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16. 婚約者
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今日は婚約式がある日。
まずは顔合わせをして双方の意思を確認し、相性をみて婚約するものじゃないかと思うけど、もう既に仮婚約状態なので、公爵家で簡単な婚約式をして書面を交わすそうだ。
私の顔も見ないでよく決められるよ、と思うけど顔は関係ないらしい。どのみち、高位貴族は美女が嫁いでくるから遺伝子上、皆、それなりに整った顔になっているみたい。
実際、私もお兄様もかなりの美形だと思う。もう少し大きくなれば美男美女の麗しい兄弟になれるかな。
婚約お披露目は成人を待って行われる。という事は3年後。
凄くいやだ。
15の成人を迎えて直ぐ逃げる算段をしておかなくては。
という事を考えながら婚約式に臨んだ。
公爵家はとても広くて立派なお屋敷だった。
その敷地内に礼拝堂が建っていて、辺境伯家と同様にご神体(女神像)が祀ってある。
今回は婚約式の為に王都の本神殿から神官長がわざわざ来られたらしい。
私の加護がバレたらどうしよう。
お兄様が「バレたら即、姿を消して国外へ出よう。食料の心配はないから大丈夫、何とかなる。いざとなったら殲滅という手もあるし」
と言ってくれたので心配だけれども婚約式に出る事にした。
初めて会った公爵家の方々はいかにも高位貴族って感じの人たちだった。とても偉そうなオーラが出ている。そして公爵とお父様が挨拶を交わし、公爵家の嫡男様を紹介された。
ラクアート・ウオーターと名乗った嫡男様は不機嫌そうだった。彼にとってもこの婚約は不本意だったのかもしれない。
ムッとした顔をしながらもこちらを見てちょっと目を見張った後、優雅に礼をした。
直ぐに礼拝堂に向かう事になり、ラクアート様が腕を差し出したので、エスコートされながら歩きだす。特に会話もなくきれいに整えられた遊歩道を粛々と歩いた。
礼拝堂の前には絢爛豪華な服をまとった神官長と神官が二人、待っていた。
「この度は誠におめでとうございます。末永くご両家の絆が結ばれますようにお祈り申し上げます。今回は私、本殿神官長のギラスーテートが見届け人として立ち会いますが、まずは婚約に先立つ加護の確認をさせていただきます」
神官長と神官が二人、ご神体の女神像に祈りをささげた。そして、神官長が重々しく合図をすると神官が丸い水晶玉をご神体の前に置いた。
婚約式の時は神官立ち合いの上で、まずは加護の確認をする。高位貴族の正室の結婚は加護のつり合いがとても重要視される。
ドキドキしながらご神体に深く拝礼をしてから水晶玉に触ると、ものすごく眩い光があふれた。そして、半透明で大きなステータスカードが現れた。
リーナ・アプリコット
12歳
加護『水魔法』
良かった。神官長が相手でもちゃんと偽のステータスが出てくれた。
「おお、素晴らしい魔力量だ」
「確かに水魔法だ。これで公爵家も安泰だ」
「本当に。これで次代も安心ですね」
公爵家の人たちはとても嬉しそうだしお父様は得意げだけど、これは偽のステータスなんですよ。
もう、どうしよう。
唖然としていた神官長が呟いた。
「こんな光は初めて見た。これで魔法が光魔法なら文句なく聖女様だったのに……いや、しかし、魔法の進化で水魔法だけでなく、光魔法も使えるようになるかもしれない。そうすれば、聖女様になれるかも」
神官たちも興奮気味に
「神官長、聞いてはいましたが、魔力量がすごいですね」
「これは、神殿でお勤めしていただければ良い方向に変わっていくかもしれません」
神官たちが期待に満ちた目で私を見つめてくる。
いや、いや、いや。
本神殿にある大元の水晶玉に触ったら私の本来のステータスがバレてしまうかもしれないし、絶対お断り。
その前に聖女様って何なの?
聖女様って神殿にこもって只管死ぬまで、お祈りする人だよね。私、そんなに信心深くないし、そりゃ、困っていた時はものすごく神様、お願いって頼っていたけど、でもお祈りは時々で良いと思います。
続いて、公爵家の嫡男様が深く拝礼をして水晶玉に触った。水晶玉がピカッと光った。以前に加護の儀を見た時、光っていた他の人と比べると格段に光が強い。それに私やお兄様の光に比べると黄色味が強いようだ。
人によって光につく色が違うのだろうか。
ラクアート・ウオーター
13歳
加護『水の魔法』
公爵家の人たちも神官たちも今回は静かだった。
何だか何も悪いことはしてないのに申し訳ないような気になった。
「まぁまぁまぁ、ラクアートも魔力の強さはかなりのモノですよ」
公爵夫人が笑顔でほめてきた。
「そうだなあ。私が子供のころより光は強いかもしれない。『水の魔法』も進化するかもしれないし、黄色味を帯びているという事は光の加護も得られるかもしれない」
「元々、光の加護は水の加護由来と言われていますから」
「そうすると、これからが楽しみですね」
オホホ、アハハと大人たちの笑顔の会話が礼拝堂にこだました。
その後、お屋敷に移動して婚約宣誓書と契約書にサインをしてから会食をした。食事中の話題は婚約のお披露目について、とか結婚式の内容とか新居の場所とか、もう、結婚が決定したかのような話ばかりだった。
食後はラクアート様と二人で庭に出された。後はお若い二人で、という感じで。
で、ラクアート様は二人だけになると
「田舎育ちで側妃の子と聞いていたからどんな子かと思っていたが、とりあえず合格点をあげよう。マナーも立ち姿、歩き方も美しかった」
「……お褒めいただきありがとうございます」
「しかし、残念ながら私には真に愛する女性がいる。君は今のところ、正室候補だと思ってほしい」
「はい」
「しかし……」
「はい」
「私は多くの女性を愛でる事を求められている」
「は、い」
「一番にはできないが、私に愛される努力をしたまえ。とりあえず、婚約者として名乗る事と私の名を呼ぶことを許そう」
「はい」
私はお淑やかに、儚げに微笑んで見せた。
何、これ! 他に好きな人がいるけど、キープしといてやるよって事ですよね。しかも上から目線で。
こちらこそアンタなんかお断り! ですよ。
まずは顔合わせをして双方の意思を確認し、相性をみて婚約するものじゃないかと思うけど、もう既に仮婚約状態なので、公爵家で簡単な婚約式をして書面を交わすそうだ。
私の顔も見ないでよく決められるよ、と思うけど顔は関係ないらしい。どのみち、高位貴族は美女が嫁いでくるから遺伝子上、皆、それなりに整った顔になっているみたい。
実際、私もお兄様もかなりの美形だと思う。もう少し大きくなれば美男美女の麗しい兄弟になれるかな。
婚約お披露目は成人を待って行われる。という事は3年後。
凄くいやだ。
15の成人を迎えて直ぐ逃げる算段をしておかなくては。
という事を考えながら婚約式に臨んだ。
公爵家はとても広くて立派なお屋敷だった。
その敷地内に礼拝堂が建っていて、辺境伯家と同様にご神体(女神像)が祀ってある。
今回は婚約式の為に王都の本神殿から神官長がわざわざ来られたらしい。
私の加護がバレたらどうしよう。
お兄様が「バレたら即、姿を消して国外へ出よう。食料の心配はないから大丈夫、何とかなる。いざとなったら殲滅という手もあるし」
と言ってくれたので心配だけれども婚約式に出る事にした。
初めて会った公爵家の方々はいかにも高位貴族って感じの人たちだった。とても偉そうなオーラが出ている。そして公爵とお父様が挨拶を交わし、公爵家の嫡男様を紹介された。
ラクアート・ウオーターと名乗った嫡男様は不機嫌そうだった。彼にとってもこの婚約は不本意だったのかもしれない。
ムッとした顔をしながらもこちらを見てちょっと目を見張った後、優雅に礼をした。
直ぐに礼拝堂に向かう事になり、ラクアート様が腕を差し出したので、エスコートされながら歩きだす。特に会話もなくきれいに整えられた遊歩道を粛々と歩いた。
