は、静かに微笑んだ。
「リリアーナといると……勝ちたいって、思えるんだ。」
その言葉が、私の胸を深く、強く、満たしていった。
私の想いは――この人に、きっと届いている。
だから私は、はっきりと口にした。
「……好きです。」
胸が張り裂けそうだった。でも、言わなければ後悔すると思った。
「明日、死ぬかもしれないって思ったら……伝えないとって。」
その瞬間、アシュレイ殿下は私を力強く、優しく抱きしめた。
「それを言うなら――俺の方こそ、リリアーナに惹かれてる。」
彼の胸元に顔を埋めると、鼓動が静かに、でも確かに響いてきた。
(この音を、忘れたくない。)
「……今夜は、リリアーナを抱いて眠りたい。」
その囁きに、身体が熱くなる。
「殿下……」
見上げると、彼が微笑んだ。
「今夜だけは、“アシュレイ”って呼んで。」
たった一夜かもしれない。けれどこの夜だけは、何もかもを――許される気がした。
私は小さく頷いて、震える唇で彼の名を呼んだ。
「……アシュレイ。」
その名が、恋として私の中に確かに灯った。
私はアシュレイの広いベッドに身を横たえた。
彼の腕が、優しく私を抱き寄せる。
「……眠ろう。」
「はい。」
ただこの腕の中にいられるだけで、夢のようだった。
けれど――しばらくして、彼の唇がそっと私の唇に重なる。
「……アシュレイ。」
名前を呼ぶと、彼の額が私の額に触れた。
「ごめん……我慢できなくて。」
吐息まじりの声が、耳に触れる。
そしてアシュレイは、自らの服を脱ぎ始めた。
「……抱いたらダメだって、女は禁忌だって分かってるんだけど……」
その瞳は苦しげで、それでも私を求めていた。
私は静かに、でも確かに――彼の背に腕を回した。
「……抱いて。」
たとえ明日、この世界から消えても――
この夜に、あなたと一つになりたい。
それが、私の最初で最後の願いだった。
アシュレイの手が、そっと私の服に触れる。
一枚一枚、丁寧に剥がすように、私の肌が夜気に晒されていく。
67
あなたにおすすめの小説
勘違い妻は騎士隊長に愛される。
更紗
恋愛
政略結婚後、退屈な毎日を送っていたレオノーラの前に現れた、旦那様の元カノ。
ああ なるほど、身分違いの恋で引き裂かれたから別れてくれと。よっしゃそんなら離婚して人生軌道修正いたしましょう!とばかりに勢い込んで旦那様に離縁を勧めてみたところ――
あれ?何か怒ってる?
私が一体何をした…っ!?なお話。
有り難い事に書籍化の運びとなりました。これもひとえに読んで下さった方々のお蔭です。本当に有難うございます。
※本編完結後、脇役キャラの外伝を連載しています。本編自体は終わっているので、その都度完結表示になっております。ご了承下さい。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
抱かれたい騎士No.1と抱かれたく無い騎士No.1に溺愛されてます。どうすればいいでしょうか!?
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ヴァンクリーフ騎士団には見目麗しい抱かれたい男No.1と、絶対零度の鋭い視線を持つ抱かれたく無い男No.1いる。
そんな騎士団の寮の厨房で働くジュリアは何故かその2人のお世話係に任命されてしまう。どうして!?
貧乏男爵令嬢ですが、家の借金返済の為に、頑張って働きますっ!
お買い上げありがとうございます旦那様
キマイラ
恋愛
借金のかたに嫁いだ私。だというのに旦那様は「すまないアデライン、君を愛することはない。いや、正確には恐らく私は君を愛することができない。許してくれ」などと言ってきた。
乙女ゲームのヒロインの姉に転生した女の結婚のお話。
「王太子殿下に魅了をかけてしまいました。大至急助けてください」にチラッと出てきたアデラインが主人公です。単体で読めます。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
兄様達の愛が止まりません!
桜
恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。
そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。
屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。
やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。
無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。
叔父の家には二人の兄がいた。
そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…
唯一の味方だった婚約者に裏切られ失意の底で顔も知らぬ相手に身を任せた結果溺愛されました
ララ
恋愛
侯爵家の嫡女として生まれた私は恵まれていた。優しい両親や信頼できる使用人、領民たちに囲まれて。
けれどその幸せは唐突に終わる。
両親が死んでから何もかもが変わってしまった。
叔父を名乗る家族に騙され、奪われた。
今では使用人以下の生活を強いられている。そんな中で唯一の味方だった婚約者にまで裏切られる。
どうして?ーーどうしてこんなことに‥‥??
もう嫌ーー
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェ(別名義)でも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる