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第二章 騎士となるために
緊急通信
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候補生たちを送り出してから二時間が過ぎていた。朝から夕方までかかる科目であり、送り出したあと西大寺の仕事は定時連絡を受けるだけだ。
二時間おきにある定時連絡によると、どこも順調そのものである。今年の新入生はかなりレベルが高く、魔物が多いミノウ方面へと向かった者たちも今のところ問題はないようだ。
「やはり奥田と岸野は格が違うな……」
端末にて戦果を確認すると断トツであった。特に一八は一人で戦っていたために、玲奈の討伐数よりも遥かに多い。その結果に西大寺は大きく頷いている。
そんなとき急にハンディデバイスが音を立てた。既に定時連絡は五班共が終えていたというのに。
「兵団本部? 何の用だ……?」
守護兵団の本部は騎士学校の隣にある。前線へほぼ全ての士官を配置している現状では実質的に候補生たちが本部にある唯一の戦力であった。ただ一部の重鎮たちは本部にいることも多く、共和国内の問題に対して適切な対応を行っている。かといって教官に直接連絡を取るのは非常に稀なこと。これには流石に嫌な予感しか覚えない。
「もしもし、西大寺です……」
恐る恐る出てみると相手は予想だにしない人物。士官どころか、七条中将であった。教官はほぼ全員が一般兵であり、彼らにとっては雲の上の存在である。
『西大寺教官、至急広域実習を中止してくれたまえ』
「えっと、失礼ですが中将、実習は始まったばかりですけれど?」
どうにも要領を得ない。市民の安全を守るべき科目であるのだが、どうしてか中将は中止との指示。魔物の群れがオオサカ市内へと向かわぬよう倒しておく必要があったというのに。
『飛竜がキョウト市を越えてオオサカに向かっている。予想される目的地はミノウ山地らしい。万が一にも飛竜を刺激してはならん。速やかに撤退だ……』
とんでもないことになっていた。間が悪いことに今週は市の北側が探索の重点エリアとなっている。しかもAクラスはミノウ山地の周辺であった。
「了解しました。直ちに帰還を命令致します」
『頼むぞ。若い個体とはいえ危険度は最低でもAランクだ。また若い飛竜は往々にして気が荒い。血を見るだけで興奮する可能性がある。駆除した魔物は必ずボックスへと収納すること。徹底するように伝えてくれ』
言って通話が終わる。恐らくは他の学科やクラスにも通達するためだろう。一刻を争う事態なのだ。街の周辺で飛竜が暴れ出すようなことだけは避けなくてはならない。
一つ息を吸ったあと西大寺は全班に告げる。ただ、彼は不安だった。落第生を除いた候補生は全員が経験不足なのだ。逃げるにしても撤退の後処理についても完璧とはならないだろう。彼らはまだ学び始めたばかりなのだから。
「緊急通信、全候補生に。任務は中止だ。速やかに撤退すること。また撤退時にはできる限り死体を処理して欲しい。強大な魔物がミノウ山地に向かっている。間違っても刺激してはならない。ただし、生き残ることを最大目標としろ。手間がかかるというのなら、死体は放置しても構わん。お前たちはまだ候補生なのだから……」
敢えて飛竜であるとは伝えなかった。パニックに陥ってはスムーズに運ぶものも運ばなくなる。教官としては素早い帰還を促すだけであった。
昨年度に起きた候補生の死亡。まだ半年も経っていないというのに、新たな犠牲者を出すわけにはならない。
西大寺は祈るようにし、候補生の帰還を待つのだった……。
******************
次回より隔日の更新となります。
誠に申し訳ございませんが、ストックの
状況が思わしくなく、一日おきの更新と
させていただきます。(断腸の思いです!)
明日は同時連載中の『幼馴染み(♀)がプレ
イするMMORPGはどうしてか異世界に影
響を与えている』の更新日となり、本作は明
後日の更新予定です。
連載中の二作は共に百話超えとなっており、読
み応え充分です! 一読いただければ嬉しく思
います。
ご訪問お待ちしております!
坂森大我
*******************
二時間おきにある定時連絡によると、どこも順調そのものである。今年の新入生はかなりレベルが高く、魔物が多いミノウ方面へと向かった者たちも今のところ問題はないようだ。
「やはり奥田と岸野は格が違うな……」
端末にて戦果を確認すると断トツであった。特に一八は一人で戦っていたために、玲奈の討伐数よりも遥かに多い。その結果に西大寺は大きく頷いている。
そんなとき急にハンディデバイスが音を立てた。既に定時連絡は五班共が終えていたというのに。
「兵団本部? 何の用だ……?」
守護兵団の本部は騎士学校の隣にある。前線へほぼ全ての士官を配置している現状では実質的に候補生たちが本部にある唯一の戦力であった。ただ一部の重鎮たちは本部にいることも多く、共和国内の問題に対して適切な対応を行っている。かといって教官に直接連絡を取るのは非常に稀なこと。これには流石に嫌な予感しか覚えない。
「もしもし、西大寺です……」
恐る恐る出てみると相手は予想だにしない人物。士官どころか、七条中将であった。教官はほぼ全員が一般兵であり、彼らにとっては雲の上の存在である。
『西大寺教官、至急広域実習を中止してくれたまえ』
「えっと、失礼ですが中将、実習は始まったばかりですけれど?」
どうにも要領を得ない。市民の安全を守るべき科目であるのだが、どうしてか中将は中止との指示。魔物の群れがオオサカ市内へと向かわぬよう倒しておく必要があったというのに。
『飛竜がキョウト市を越えてオオサカに向かっている。予想される目的地はミノウ山地らしい。万が一にも飛竜を刺激してはならん。速やかに撤退だ……』
とんでもないことになっていた。間が悪いことに今週は市の北側が探索の重点エリアとなっている。しかもAクラスはミノウ山地の周辺であった。
「了解しました。直ちに帰還を命令致します」
『頼むぞ。若い個体とはいえ危険度は最低でもAランクだ。また若い飛竜は往々にして気が荒い。血を見るだけで興奮する可能性がある。駆除した魔物は必ずボックスへと収納すること。徹底するように伝えてくれ』
言って通話が終わる。恐らくは他の学科やクラスにも通達するためだろう。一刻を争う事態なのだ。街の周辺で飛竜が暴れ出すようなことだけは避けなくてはならない。
一つ息を吸ったあと西大寺は全班に告げる。ただ、彼は不安だった。落第生を除いた候補生は全員が経験不足なのだ。逃げるにしても撤退の後処理についても完璧とはならないだろう。彼らはまだ学び始めたばかりなのだから。
「緊急通信、全候補生に。任務は中止だ。速やかに撤退すること。また撤退時にはできる限り死体を処理して欲しい。強大な魔物がミノウ山地に向かっている。間違っても刺激してはならない。ただし、生き残ることを最大目標としろ。手間がかかるというのなら、死体は放置しても構わん。お前たちはまだ候補生なのだから……」
敢えて飛竜であるとは伝えなかった。パニックに陥ってはスムーズに運ぶものも運ばなくなる。教官としては素早い帰還を促すだけであった。
昨年度に起きた候補生の死亡。まだ半年も経っていないというのに、新たな犠牲者を出すわけにはならない。
西大寺は祈るようにし、候補生の帰還を待つのだった……。
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次回より隔日の更新となります。
誠に申し訳ございませんが、ストックの
状況が思わしくなく、一日おきの更新と
させていただきます。(断腸の思いです!)
明日は同時連載中の『幼馴染み(♀)がプレ
イするMMORPGはどうしてか異世界に影
響を与えている』の更新日となり、本作は明
後日の更新予定です。
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ご訪問お待ちしております!
坂森大我
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