礼拝堂の前には絢爛豪華な服をまとった神官長と神官が二人、待っていた。
「この度は誠におめでとうございます。末永くご両家の絆が結ばれますようにお祈り申し上げます。今回は私、本殿神官長のギラスーテートが見届け人として立ち会いますが、まずは婚約に先立つ加護の確認をさせていただきます」
神官長と神官が二人、ご神体の女神像に祈りをささげた。そして、神官長が重々しく合図をすると神官が丸い水晶玉をご神体の前に置いた。
婚約式の時は神官立ち合いの上で、まずは加護の確認をする。高位貴族の正室の結婚は加護のつり合いがとても重要視される。
ドキドキしながらご神体に深く拝礼をしてから水晶玉に触ると、ものすごく眩い光があふれた。そして、半透明で大きなステータスカードが現れた。
リーナ・アプリコット
12歳
加護『水魔法』
良かった。神官長が相手でもちゃんと偽のステータスが出てくれた。
「おお、素晴らしい魔力量だ」
「確かに水魔法だ。これで公爵家も安泰だ」
「本当に。これで次代も安心ですね」
公爵家の人たちはとても嬉しそうだしお父様は得意げだけど、これは偽のステータスなんですよ。
もう、どうしよう。
唖然としていた神官長が呟いた。
「こんな光は初めて見た。これで魔法が光魔法なら文句なく聖女様だったのに……いや、しかし、魔法の進化で水魔法だけでなく、光魔法も使えるようになるかもしれない。そうすれば、聖女様になれるかも」
神官たちも興奮気味に
「神官長、聞いてはいましたが、魔力量がすごいですね」
「これは、神殿でお勤めしていただければ良い方向に変わっていくかもしれません」
神官たちが期待に満ちた目で私を見つめてくる。
いや、いや、いや。
本神殿にある大元の水晶玉に触ったら私の本来のステータスがバレてしまうかもしれないし、絶対お断り。
その前に聖女様って何なの?
聖女様って神殿にこもって只管死ぬまで、お祈りする人だよね。私、そんなに信心深くないし、そりゃ、困っていた時はものすごく神様、お願いって頼っていたけど、でもお祈りは時々で良いと思います。
続いて、公爵家の嫡男様が深く拝礼をして水晶玉に触った。水晶玉がピカッと光った。以前に加護の儀を見た時、光っていた他の人と比べると格段に光が強い。それに私やお兄様の光に比べると黄色味が強いようだ。
人によって光につく色が違うのだろうか。
ラクアート・ウオーター
13歳
加護『水の魔法』
公爵家の人たちも神官たちも今回は静かだった。
何だか何も悪いことはしてないのに申し訳ないような気になった。
「まぁまぁまぁ、ラクアートも魔力の強さはかなりのモノですよ」
公爵夫人が笑顔でほめてきた。
「そうだなあ。私が子供のころより光は強いかもしれない。『水の魔法』も進化するかもしれないし、黄色味を帯びているという事は光の加護も得られるかもしれない」
「元々、光の加護は水の加護由来と言われていますから」
「そうすると、これからが楽しみですね」
オホホ、アハハと大人たちの笑顔の会話が礼拝堂にこだました。
その後、お屋敷に移動して婚約宣誓書と契約書にサインをしてから会食をした。食事中の話題は婚約のお披露目について、とか結婚式の内容とか新居の場所とか、もう、結婚が決定したかのような話ばかりだった。
食後はラクアート様と二人で庭に出された。後はお若い二人で、という感じで。
で、ラクアート様は二人だけになると
「田舎育ちで側妃の子と聞いていたからどんな子かと思っていたが、とりあえず合格点をあげよう。マナーも立ち姿、歩き方も美しかった」
「……お褒めいただきありがとうございます」
「しかし、残念ながら私には真に愛する女性がいる。君は今のところ、正室候補だと思ってほしい」
「はい」
「しかし……」
「はい」
「私は多くの女性を愛でる事を求められている」
「は、い」
「一番にはできないが、私に愛される努力をしたまえ。とりあえず、婚約者として名乗る事と私の名を呼ぶことを許そう」
「はい」
私はお淑やかに、儚げに微笑んで見せた。
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